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変顔モフり罪

 厚焼き玉子も焼けたので、全員で庭へ移動。

 そして、何とラベンドラさんからおひつをいただきました。

 しかも、木で出来たやつ。

 旅館とかで見るご飯を入れる入れ物ね。


「え、めっちゃいい」

「マジャリスが作ってくれた」

「いつもいつも飯食ってばかりだからな。たまにはと思ってな」


 え、マジ?

 マジャリスさんの口からそんな言葉が出るなんて……。

 たまには、の頻度が少なすぎるとか思っちゃダメなんだろうな、うん。

 でも、木のおひつは本当に嬉しいかもしれない。


「ちなみに例の如く魔法を付与してある」

「効果は?」

「保温と、米粒がくっつかなくなる魔法だ」

「え、普通に最高」


 あらゆる食器を洗う時の敵、引っ付いた乾燥ご飯粒。

 おひつなんて、絶対洗うの大変なんだろうなぁと心の片隅に思ってたのよ。

 痒い所に手が届く、エルフの魔法ってやっぱり凄い。


「曲げ物とか、出来たんですね」

「エルフだぞ? 木を活用するのは生活の一部だ」

「あ、確かに」


 思えば俺の元々のエルフのイメージって、森の中に住み、自然と共存して自然を愛する種族、みたいな感じだったな。

 なんでそんなイメージが薄れていったかは……目の前のエルフ達が答えとしか……。


「じゃあ焼いていきましょうか」


 そう言って七輪に炭を入れ、網をセット。

 火を点ける前に網に酢を塗りまして。


「お願いします」

「うむ」


 俺の声を合図に、エルフの三人がそれぞれ炭に着火。

 火が付くまでに時間が掛かるとか、難しいとか言われる炭ですけれど?

 こうして魔法に頼ればすぐなんだよね。

 魔法の力ってスゲー。


「それが今日焼く魚か」

「かなりスリムですわね」


 で、俺が用意した秋刀魚を見てそんな感想を言うリリウムさん。

 そりゃあ、異世界の魚たちに比べたらスリムでしょうよ。

 でもね? この魚の持つうま味は、ちょっとやそっとの魚じゃあ太刀打ちできませんわよ。

 ……さて、と。


「? 何をする気だ?」


 取り出したるは、何の変哲もない刷毛(はけ)


「魚の全体にうっすらとコロッサル醤油を塗ります」

「ほう」


 ちなみに味付けが目的じゃない。

 コロッサル墨の魚のクオリティを上げる効果。

 それを秋刀魚に適用するためのもの。

 ちなみに焼き上がったのにも大根おろしと共にコロッサル醤油をかける予定。


「どれ、任せろ」


 で、やる事を把握したラベンドラさんは、秋刀魚を袋から取り出して宙に浮かべ、もの凄い速度でコロッサル醤油を塗っていく。

 ……魚が宙に浮く絵面ってシュールだな。

 猫だったら驚いて思わず後ずさるレベル。


「火はいい感じじゃぞ」

「じゃあ焼きます。焼き加減はガブロさんに任せますよ?」

「おうとも!」


 七輪の中の炭がいい感じとの事なので、焼き物担当大臣にバトンタッチ。

 七輪に秋刀魚を並べ、空いたところに……。


「これらも焼こう」


 ラベンドラさんが虚空から何かを取り出して網の上へ。

 これって……。


「キノコです?」

「うむ。先のスタンピードの戦利品だ」

「あ、なるほど」


 並べられたのは舞茸のような見た目のマイコニド。

 あ、こっちはヒラタケっぽい。

 こっちはエリンギだな。

 異世界にもそれらの種類はあるんだね、面白い。

 思えば、トリュフもあったし、あるにはあるのか。

 ……? あれ? でも、トリュフはマンドラゴラじゃなかった?


(あのマンドラゴラは少々特殊でな。マンドラゴラでありマイコニドというような存在じゃな)


 そうする理由があったんでしょうか?


(マイコニドのままにすると弱すぎたんじゃよ。あと、ステルス性が高すぎて誰にも見つからん)


 見つけやすくするためにマンドラゴラの属性を足して、脅威をプラスした?


(ざっと言うとな。生態系への影響も考慮し、見つからないよりは脅威性がある方が良いとの判断じゃな)


 よく分からんけど、神様が考えてるって事は何となく分かりました。


(何となくではなくしっかりと理解して欲しいんじゃがな)

「ほっ」


 なんて神様と会話をしていたら、ガブロさんが秋刀魚をひっくり返した。

 皮に綺麗な焼き目が付き、脂が焦げて皮にいくつものパリパリの部分が出来ている。

 それでいて皮は破れていないから、ただただ綺麗に焼けた秋刀魚って感じ。

 網に酢を塗ったのが効いたのか、元々そういう秋刀魚だったか。

 あるいは……コロッサル醤油を塗ったおかげかもね?


「この煙だけで米が食えるな」

「いい匂い」


 獣人族が姉貴にモフられながら、秋刀魚の焼ける匂いを肴にビールをグビリ。

 早いっての。

 まだ乾杯もしてないんだぞ。

 ……まぁ、焼き担当のガブロさんはさっさと一本開けてるんですけれども。

 あと姉貴、顔が怖いからせめて不審者感は消しなさい。

 口を閉じろ、涎をすすれ。

 目は開けろ。


「マイコニドも焼けたようだ」

「もう待ちきれませんわ!」


 という事で焼けた秋刀魚をお皿に乗せ、そこにラベンドラさんがすり下ろした大根おろしをどっさりと。

 そして、


「ほいですわ」


 という謎の掛け声と共に、リリウムさんの手には秋刀魚の頭と尻尾、そして、それらを繋ぐ骨が綺麗に抜かれてぶら下がっていて。


「魚を食べる時に骨を取るのも面倒ですもの。事前に抜いておきますわ」


 なんて、嬉しい言葉を頂いたところで、晩御飯の完成。

 それじゃあ、今年の秋刀魚……、


「「いただきます!!」」

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― 新着の感想 ―
いまだに、秋刀魚の内蔵食べれないんですよね。苦手で。
秋刀魚の頭・しっぽ・骨は抜いても、肝を抜かなかったリリウムさん。一番うまいところを捨てる悲劇を本能で回避しよった。さすエル
で、俺が用意した秋刀魚を見てそんな感想を言うリリウムさん。 そりゃあ、異世界の魚たちに比べたらスリムでしょうよ。 でもね? この魚の持つうま味は、ちょっとやそっとの魚じゃあ太刀打ちできませんわよ。 …
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