大きいは正義
「次のデザートとは?」
「クレームブリュレタルトなんだけどね」
と、釣れた異世界組に姉貴が見せるのは、クレームブリュレの上に宇宙服を着た人が立って旗を立ててるパッケージのお土産。
ツッコミどころしかない。
「ほぅ」
「調べている内に食べたくなっちゃってねぇ」
なんでも、最初は空港内で買えるお土産だけにする予定らしかったんだけど、何があるかと調べている内に検索範囲が広がっていき……。
最終的に、東京駅まで足を広げて買って来たとか。
もはや異世界組へのお土産というより、姉貴が食べたい物のシェアみたいになっちゃってたり……。
「ちなみに色々調べてたらこんなお土産もどう? って勧められてきてさ」
「あー……」
あるある。
ちょっと気になった事を調べただけなのに、それ関連の物をお出しされ続ける的なの。
某動画サイトの広告とか、顕著だよね。
「結構小ぶりですのね」
「まぁ、お土産ですしねぇ」
で、姉貴の食べたかったらしいクレームブリュレタルトは、リリウムさんはああ言ったけど、俺としてはサイズ感普通なのよな。
というか、お土産としてならこれ位のサイズじゃない? って感じ。
そりゃあ、クレームブリュレそのもののお土産とかもあるだろうけども。
「これくらいのサイズが手軽に食べられていいぞ?」
「……それもそうですわね」
なんて言いながら一口。
「これもまた、さっくりした歯ごたえの物ですわね」
「プリンみたいだ!」
「表面の焦げが香ばしさとほのかな苦みを演出している……美味い」
「持って帰りたい……」
「マジでこんなのを幼少期から食ってたら、甘い物好きになってたンだろうなぁ」
「舌が肥えて他の甘味じゃ物足りんくならんか?」
「……あり得る」
みんなの反応が落ち着いてると思ったそこのあなた!
ガブロさん以外の全員が、ご機嫌に耳をピコピコ動かしている事実を知るべきである。
なお、ガブロさんだけは通常運転なもよう。
まぁ、エルフみたいに長い耳でもないし、『無頼』さんやアメノサさんみたいに目立つところに有るケモノ耳ってわけでもないしな。
こう考えると、ドワーフって結構人間寄りだな?
もちろん、身長とかの違いはあるけど。
外見的には、一番ここに来る種族の中で人間に近いかもしれん。
「カケル」
「……はい」
「これの作り方は分かるか?」
「ごめんなさい」
作り方までは流石に分からんよ。
俺に出来るのはせいぜい成分表から、何が使われてるかを推測するくらい。
「クリーム自体に香りが付いているのか、かなりプリンに近いように感じる」
「あー……。ホワイトチョコを混ぜて、プリン風にしてるらしいです」
「……なるほど、ホワイトチョコを混ぜるのか……」
熱心にメモしてるラベンドラさん。
この様子だと、異世界で東京土産が再現される日も遠くは無いな。
「焼きたてじゃないのにタルトがサクサクなのはなんで?」
「そういう風に作ってるからでは?」
「むぅ」
いや、知らんし。
個装とかが関係してそうではある。
タルトのサクサク感が失われるのは、湿気を吸ってるからだろうし。
「ふぅ……美味かった」
「大満足」
「こうして複数のデザートを食べられるのは幸せでしかない」
紅茶を飲み干し、コーヒーをすすり。
全員が全員綺麗に完食。
まぁ、ここで残すような人たちじゃない事は知ってますけれどもね。
「……それで、持ち帰りの料理は?」
「ちょっと作りたかった料理を作らせて貰っても?」
「構わんが?」
メモを終えたラベンドラさんの言葉を合図に、持ち帰り料理を開始開始。
まずは……。
「ガブロさん」
「ほい」
「秋刀魚を焼いて貰えます?」
「任せておけ」
ガブロさんに秋刀魚を焼いて貰い―の。
ご飯をボウルに移動させ、そこに米酢、砂糖、塩を混ぜた寿司酢を合わせてよく混ぜる。
すのこを敷き、その上に海苔を乗せたら、酢飯を薄く乗せていって……。
「焼けたぞい」
「もらいます」
焼き上がった秋刀魚を酢飯の上に。
「リリウムさん、骨と尻尾と頭を抜いてください」
「お任せくださいな」
で、食べる時に煩わしくないように抜いて貰って、水気を切った大根おろしを秋刀魚に添え、巻いていく。
以上! 秋刀魚の丸ごと巻き寿司、完成!!
「このまま食べてもいいですし、食べやすい大きさに切ってもいいですね」
「付けるのは醤油か?」
「醤油が美味いでしょうけど、塩でもいけると思いますよ?」
「なるほど」
よし。
一度作って見せれば、後はラベンドラさんが自分でアレンジしながら作るだろ。
とりあえず、俺の明日のご飯分は、今作ったので確保出来たとして。
「姉貴も明日食べる?」
「食べるー」
もう一本作らなきゃな。
「私たちの国じゃあ考えられない料理」
「そもそも米がまだねぇからな」
「そうじゃない……」
アメノサさん達がなんか言ってるけど、無視しよ。
「今後はこのサイズの魚にも気を配ってみますわね」
「たかだか一食分と、これまでは見向きもしなかったからな」
「冒険者だから当然。ちまちま一食分の魔物なんて狩ってられない」
……もしかして、これまでの食材たちのほとんどがデカかったのって、そういう理由?
単に異世界の魔物たちがデカいのかと思ってたら……。
狙ってそういう個体を狩っていたのか?
「よし、出来た」
「それじゃあ、カケル――」
と、持ち帰り料理も出来たし、異世界に戻ろうとしたリリウムさんに、
「待て、リリウム」
ラベンドラさんが待ったをかける。
「どうしましたの?」
「まだカケルに食材を渡してない」
あー……そう言えばそうだったわ。
トマトだっけ? 神様曰く。
「マイコニドとマンドラゴラだ」
――あ、両方?




