隠されたエフェクト
「え? なんで??」
最初は色のついた米……発光米の方に気が行っちゃってたけどさ。
エビもイカもアサリも、冷凍の海鮮ミックスを使用したはず。
そしてその海鮮ミックスは、メーカーや物にもよれど、生の方がクオリティが高い。
そりゃあ当然の話であって、結局生で食えるに越したことはないし、生のまま調理に使う方が美味しい場合がほとんどである。
――ただ、このコロッサル墨に触れた冷凍の海鮮たち……ほとんど生のそれらに近いクオリティに上がってる!?
エビはプリップリで弾力も感じられるし、何より噛んだ時のジュワッと広がる旨味が冷凍のそれじゃない。
イカもプリプリしてるけど、それより歯ごたえが冷凍ものとは思えんほどいい。
アサリなんて、さっきまで生きてたのを貝殻から外しました、みたいなクオリティしてる。
「もしかして、コロッサル墨には魚介の具材のクオリティを引き上げる効果があるのか?」
「どんな効果……」
「でも、そう言われると納得してしまいそうなほどの海鮮の美味しさですわよ?」
正直、パエリアは確かに美味い。
でも、異世界食材なのに、ただ美味いだけなのか?
と、ポテンシャルを疑ったことは認めるよ。
これまでに色々とバグってる食材を貰ってるしね。
もちろん、ゲーミング発光している時点でおおよそ現代には存在しえない食材なのだけれど……。
魚介のクオリティを上げるとなれば話が365°変わってくる。
極論、釣り上げた魚をこの墨に漬けておけば、釣り上げた瞬間以上のクオリティの魚介になる。
マグロなんて、熟成期間とか存在するし、その熟成期間にコロッサル墨を塗って熟成させたら、どこまで美味しくなるのか……。
文字通り、あらゆる料理に革命を起こす代物かもしれない。
「まだ使った魚介たちがあるんで、それを塩茹でして食べ比べてみます?」
「しよう」
「ちょっとした研究ですわね」
食事中だぞ? と思われるかもしれないが、正直もうそんな事に構ってられない。
だって、冷凍された魚介が生レベルのクオリティに上がるんだぞ?
冷凍の秋刀魚が生秋刀魚にランクアップするんだぞ?
事件だろ。
今年の秋刀魚はありがたいことに豊作で、お手頃価格で食べられるけども。
「という訳で塩茹でにしてきました」
「仕事が早い」
それについてはケトルでお湯が沸くのが早い。
ではではさっそく……。
「うむ、美味いな」
「だがパエリアのそれとはやはり落ちるな」
「……普通にこのレベルの魚介が出てきたら私は満足するけど?」
「というか、魚介だけを凍らせるってどンな技術だよ」
「魚にもよりますけど、調べたら-60℃で冷凍するみたいですよ?」
マグロとか。
というか、-60℃ってどうやって冷やすんだろ?
日本の技術力ってスゲー。
「その温度を維持するのは無理では?」
「中心までその温度になった事を確認して状態保存の魔法をかければ……」
「だったら最初から状態保存魔法でいい」
「誰もがエルフみたいに魔法を使えると思わないで欲しい」
「実際、漁師たちの中の課題なンだよ。釣った魚たちを鮮度を落とさずに運ぶ術ってのは」
あ、異世界でも同じような問題に直面してるんだ。
頑張れ……それを乗り越えたらワンチャン日本みたいに魚が生で……。
無理か。鮮度云々じゃなく呪い云々の話になっちゃうんだもんな。
「コロッサル墨、安定供給出来るならとても嬉しいけど……」
「そもそもコロッサル自体が戦闘で墨を吐くからのぅ……。ほとんどの場合、墨は残っとらん」
「だろうな」
「今回手に入れたのも、たまたま不意をついて墨を一切吐かせずに倒せたからじゃし」
「カケルから教わった『レンジでチン』は大体の魔物に通りが良くて助かりますわ」
リリウムさんがそんな事を言うもんだから途端に『無頼』アメノサさんに視線を向けられる。
もちろん、顔を背けて事なきを得た。
「おかわり!」
「黙々と食ってたね」
「だって美味しいんだもん」
会話に全く入って来なかった姉貴がおかわり要求。
いや、そりゃあよそうけども。
「そういや姉貴、本場のスペインでパエリアとか食べたりしなかったの?」
「食べたよ?」
「このパエリアと比べて、どう?」
俺はそういう体験無いからさ。
日本で食べられる料理の、本場のクオリティってどうなのか気になる。
「こんな色じゃないかな?」
「でしょうね」
違うのよ。
そう言う事を聞いてるわけじゃないの。
「冗談は置いといて、なんだろうなぁ……やっぱり、お米の違いってのが強いかな」
「そうなんだ」
「うん。向こうのお米は自己主張しない。魚介スープに全て身を委ねますよって感じ」
「こっちのお米は自己主張強い?」
「強いって言うか……なんだろうな。自分を主役と疑ってないところある」
「ほぅ」
まぁ、日本の米はマジで単体で美味いからなぁ。
「スープとか味付けも、向こうの方がもっとこうガツンと来る感じはある」
「スパイスって事?」
「スパイスもだけど、旨味とか。あ、でも、優しい味わいのパエリアもあったわよ?」
姉貴、旅行記とか書かない?
需要は最低でもここに一人分あるんだけど。
「あと、やっぱり焦げが弱いかな」
「向こうだと結構あるの?」
「全体の半分くらい焦げになってる感じ。これも店によるだろうけど」
「ふむ……」
なんて、姉貴のスペイン滞在飯記録を聞いていたら。
異世界組が、すっごい変な顔でこっち見てる。
……なんでせう?
「凄い会話してる……」
「姉上はその……『太陽が沈まない国』とやらに宝石を買いに行っていたのだろうか?」
……はーい、翻訳魔法さーん?
今すぐ職員室ー。




