ずっしりくる
そもそもカレーというのは、よっぽどのことが無い限りあらゆる料理と手を取り合う事が出来る。
トースト、ラーメン、うどん、蕎麦。
これらの共通項は小麦粉を使った食べ物であり、じゃあピザにも当然合うよね? という話。
なお、蕎麦の小麦粉とそば粉の割合は二八であるものとする。
「当たり前に美味い……」
「ポテトのホクホク感がいいですわ!」
「カレーとチーズの相性が暴力過ぎる。もっとこれ食いてぇ」
「ちょっぴり辛い。もう少し抑えて」
「ビールが進む進む」
「ワインとも合うぞ!」
あー……どこぞやのソムリエが某チェーン店の10辛をワインと一緒に食べてたなぁ……。
いや、辛いでしょ。と思って見てたけど、合う合わないは別として辛いって言ってたっけ。
でもまぁ、そんな企画をしようと思う位にはカレーとワインも相性がいい……という事よね?
「マイコニドの旨味もカレーソースに溶け込んでいるな」
「肉との相性ももちろんいいですし、カレーソースはマジで当たりですね」
チェーン店のピザやにもカレーソースのピザはあるけど、今まで頼んだ事無かったんだよね。
ま、当然のように美味しい、と。
「このカレーソースはアレか?」
「王の会談の時に振舞ったやつだな。……あの時よりもアレンジをしてより美味くなっているはずだ」
「だよな。記憶と微妙に味が違ったからよ」
「? 一緒じゃないの?」
「「一緒じゃない!!」」
まぁ、カレーはそもそもアレンジの幅が膨大だし。
……というかヤバいな。
ラベンドラさんの作るカレーがそろそろ俺の作るカレーの味に追いついてきているぞ……。
これまで食べてきたアドバンテージで俺の作ったカレーの方がまだ美味いけど、もう一年もしない内に追い抜かれそう……。
頼む! 魚介の出汁を使ってカレールーを伸ばすことを覚えないでくれ!!
「ブイヨンやマンドラゴラのペーストを加えて結構手間をかけているんだぞ?」
「そうなんですのね」
ラベンドラさんの努力の報告は、食べる手を止めないリリウムさんに流される。
分かる、分かるよラベンドラさん。
普段料理をしない人たちは、料理をする側の努力を一切無視するんだ……。
ゴミを少なく、洗い物を少なく、より安価で、味は良く……と頑張ったところで、返ってくるのはいつもの、
「ごちそうさま」
という言葉だけなんだ……。
いやまぁ、異世界組に関してはそこに美味い、美味しい、最高、酒に合う、という言葉も付いてくるけれど。
いいんだ……俺は……。
それくらいで……。
――せめて洗い物くらいは手伝って貰えると嬉しいんだけどな。
「次のも焼けたぞ」
「オリーブかけ想定のピザでしたわね!!」
ラベンドラさんとアイコンタクトをし、お互いに大変だね、と頷いて。
焼き上がった五枚目のピザは、ベーコンとマイコニドのガーリックソース。
後がけでオリーブオイルを回して。
……いただきます!
「ガツンと来るニンニクのパンチが最高ですわ!」
「オリーブの香りも手伝って食欲をそそるぜ」
「コーラが美味しい……」
「ビールが美味い……」
「ワインが美味い……」
そんなしみじみする味じゃないだろ。
どっちかと言うと結構激しめの味だぞ?
ガーリックバターソースのパンチ力を、ベーコンの塩味と脂の甘み、マイコニドの旨味でより強化してる感じ。
ガーリックバターソースをジャブとするなら、このピザは北斗百裂拳みたいな。
ガツンときまくる感じが凄い。
――ただ、ちょっと重い。
大きめのピザを四切れも食べた俺の胃袋に、
「お前はもう、満腹だ」
と宣言してくる感じ。
その通りですよ……。
「大丈夫かカケル?」
「手伝おうか?」
で、一口食べてから全く進まない俺の様子に気付いたラベンドラさんやマジャリスさんが助け舟を……。
「ワイン飲むか?」
「ビールで流し込め」
出せよ。助け舟を。
あと、飲み物はコーラでいっぱいいっぱいなんだわ。
……コーラなんて飲んでるからこうしてお腹一杯なんじゃないですかね?
いやでも、ピザとコーラは合わせろってアメリカのどこかの州法に……。
「大丈夫です……」
「まぁ、そういうなら……」
「信じるか……」
まぁ、一度口を付けた手前、自分で食べるよ。
それがばあちゃんからの教えだ。
どんなものでも口を付けたら責任持って食べる。
――聞いてるか? 姉貴?
「ではカケルに合わせて次のピザはデザートピザにしよう」
「いいな!!」
「でも、まだ食べ足りないですわよ?」
「デザートピザの後にまた焼く。一度カケルに合わせようというだけだ」
「であれば賛成ですわ」
「カケル、何を乗せる?」
「マシュマロ!! チョコ!!」
……うぷ。
そんな重い物を乗せて焼きたくないでござる。
……よし。
「果物のジャムとかとクリームチーズとかでお願い出来ますか?」
「分かった。サッパリ系でいいか?」
「ぜひ」
これなら何とか……。
後は焼き上がった時に俺の取り分けを小さくしてもらって……。
「……それは?」
「『――』の種子でな。瑞々しく酸味が合ってサッパリした食べ物だ」
「……そのまま乗せるんですか?」
「流石に表面を削って食べる。だから安心しろ」
「ホッ……」
ラベンドラさんが取り出したよく分からない種子とかいうやつ。
そのまま乗せるのかと思って焦っちゃったよ。
何せ見た目が、どう考えてもキウイにしか見えなかったんだから……。




