定年後なら……
「パイでも作っとるんか?」
「こういうレシピなんだ」
ディープディッシュピザ。
もっとざっくり言ってシカゴピザ。
生地が分厚く、ピザ耳が高くなっている事が特徴であり、こう……何というか。
レアチーズケーキのタルトをイメージして貰って、タルト部分がピザ生地、レアチーズ部分が具材に置き換わってる感じ。
これが一発目に出てこなくて良かった……。
俺はこれだけで満腹になる自信がある。
「トマトソースにマイコニドとベーコン、ソーセージだな」
「チーズはたっぷりですわよ!?」
「シーフードのピザも作ろうぜ。どうせ食っちまうからよ」
「じゃな」
……マジでこの人ら、食ったものどこに消えてるんだろうな?
魔力か? あー……でも、こっちの世界に来始めた時よりも、若干体ががっちりとしてるような……。
筋肉になっているんだろうか……?
「よく食べる」
「アメノサさんもギブアップです?」
「もう入らない」
シカゴピザをゴー君の中に入れて焼く『夢幻泡影』達、『無頼』さんを添えて、から離れて俺の隣に座るアメノサさん。
まぁ、アメノサさんも食べる量はそこまで多いわけじゃないからね。
「カケル」
「何でしょう?」
「さっき話してた自作ピザ祭り。カケルは知らない?」
「う~ん……」
あれでしょ? ピザ生地だけ買って、好きな具材乗っけて焼くお祭りでしょ?
似たようなのなら知ってるんだけども……。
「一応知識としてはありますけど……」
「教えて!!」
俺自身もそんなに体験したわけじゃないし、どちらかというと動画とかで知ってるだけだからなぁ……。
まぁ、そんな知識が何かのきっかけになり得るかもだし、伝えとくか。
「一つは全部の具材に交換できるチケットを用意しているパターンですね」
「……?」
「例えば野菜……マンドラゴラは一種類に付きチケット一枚消費、肉は二枚消費みたいに食材の値段によって交換チケットの枚数が変動するタイプです」
「なるほど……」
俺の知識は東北への旅行の時に立ち寄った、市場の中での食事がベース。
ご飯とみそ汁を買って、事前にチケットを購入。
市場の中の協賛しているお店でチケットと食材を交換して、自分だけのご飯を作るってやつ。
市場だからと刺身メインかなーと思ったら意外とそんな事も無く、揚げ物やボイル、焼き貝に和牛まで結構幅広く合ったな。
チケットは一枚百円だったけど、色々取ったら二千円とか行っちゃったっけ。
まぁ、旅の楽しみを買ったと思えば相応の値段だったかな。
「でも、チケットはゴミにしかならないって『無頼』に言われた」
「チケットの素材によると思うんですよねぇ……」
日本だと簡単に紙のチケットが発券出来るし、燃えるごみとして捨てるだけだから処理も楽。
それに代わるものが異世界にあれば楽なんだけれども……。
「ラベンドラさん」
「ん?」
「魔物の素材で、比較的簡単に入手出来て、一度にある程度まとまった数が手に入って、割と需要があるような素材ってあります?」
「待て。……昨今の知育ポーションの需要で、『――』の葉はどこも欲しがっていたはずだな?」
「楽に倒せる魔物ですし、初心者冒険者の小遣い稼ぎになってるらしいですわよね」
「その素材をチケット代わりにするというのは? 知育ポーションを作っている所に説明して、まずはチケットとして使わせてもらって、使用後にそれらをそっくり返すんです」
「それだとゴミにはならねぇが……」
「返ってくるか? 言ってしまえば盗んで自分で捌いてしまえば利益になるんじゃぞ?」
適当に思いついたことを言ってるだけだけど、結構みんな真剣に聞いてくれるんだよな。
「チケットなので使わなければ食材と交換出来ませんし、チケット料金よりもその素材の値段が安ければ利益になりませんよね?」
「店側は? 食材とチケットを交換した後、回収せずに隠すことも考えられる」
「魔物の素材を投票券代わりにもしちゃいましょう。回収に応じなくてもいいけど、それだとお宅の店の食材は人気が無かったことになる、と暗に脅せば、口コミ目的での参加なら渋々応じてくれると思うんですけど……」
アメノサさん達の国のお祭りは、リリウムさん達の国の料理大会みたく、カッチリと順位を付けるようなものでは無いはず。
であれば参加は売名目的が大部分を占めているはずで、そこが達成されないような調整をすれば回収には応じてくれると思うんだよね。
「悪かねぇ」
「運営委員会に巡回させて、こまめな集計をさせる?」
「逆にチケットを自前で用意して水増しとかされかねんが」
「国が用意したチケットに何か目印を付けるしかないですかね」
「ふむ……」
耳をピコピコと動かし、尻尾もブンブンと振りまくり。
羽ペンを動かして色々とメモをしているアメノサさん。
どうやら、頭の中で組み立てられたらしい。
「ん、助かった。カケル、ありがと」
「力になれたなら良かったです」
「……政治家として私の国に来ない?」
「来るなら私たちのパーティに料理人としてが先ですわよ!?」
「どっちも行きませんよ」
「いや、酒のアドバイザーに」
「カクテルレシピのパイオニアにじゃな」
「行きませんってば」
(ワインの伝道師に……)
……行かないっての!!




