ここまでとは聞いてないっす
「ふぅ……」
「〆まで美味し」
「蕎麦の風味とマイコニドの風味が一層酒を引き上げてたな」
「じゃな。最高の味わいじゃったわい」
いやぁ、本当に。
鍋の〆の蕎麦ってどうしてこんなに美味しいんだろうね?
お腹一杯だしちょっと一啜りだけ……とか思ってたのに、当たり前に食べきっちゃったもん。
おかげでお腹がパンパンですわよ。
「それで? 今日のデザートは?」
なお、マジャリスさんは俺が腹パンだろうが容赦はない模様。
もう少しだけゆっくりさせてもろて……。
「今日のデザートも凄いわよ? ……本当は昨日に出したかったんだけど……」
「出せばよかったのでは?」
「みんなお腹一杯だったっぽいし、何より、一日で食べきるの勿体ないなぁって」
「それはまぁ……そうだな」
姉貴にしては珍しくまともな事言ってる。
確かにお土産って、なんか食べきるのが勿体なく感じるんだよな……。
俺だけ?
「今日はどのようなデザートなのだ?」
「ふふーん。生スイートポテトってやつを買って来たんだよねぇ」
ハイ美味い。
んなもん食べなくても分かる。
絶対に美味しい奴じゃん。
……というか、最近『生〇〇』って商品多くない?
スーパーに売られてるパンにも、『生○○』シリーズが存在するぞ?
あれか? やっぱり日本人は生の方が好きって事か?
――魚も刺身とかで食べるし。
「紅茶かコーヒー……」
「紅茶」
「紅茶ですわ」
「私も紅茶」
「コーヒーブラック」
「同じくブラックじゃ」
「コーヒー。ミルクだけくれ」
「私は牛乳だけでいいかなぁ」
えーと、姉貴が牛乳でマジャリスさん、リリウムさん、アメノサさんが紅茶。
ラベンドラさん、ガブロさん、『無頼』さんがコーヒーで、『無頼』さんだけミルク有り。
他はブラックね、了解。
「何味なのだ?」
「スイートポテトだからさつまいも味だけど、フレーバー詰め合わせパックを買って来たから結構あるよ?」
俺が飲み物を淹れてる間、姉貴は買って来たデザートをお披露目タイム。
なるほど、フレーバースイートポテト……。
そういうのもあるのか。
「緑色の抹茶か」
「チョコの香りがしますわね」
「紫のは……何?」
「これ美味そうな匂いがすンな」
「全部食べるぞ!!」
「数に限りがある。一人で食うなよ?」
みんなマジで甘い物は別腹なのかな?
俺、結構はち切れそうなんだけど。
……マジャリスさんは真面目に甘い物が別腹なだけだろうけれども……。
「紅茶とコーヒーです」
「飲み物も来ましたし、いただきましょう」
「第一回選択ドラフト希望フレーバ―……」
「アメノサ、紫のやつ!」
で、俺が飲み物を持っていったらなんか始まったんですけれど。
ちょっと面白いのやめなよ。
「俺、この茶色いのだ」
えーっと……アメノサさんが紫芋で、『無頼』さんがほうじ茶かな?
「リリウム、これですわ」
「ラベンドラ、同じくこれだ」
で、リリウムさんとラベンドラさんが詰め合わせに二個入ってる……ブリュレかな?
ブリュレ美味しそうだな。
「ガブロ、黒いのを貰うぞい」
それは黒ゴマきな粉だね。
……ヤバい、全部美味しそう。
――ん? 待てよ?
なんか変じゃないか?
普通こういう時ってマジャリスさんがいの一番に自分の好きなフレーバーを掻っ攫っていくのでは?
なのにまだ声すら発していない?
妙だな……。
と思ってマジャリスさんを確認すると……。
「…………」
何故か腕を組んでどっしりと構えているマジャリスさん。
どんな感情なんだ?
「私はプレーンを貰うわね」
「じゃあ俺は抹茶で」
一応動くことを想定して姉貴とは指名を少し間を開けたけど、それでもマジャリスさんは動かない。
一体何を考えているんだ?
――すると、
「来たか」
何が?
なにも来てないが?
順番か?
「マジャリス……全部だ!!」
「却下」
「許されるわけありませんわ」
「大人しいと思ったらそういう……」
「どうせろくなこと考えてねぇと思ったぜ」
マジャリスさんの目論見、散る。
いやまぁ、想像出来た末来だっただろうに……。
「……じゃあチョコ」
と、やや不貞腐れつつ焦げ茶色のフレーバーを獲得。
チョコじゃなくてカカオですね、それ。
「それでは……いただきますわ!!」
*
「『夢幻泡影』主催の慰労会との事らしいですが、何か聞いていますか?」
ミカラデ国主催の第一回料理大会。
大成功に終わったその後片付けと、様々に浮き出てきた後始末をしている最中に。
大会運営責任者である元大臣は、広報担当責任者のアエロスに尋ねる。
その話が舞い込んできたのは少し前。
大会の運営に尽力したのに、何のうま味も無くては次に繋がらない、と『夢幻泡影』からミカラデ国の国王に進言があり、であればお主らがもてなしてくれるか? と国王直々の指名と聞いた。
……実際はアメノサと連携してそうなるよう仕向けているのだが、そんな事は本人たち以外では知りようが無い。
「なーんもっす。というか、あの人らから事前に情報とか貰った事無いっすよ?」
なお、アエロスはこの件に関して何も把握しておらず、当然、どんな催し物になるかも見当が付いていないのだが。
「それは……その……何というか……」
「もう慣れたんで気を使わなくて大丈夫っす。あと、心の準備をしておいた方がいいっすよ」
「それはどういった意味で?」
「あの人らの事っす。当たり前に誰も知らない未知の料理とかポンポン振舞いかねないっすから」
それでも、身構える事は出来る、と元大臣に忠告。
――後日、ミカラデ国国王同席のもと、アフタヌーンティー形式で慰労会が行われることになるのだが……。
この時の感想を、アエロスは後にこう残す。
「味なんて一切覚えてないっす」
と。




