……独房?
「……ちなみにさっきまで『無頼』さんってどこに居たんですか?」
ラベンドラさんが持参したピザ生地を伸ばし、トマトソースを塗り。
手で千切ったバジルの葉を散らして、好きなように具材を乗せる。
仕上げにチーズをこれでもかと乗せたら、ゴー君の中へ入れて焼きのターン。
焼き上がるまでに時間があるからと、疑問に思ったことを口にすれば。
「通称お仕置き空間」
「上下前後左右の感覚が無い、一切の光が無い空間に閉じ込められてた」
返って来たのは恐ろしい返答で。
そんな空間あるのかと思ったら、リリウムさんと目が合ってピースサインを出された。
あぁ……あなたが作り出したのか……。
「五感も時間間隔もない空間に閉じ込められると、短い時間でもクるものがありますの」
「最初は魔物を閉じ込めて弱らせる用の魔法だったはずなのだがな……」
「便利な魔法だったから使わせてもらった」
と言いながらアメノサさんもピースサイン。
そんなボールペン貸して、くらいのノリで使っていい魔法じゃないと思うんだけど……。
「しばらくは入れられたくねぇな」
「二度と、じゃないんですね……」
入れる側も入れる側なら、入れられる側も入れられる側だよなぁ。
普通一切の刺激が無い空間って発狂コースまっしぐらだと思うんだけど……。
たまになら入ってもいいか、みたいな感覚になる『無頼』さんバグってない?
「カケル、次のピザにはテリヤキソースを使う」
「じゃあマイコニド多めにして肉は鶏肉、焼き上がりにスクランブルエッグを乗せましょうか」
「最高だな」
ピザの焼き上がりを待ちながら二枚目のピザの準備。
焼き上がるよりも食べきる方が早いからね、しょうがないね。
「テリヤキソースも赤ワインと合うんですわよねぇ」
「もちろん買って来てますよ、微発泡のやつ」
という訳でワインドーン。
ふははは、崇めろ~、称えろ~。
「……そう言えばモフリストは?」
「気配はしねぇな」
さっきからアメノサさんがキョロキョロしてたと思ったら、姉貴を警戒してたのか。
というか、姉貴の呼び名がモフリストになってるのなんと言うか……。
残念でも無いし当然。
「旅行に行ってますよ」
「そう言えば……」
「ンな話してたような……」
しょうがないよ。あの時はフレーバードラフトの真っ最中だったはずだし。
「旅行先のお土産を送って来てくれる予定なので、楽しみにしておいてください」
「甘いやつか!?」
「甘いのだけじゃありませんよ?」
「ほぅ」
「酒に合うやつだといいなぁ」
そりゃあもう。
俺が真っ先にリクエストしたお土産は、日本酒と合うと思いますわよ?
送られて来てからのお楽しみだけど。
「そろそろ焼けるぞ」
「では、ワインも開けますわね」
ピザの焼き上がりに合わせてワインを開封。
最初に開けたのはランブルスコ・セッコ。
つまりは辛口のやつ。
パスタやピザに合うって書いてあったからピッタリだろうと思って買って来たんだけど……。
それを最初の一本にするとはリリウムさん、分かってますね。
――そりゃあ分かってるだろうなぁ。
文字通り俺なんかとはワイン飲んでる年数が違うだろうし。
「酸味を感じるベリー系果実の香り……」
「暗い色の果実感があるな」
「華やかな香りのニュアンスもあり」
「よく冷えているからそこまで香りは上がってこないがな」
という訳で飲む前恒例の香りチェック。
まぁ、ワインは香りを楽しむ物でもあるわけで……。
その内、専門店に行ってワイングラスでも買って来ちゃおうかしら……。
「きめ細やかな泡とフレッシュな果実感……」
「渋味よりも酸味や甘みの方を感じるな」
「うめぇンだよなぁ」
当然のように絶賛である。
さて……反応を聞くのが怖い神様はっと、
(あそれ、よ! こ! せ! そぉれ、よ! こ! せ!)
無視していいかな。
(ダメじゃろ!!)
……面倒だなぁ。
(何がじゃ?)
ノリが。
まぁ、ちゃんとお供えはしますけれど。
(ひゃっほい!!)
お供えしないと永遠うるさそうだし。
寝る時とかまでねちねち言われそうだし。
(当たり前じゃろう)
ほらね。
という訳で俺のとは別にグラスをもう一つ用意しまして、ワインを注ぎまして。
……この時点でみんな俺が何をするのか気が付いているようで、一旦飲んでいたグラスを置き、じっと俺の動きを注視して。
みんなで仲良く二礼二拍手一礼。
すると、グラスごと消えるワイン。
……グラスは洗って返してくださいね。
(ほいほい)
「じゃあ、食うか」
「ですね」
いつの間にか人数分で等分されていたピザをお皿に取り……。
(ちなみに神様? ピザは食べます?)
(欲しいのぅ)
確認したら、やっぱりか。
「ラベンドラさん、神様もピザを欲してるみたいです」
「であれば神用のピザも焼こう」
「すみません」
「何故カケルが謝る?」
いや、まぁ……何となく?
――確かに、なんで俺が謝ったんだろ?
謝る必要があるのは神様だろう。
(引かぬ、媚びぬ、省みぬ)
感謝くらいはしてもいいと思うの。
俺にじゃなくラベンドラさん達に。
(神の加護で返しとるでのぅ)
……まぁいいや。
神様用のピザが焼き上がるまで待っていてくださいね?
それじゃあお先に……。
「「いただきます!」」




