大掃除あるある
問、どこかにあったはずの七輪を姉貴に探すようお願いし、俺は仕事に行きました。
帰宅した時、どのような状況だったか答えなさい。
答え、散らかしっぱなしで七輪も見つけられていない、でした。
「……弁明は?」
「出てくるものが懐かしくてつい……」
いやまぁ、分からんでもないけど。
庭にある小さな納屋。
そこに色々と詰まってたはずだからと、姉貴に探させたんだけど……。
確か、そこに俺と姉貴で小さい頃に色々と押し込んだような記憶が……。
うん。現に、今姉貴が手に持ってる海苔缶とか記憶にあるわ。
何が入ってたの?
「うわっ……懐かし……」
「でしょ?」
姉貴が持っていたものはビーズアクセサリー。
こう、ピアノ線にビーズを通して自分なりのアクセサリーが作れる的なキットを、誕生日だかクリスマスだかに貰っていたんだよな……。
そういや、その頃からアクセサリーとか、キラキラしたものが好きだったのか?
だから今宝石商になってたりする?
「んでも、もうすぐ異世界組が来ちゃうから、七輪引っ張り出して」
「はーい」
「ついでに他のは思い出と共に納屋に押し込んどいて」
「私は……思い出にはならないさ」
「誰も姉貴ごと入れとは言ってないわけで……」
なんてやり取りをしつつ、納屋の一番隅にあった七輪を引っ張り出し。
姉貴が広げた子供の頃の思い出たちを、再び納屋に押し込んでいく。
……その納屋の中で、じっとしていてくれ。
「あと、シャワー浴びてきな」
「そうする」
散々思い出と戯れた姉貴が、とても埃っぽい。
そのまま食事とか、翔君許しませんからね。
「えーっと、焼き網焼き網」
炭は買って来たし、七輪は引っ張り出した。
後は網を用意して……。
「今回は酢だな」
網に酢を塗ってコーティングしていく。
秋刀魚を網焼きすると引っ付いちゃってボロボロになるし、見た目が悪いと美味しさも軽減されちゃう。
初めは油を塗ってたんだけどね、サラダ油。
酢やレモンでも網にくっつくことを防げるみたい。
だったら試してみようってね。
「うし、じゃあ色々と準備だな」
庭でのセッティングの残りは異世界組が来てから。
それまでに、色々とやっておくことがある。
とりあえず白米とみそ汁、秋刀魚さえあれば姉貴はご機嫌だから、味噌汁作り。
……すりおろした山芋を小鉢で出すといいかもな。
おーい、山芋マンドラゴラ君やーい。出番だぞ~。
「どうせなら厚焼き玉子とかもあってもいいな」
想像されるは旅館とかに泊まった時のご機嫌な朝食。
ただ、日本人としての感想を言うなら、そのまま晩御飯に流用されても嬉しいし、昼ご飯でもいい。
つまり、旅館スタイルの朝食が食事の結論って事。
異論は認める。
「最近は随分と素直になって……」
キャベツの敷布団と掛布団で寛いでいた山芋マンドラゴラ君を呼び寄せると、自分で半身を分離させて俺に提出。
受け取るも立ち退かないでいると、まだ足りないと察してくれたらしく、同じことを繰り返し。
俺が満足するまで分離しては提出を繰り返し、俺が一歩下がると、ひょこひょことキャベツ布団に戻っていく。
ちょっと可哀そうになってきたな。
何かマンドラゴラ君が使いそうな野菜とか買って来てあげるか……。
使いそうな野菜ってなんだよ。
「異世界合わせ出汁の味噌汁に、マンドラゴラのとろろ汁、リボーンフィンチの厚焼き玉子に、現代の秋刀魚か……」
なんと言うか、秋刀魚だけ現代なの凄い浮くな。
いや、異世界にも秋刀魚っぽい魚が居る事は知ってるんだけれども。
違うな、秋刀魚っぽい部位がある魚、だな。
シロミザカナモドキって言うんですけれど。
(あの魔物の名前はな――)
言わんでいい言わんでいい。
これで会社とかでぽろっとその名前とか出したらどうしてくれる。
スルーされなかったらどう誤魔化すんだよ。
(わしの責任じゃないし)
……無責任な。
「はー、いいお湯だった」
「シャワーだろ」
「日本の水質は最高なのよん」
さいですか。
海外行ったこと無いから分からん。
……あー、でもなんか、海外のシャワーの後は髪がごわつく、みたいな話は聞いたことあるかも。
シャンプーとかが合わないのか? と思ったけど、水質が原因なのか?
「時に姉貴」
「なんだ弟」
「調理と単純作業、どっちがいい?」
「それら以外」
こやつめ。
「働かざるもの食うべからず、という言葉がある」
「悩むとかそういう次元ではなく、問題なく単純作業」
「じゃあ、はい」
姉貴に渡すは皮を剥いた大根一本。
あと、大根おろし器。
「……おろせと?」
「その後山芋もすって貰うからね」
「姉使いの荒い弟だ」
「おろし目荒かった? もうちょい細かいのにする?」
「違うそうじゃない」
すり下ろす作業が嫌なら調理を選んでおくべきだったな。
もっとも、姉貴に厚焼き玉子は作れないだろうけれど。
……みそ汁は流石に作れるよね?
「……そうだ、スキレットで厚焼き玉子作ってみようかな」
「無難に卵焼き器使えば?」
「分かってないなぁ。新しく手に入れた道具は使ってみたくなるじゃん」
「それはまぁ、同意」
という訳で、視界の隅で大根おろしを作っている姉貴を監視しつつ、味噌汁と厚焼き玉子を焼いていきましょう。
「疲れた」
まだ五往復しかしてないだろ。
早いよ、流石に。




