『神託』
「焼き上がったぞ」
取り出されるはシカゴピザ。
デッカ……。
まだあんなに食うのかよこの人ら。
ガブロさんが言ってたけど、パイみたいな形状をしてるから、焼くのに時間掛かったよね。
にしても……。
「それだけで良かったんじゃない?」
「まぁ、そう思う所はある」
アメノサさんの言う通り、絶対にシカゴピザだけで良かっただろ。
いやまぁ、残ったなら残ったで持ち帰りに回せばいいだけだろうけれども。
「じゃあ早速」
「食うか」
と言いつつも、中央部分に乗ってる具材が重すぎて普通に持ち上げることが難しいんですけどね、初見さん。
なのでナイフとフォークで食べましょうね。
用意しましたから。
「!! 美味い!!」
「生地は分厚いが、それ以上にソースや具材の主張が強い!!」
「ソーセージはもっと多くてもいいかもな」
「生地自体にも味を付けたのが成功したな」
「本当にこれ一枚で良かったのではなくて?」
とまぁ、食べてる人たちの反応がこちら。
……一切れ取って置いて貰おうかな。
明日の朝……は重すぎるから、昼に食べるように。
「ピザを食ってるっていうよりは、ソースを飲んでるみたいな感じだな」
「チーズをもっと増やせばよりその表現に近づくだろうな」
「ホワイトソースとシーフードでも試したいのですけれど、流石に入りませんわね」
「チーズと蜂蜜、ブラックペッパーとかでも美味しそうですよね」
「うぅ……食べたいのに腹が……」
横から何言っても食べないから言い放題。
実際、クリームチーズとチーズたっぷりのシカゴピザに、蜂蜜やらシロップをかけて食べるのもあるっぽいし。
カロリーヤバそうだけど。
「ふぅ……」
「満腹?」
「流石にな」
さっきまでやいのやいの言ってた五人も、流石に食べるペース落ちて来たな。
それでも何とか、一人一切れは食べきったけど。
「……半分残ったな」
「流石に持ち帰りですわね」
いや、あのボリュームを半分食べただけでもスゲーよ。
俺なら空腹時でも一切れで満足する自信がある。
「新たなピザの形だったな」
「一人で食べるものではないが、それこそパーティ全員でシェアとかならば結構需要があるんじゃないか?」
「結構具材とかで値段張りそうだけど……」
「まぁ、通常のピザと比べたらな」
にしても、シカゴピザも異世界に進出か。
……絶対にシカゴに住んでる人は思ってもない事だろうな。
自分の知らないところで、海どころか世界線を越えてるなんて。
「そう言えばなんですけど」
「? どうした?」
「このピザの名前ってどうなるんです?」
ふとした疑問。
確か異世界では、ピザってしっかり定義付けされてたよね。
揚げピザの時にそんな話をしてたし。
で、このシカゴピザはその定義を満たしているのか?
「シェア前提のピザという事でシェアピザとかでいいんじゃないか?」
「あ、ピザとは言えるんですね」
「? ああ、生地にマンドラゴラと肉類、チーズを乗せた物だけがピザと言えると前に話したんだったな」
「ですです」
「シーフードピザのレシピを載せた時に話題になってな。古くからあるものを大事にしなければならない派と、新たなレシピも認めるべきだ派に分かれて議論が行われた」
「えぇ……」
結構大変なことになってません? 大丈夫だったのかな?
「ちなみに結果は?」
「神様から『下らぬ争いをするな』と直々に神託が下ったと協会が発表し収拾がついた」
「えぇ……」
介入すな。
そんなピザ論争に。
(そうは言ってもの? あのままじゃと容認派が形勢悪しでシーフードピザが認められぬところじゃったのじゃぞ?)
それが神様的には許せなかった、と。
(だってシーフードピザは白ワインに合うじゃろ?)
そーですねー。
(それが作れなくなるとは大きな損失だと考えて行動したわけじゃ)
こう、やってることは人々の争いを止めさせたって事で、神様のイメージに合うんだけど……。
動機がなぁ……。
白ワインに合う料理が消えるのを防ぐ、だからなぁ。
「ちなみに、トドメになったのはデザートピザのレシピだ」
「えぇ……」
「甘口のワインと合わせて神様に奉納した結果、神の名のもとに『ピザ』という料理の定義付けが改めてなされる事となった」
…………。
(ノーコメントじゃ)
まだ何も言ってませんよ?
「それ以来、ピザは『生地に具材を乗せてチーズで包んで焼いた物』というかなり緩い定義になってな」
「今ではほとんどの飲食店にオリジナル具材のピザが並んでいますわ」
「と言っても、従来までの『ピザ』もしっかりメニューには残っているし、何なら結構人気は上位だけどな」
まぁ、マルゲリータピザがメニューから消えないのと同じ理由よね。
長年愛されてきたのには理由があるっていう。
「私たちの国にも、最近その流れが入ってきた」
「だからこそ、さっきのピザ祭りの開催は期が良いって話だわな」
なるほどなぁ。
……そう言えばで思い出したんだけど、そろそろあのワインが解禁されるころだな。
姉貴にねだって家に届くようにして貰うか。
神様もいります?
(? 何をじゃ?)
この世界で、その年のブドウの出来を見るワインが発売されるんですよ。
(いるじゃろ、常考)
じゃあ神様の分も頼んでおきますね。




