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『無頼』「わりぃ」

「持ち帰りの料理だが……」

「どうしましょ?」


 鍋料理唯一の欠点は、ラベンドラさん達に持たせる料理にはならないって所。

 いやまぁ、普通に過ごしてたらそんなの欠点どころか見えてこない部分ではあるんだけれども……。


「解呪したこいつを複数貰おう」

「松茸ですね」


 ラベンドラさんから示されたのは、恐らく俺らに全部を押し付けたと思われる、松茸マイコニドの一部を解呪して渡すと言うもの。

 食べながらこんなレシピは? とか言ってたもんね。

 試したくなったんだろうなぁ……。


「こいつのグラタンとかはどうだ?」

「ホワイトソースにもチーズにも相性が良いでしょうねぇ」


 その証拠に、頭に浮かんだのであろうレシピを俺に確認してるし。

 という訳で入り塩水を作って松茸マイコニドをその中にドボン。

 解呪するついでに汚れやらを落としまして……。

 解呪が終わったら丁寧に水分を拭き取り、石づきを落として処理完了。


「どうぞ」

「うむ」


 で、それをラベンドラさんに納品しましてクエスト完了っと。


「じゃあ、明日のご飯はよろしくお願いしますね」

「任せておけ。いくつか食材を頼めるだろうか?」

「俺に用意出来るものであれば……」


 ラベンドラさんから逆に依頼をされちゃったよ。

 えーっと……?

 カレー粉に、スイートチリソース、果物、シナモン……?

 カレー粉とかチリソースはまだ味付けだなって分かるけど、果物にシナモンとは……?


「デザートもピザにする予定だ」

「あ、なるほど、デザートピザ用ですか」


 合点がいったわ。

 まさか松茸とシナモンを掛け合わせるのかと……。

 絶対に合わなさそうな気がするのは俺だけじゃないよね?


「では、頼むぞ」

「必ず用意しておきます」


 と言って、魔法陣に消えていく異世界組。

 よし、これで明日はご飯の用意をしなくて済むし洗い物も少ない。

 俺が楽する日だ。


「……ちなみに姉貴?」

「なーに?」

「なんで慌てて荷造りとかしてるの? 夜逃げ?」

「いや、乗りたかった船が丁度明日出発で……」

「あまりにも急過ぎない?」


 異世界組を見送った直後から、姉貴が荷物をまとめ始めたと思ったら……。

 この人、翌日発のフェリーとか取ってますわよ。

 別にいいけど、本人がいいなら。


「ちなみに朝は早いの?」

「夜行船だから全然?」

「じゃあ急いで用意する必要ないじゃん」

「出発が横須賀だけど?」

「あー……移動時間が掛かるのね」


 納得した。

 それはそれとしても、今から準備は早い気もするけど……。


「準備はどれだけ早くしてても無駄にならないのよ」

「何も言ってないけど?」


 姉貴がいいならそれでいいよ、うん。



 ……翌日、最寄りの駅まで姉貴に送らされたので、折角ならとついでに買い物も済ませることに。

 訂正しよう。『最寄りの駅』ではなく、『新幹線が停車する』最寄りの駅までである。


「言うほど遠くないからいいんだけどさぁ」


 なお、片道三十分前後のもよう。

 往復一時間と書くと途端に遠く感じる不思議!


「ん~と、ハーブ系とか結構買って行ってあげるか」


 で、そうやって車を走らせたのだから、普段行かないお店に行こうという事で、ハーブとかを取り扱う専門店に。

 家の近くにもあるっちゃあるけど、今来てるお店の方が規模が大きいのよ。

 つまりは色々と種類があるわけ。


「お土産にするのと、ハーブティとかにしてあげるか」


 と異世界組の顔を浮かべつつ、あれもこれもと様々なハーブを購入。

 帰りにしっかりとラベンドラさんからのお使いも済ませまして。

 休みの日に出来る至福のひと時……時間の浪費であるお昼寝タイムにいざぁ!



「珍しいな不漁なンて」

「そうなんだよ。ここ数年やってきた漁師人生の中で、ここまで不漁なのはちょっと覚えがないレベルでね」


 ミカラデ国のとある港。

 水揚げされる魚介類や海棲生物で賑わっているはずのその場所は、何やら活気が少なくて。

 ピザに乗せる具材の中で、肉の調達を任された『無頼』が顔を出すと、漁師からそんな話が聞こえてきた。


「原因は?」

「分かったら苦労はしないさ。でも、こうして普段獲れてた魔物が獲れなくなった理由で真っ先に思いつくのは……」

「別の魔物の脅威から逃げてる、か」

「今のところはね。でも、例年なら巨大コロッサルが暴れる時期に姿を見せなかったし、他に思いつく魔物って言うのも……」

「ちっと潜って見てくるか」

「……へ?」


 言うが早いか海に飛び込んだ『無頼』は、そのまま物凄い勢いで海中を進み。

 息継ぎの為にちょくちょく浮上しながらも、海中を探すことおよそ一時間。


(おめぇか?)


 港から二キロほど離れた海底に、怪しく蠢く一つの影。

 目だけが怪しく光り、息をひそめるようにじっと動かないその存在を確認し、無頼は……。


(でけぇな)


 その全貌を目の当たりにし、素直な感想をこぼす。


(地震魚。このサイズは初めて見るぜ)


 現代で言うナマズの魔物版。

 地震魚と呼ばれるその魔物は、現代のナマズとの違いを上げると大きいものが一つ。

 それは、現代ではナマズは地震を感知するという迷信があるが、この地震魚は文字通り地震を引き起こす存在であるという事。


(下手に刺激すっと地震が引き起こされる可能性がある。……かと言って、港に戻って避難させてとかやってっと、コイツを見失う可能性がある……)


 規模が自然災害なだけに、『無頼』も判断を慎重にせざるを得ない。

 ――だが、


(ま、そンときゃそン時だ)


 下手に色々と考えるより、とりあえず行動を起こしてしまおうというのが『無頼』の性格。

 という事で。

 この後、港が津波と地震に何度か襲われるのだが。

 それが『無頼』と地震魚との闘いの余波である事を漁師たちが知るのはもう少し後のことであり。

 その事で、『無頼』がアメノサにこっぴどく叱られるのは、漁師たちが知る由もない事である。

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― 新着の感想 ―
次の話見て分かる、アメノサちゃんの怒り 『無頼』「わりぃ」 アメノサちゃん「許さないよ?」(目が笑ってない笑顔) もしくは…ゆ"る"さ"ん"!!(仮面ライダーBLACK風に
>松茸 筍といっしょにハヤシライスに入れませふ←戦前のレシピ >ナマズ うちのレシピ本には南部アメリカな料理に紹介されていましたぐらいしか調理方法を知らないや?
あのー…数話前にお姉様は明日別店舗の缶ワイン買ってくる的なこと言ってますが、それ放置で出発しても良かったので? 前みたいに異世界組面倒臭くこじれません?
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