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唯一の失態

「いい匂い」

「この飯が出来る匂いってのは、どうしてこんなに腹が減るんだろうな?」

「これから食べられるって言う期待感からじゃないですかね」


 何を当たり前のことを。

 美味しそうな匂いを嗅げば、自然とお腹が減るんだよ。

 人間とはそういう生き物だ。

 ――実際、好きな食べ物やスイーツを視認すると、胃が動いてその食べ物が入る隙間を開けるっていう、文字通り別腹の存在が確認されてるとか聞いた事がある。

 お腹が鳴るのも、胃の中の空気が移動するからとか聞くしね。


「炊き込みご飯も炊けたみたいね」

「タイミングバッチリ」


 きのこ鍋からの香りと、炊き込みご飯の香り。

 秋の恵みを感じるダブルパンチの香りに、食べる前からノックアウト寸前ですわよ。


「じゃあ、食べますか」


 という訳で。

 炊き込みご飯を一度おひつによそい、そこからみんなの茶碗へと盛っていく。

 おひつに移す必要は無いだろという意見は須らく却下。

 おひつに移した方が炊き込みご飯は旅館で食べてる雰囲気が追加されて美味しそうに感じるから。


「一面マイコニドだな」

「全部入れたの?」


 鍋を移動させ蓋を取れば、そこに現れた光景はマイコニドの運動会。

 ――なんで顔面部分を削っとかなかったんだろ。

 運動会って言うか温泉って言うか……。

 マイコニド全部の顔が死んでるから灼熱地獄というか。

 おおよそ食べ物を評するような言葉ではないものしか浮かんでこない……。


「最初は適当によそうから、その後で各人気に入った具材を各々でとれ」

「はーい」


 というラベンドラさんの言葉に元気よく返事をし、マイコニド達がよそわれた皿を受け取って。


「いただきます!」


 全員で手を合わせいただきます。

 へへへ、どれから食べようかしら?


「!? 炊き込みご飯が美味しいですわ!!」

「芳醇でスッキリした香りが口から鼻に抜けるな!」

「香りに合わされた味付けも最高じゃわい。噛む度にじんわりと出汁が染み出してくる」

「調理前の香りは正直、そこまでいいものではなかったが、こうして食べると全然有りな香りだな」

「お鍋も美味しい」

「出汁がうめぇよ。この出汁を日本酒に入れて飲みてぇな」


 炊き込みご飯も鍋も好評。

 そう言えば、松茸マイコニドは渡された時にそこまでいい香りじゃないって言われたんだっけ。

 でも、姉貴との試食の時はそこまで変な臭いでもなかったし……。

 加熱した事で香りに変化でもあったのかな?


「……美味い」

「分かる」


 で、その炊き込みご飯をパクリ。

 まずね、口に入れた瞬間から松茸の香りが一気に来る。

 最初嗅いだ時は土の匂いって言ったけど、なんだろうな……マジで森の匂いなのよ。

 でも、全然嫌な感じじゃなく、むしろスッキリする感じの香り。

 それがまたご飯と合いましてな。

 出汁の味わいも合わさって、これとお吸い物だけでご飯として完成されてるだろって感じ。

 具材の松茸マイコニドもいい感じ。

 香りだけじゃないぞって主張してくるよ。

 傘の部分は柔らかいシイタケ、軸の部分はエリンギの食感が近いかな。

 ただ、そのどちらにもない香りと、噛んだ時の溢れる出汁は唯一無二。

 香り松茸味しめじって言葉も、異世界のマイコニドにはどうやら適用されないらしい。

 松茸マイコニド、味もいいよ。


「くぉ~……美味い!!」

「言うことありませんわ」


 ガブロさんとリリウムさんが、きのこ鍋を食べて悶絶。

 どれどれ?

 ――ッ!?


「優勝」

「そんなに!?」


 俺の感想に姉貴が驚くけど、この美味さは食べんと分からん分からん。


「うっま」


 まずそもそもとして、異世界黄金出汁が最強に美味い。

 その上で、その最強に美味い出汁に、異世界マイコニドの出汁も加わってさらに倍。

 『無頼』さんが出汁を日本酒に入れて飲みたいって言った気持ちが分かってしまう……。

 あと、キノコの香りが凄くいい。

 松茸程ではないにせよ、鼻の奥をくすぐる程度には香ってくるそれは、食欲を刺激してくる。


「米にも合う!!」

「当然じゃな!!」


 きのこ鍋を食べた後に掻っ込む炊き込みご飯がまたうめぇんだ。

 きのこときのこだから相性は当然いいとして、きのこ鍋の旨味に負けない炊き込みご飯と、炊き込みご飯の香りに負けないきのこ鍋。

 互いに高め合うライバル関係みたいなもんか?


「出汁を吸った豆腐が美味い……」

「白菜も美味しいですわ!」

「なンと言っても肉だろ、肉」

「主役はきのこ」


 今回の鍋、確かに木綿豆腐の方が良かったかもしれない。

 出汁を吸った豆腐の味があまりにも強すぎる。

 ……今回は大人しく勝ちを譲ってやるか。


「そろそろワイン飲む?」

「飲む!!」

「待ってました!!」


 で、ある程度堪能したところで姉貴からの提案。

 さて、それでは見せて貰おうか、コンビニの缶ワインの味わいとやらを。


「白とロゼ、どっちからがいい?」

「悩ましいな……」

「ロゼ……でも白からの方が……」


 どうせどっちも飲むことになるんだからそんなに悩まんでも……。

 ……ちなみに神様はどっちから飲みます?


(わし? そうじゃなぁ。マイコニドに合わせるならロゼからかのぅ)


「ロゼからにしません?」

「ほぅ?」

「カケルがそう言うならそうしましょう」


 文字通り天の神様の言う通りってね。

 という訳で姉貴、ロゼワインからお願いします。

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― 新着の感想 ―
酒ソムリエの最高位な神様が言うんだから間違いない なんだろう……神様ってイメージより酒のカリスマな印象…
御飯の炊ける匂いを異世界の人は…
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) 唯一?(´・ω・`)…………まあ翔君が唯一と言うならそうなんでしょう(買わなかった為姉御が買い物に行く事になった豆腐…………)
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