もちろん初めて
「マイコニドの香りが鼻から抜けきらない内に飲む清酒がうめぇ……」
「この瞬間が生きてるって感じがするのぅ……」
結局神様からのおさがりのお酒は諦めたものの、だからと言って日本酒を飲むことを諦めたわけではなく。
ガブロさんと一緒にねだって来たので、ちゃんと与えてあげました。
美味しく楽しむならヨシ!
「ワインも美味しいでしょうに」
「別に不味いってわけじゃあねぇよ。俺は清酒と合わせてぇってだけだ」
「酒は飲みたいように飲むのが一番。ワインだってそうじゃろ? 一々その料理にはこっち、ロゼは最後、とか指示されたら嫌じゃろ?」
「嫌というかぶっぱなしますわ」
「何を、とは聞かないでおきますね」
別に誰の事でもないけど、例えば指示厨と呼ばれる方々は、命が惜しかったらリリウムさんだけは標的にしない事を進める。
このエルフ、当たり前に場所把握からの瞬間移動、そこから紐無しバンジー決行とかを流れ作業でやるぞ。
マジで。
「しかし、あのマイコニドの香りがここまで芳醇になるとはな」
「加熱がカギだったみたいだな」
「元から嫌な臭いはしませんでしたけれどね」
まぁでも、松茸の匂いは海外からの評判は良くないって聞くしなぁ。
異世界組からの評判もそこまでよくなかったか。
「串焼きとかにしたらどうだ?」
「だったら包み焼きの方がいい。バターとワインを入れて……」
「それ滅茶苦茶美味しそう」
「やるなら赤ワインですかねぇ……」
ラベンドラさんから松茸マイコニドのレシピが無限に出てくるじゃん。
もう少し持ってない? ちょっとジャンプしてみてよ。
「翔が言ってたステーキも美味しそうだったのよねぇ」
「俺のは焼くだけだからな。まぁ、ソースとかを拘れるっちゃ拘れるけど」
「ニンニクを利かせた醤油ベース、さっきのワインとバターのソース。他には?」
「意外と貰ったトマトのソースがいい感じだと思うんですよねぇ」
トマトをベースに、ソースやニンニクを足していって……。
ファミレスでよくある、ハンバーグとかにかかってるトマトソースをイメージして貰えば分かりやすいと思う。
まぁ、かけるのは肉じゃなくて松茸なんですけれども。
でも、悪く無いと思うんだよなぁ。
「トマトソースを?」
「です。もちろん、トマトソースをベースに色々と味付けしますけど」
「ふむ……」
こういう、レシピの意見交換割と好き。
自分が思いつかないようなレシピを教えて貰えるの、あまりにもありがたすぎる。
……姉貴とはこんな会話できるはずも無いからな。
「それも明日のピザで試せるんじゃない?」
「そうか。そもそもピザでトマトソースにマイコニドを……と話をしていたな」
失念していた、みたいな反応をするラベンドラさん。
あるよね、そういうの。
右手に持ったスマホを探すとか、かけてない眼鏡をつい持ち上げる仕草をするとか。
まぁ、俺眼鏡かけてないんですけれど。
「ピザに肉は乗るんだろうな?」
「乗せてもいいが……そうだな。『無頼』」
「あン?」
「明日のピザに乗せる食材、肉関連はお前に任せる」
「構わねぇぜ」
「という訳だ。食べたい食材があるなら『無頼』に頼め」
「せめて食べられるものをお願いしますわ」
「俺はなンだと思われてンだ?」
『無頼』さんに対する信頼? が厚いのか何なのか。
それはそれとして、『無頼』さんが調達してくる肉類ってのは気になる所。
「ちなみに聞くが、今のところ何を持って来るつもりだ?」
「『――』か『――』。今の時期だと『――』もうめぇな」
ホッ。
何言ってるか分からないけど、ちゃんと食材っぽい。
あと、しっかり魔物の名前が聞こえていない事にもホッとした。
(解説するとこっちで言う海豹、トド、ラッコ肉じゃな)
いらんいらんいらん。
あと、どれもこれも普通に生活してたら口にしない肉たちじゃないですかヤダー。
……でも逆に考えると、異世界産でもなければ滅多に口にすることがないってわけで……。
食べられるなら食べておきたいような気も……。
「ワインには合うラインナップですわね」
「それらなら大丈夫だろう」
大丈夫なんだ。
まぁ、異世界人サイドからしたら、食べ慣れてる肉なんだろうなぁ……。
「どれも臭いから、しっかり血抜きしてよ?」
「あの臭さも美味さの内だろうが」
「絶対に嫌。カケルからも何か言ってやって」
急に俺に白羽の矢が立つじゃん。
でもまぁ、臭い肉は食べたくないし……。
「俺も癖があり過ぎるのはちょっと……」
「よく分からないけど、ジビエならある程度臭い物じゃないの?」
「だったら俺はハムとかベーコンとかソーセージを乗せたいよ」
「それもそっか」
姉貴も入って来たけど、申し訳ないがわざわざ臭い肉を食べようとは思わん。
結局、美味しいから食べるのであって、そうじゃないならわざわざ食べたいとはならんのよな。
「ふぅ……美味かった」
「明日のメニューの話をしながらも、しっかり食べましたわね」
「〆はどうする?」
「雑炊かそばですけど……」
「お蕎麦!」
という事で。
姉貴の一声できのこ鍋の〆は蕎麦に決定。
異世界黄金出汁と、それに溶け込んだマイコニドの出汁をたっぷり纏ったお蕎麦は。
あまりにも美味し過ぎたとだけ報告しておきます。




