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エルフの魔法の本気

「ん……?」


 会社の昼休憩中。

 天津サンドを食べていると、姉貴から連絡。

 なんだろうと思ってスマホを見てみると……。


『出来た!!』


 という文字と共に送られてきている動画が一つ。

 再生してみると……。


「そうはならんやろ」


 にわかに信じられない光景が。

 多分出来ないんだろうなぁと思って、それでもないよりはマシかなと置いておいたオムレツの作り方を説明するタブレット。

 それで見た作り方でオムレツを作る様子が映し出されていたのだが……。

 オムレツを返す時に、何故だかスキレットを縦じゃなくて横に振ったんよ。

 運動の法則とか色々とご存じない?

 でも、俺よりテストの点とか良かったはずなんだけどなぁ……。

 ――で、当然のように真横に射出されたオムレツは……。

 何故か画面の反対側から戻ってきてスキレットに着地。

 しかも、ちゃんとひっくり返った状態で戻って来ていた。

 ――エルフの魔法ってスゲー。

 ちなみに、恐らくはブーメランのような軌道を描いて戻って来たであろうオムレツがスキレットに着地した瞬間、姉貴が興奮のあまりはしゃいだらしく。

 強烈な画面揺れからの落下からの暗転で、音しか聞こえなくなった。

 多分、床に落としてますねコレは。


「料理が下手とか以前の問題だったけど、エルフの魔法に介助して貰えば姉貴も料理出来そうだな」


 見た感じちゃんと焦げてないし、姉貴にしては完璧と言えるレベルのオムレツなのではないでしょうか。

 ……ほぼほぼ魔法ありきだけども。

 ちなみにその後、ケチャップで宝石を描いたオムレツと、盛り付けたお皿の横にガーネットだかルビーだかを並べた写真も送られてきた。

 どれだけ嬉しかったかが分かる。

 ――あと、当然SNSに投稿してた。

 頼むから、そのスキレットと俺の家以外で料理とかしようと思わないでくれ……。

 真横に居た人にアツアツのオムレツでビンタした、みたいな報告を受ける羽目になるから……。



「ただいま戻りました、姉上」

「うむ」


 で、仕事を終えて買い物を済ませて帰宅。

 姉貴はご機嫌だなぁ。


「洗い物しといたよ」

「偽物だな。本物はどこだ!?」

「上から二段目の肌着を入れてる棚の右奥」

「本物でした」


 やめなよ。

 思春期特有の雑誌の隠し場所をばらすの。

 というか、なんで今も覚えてるんだよ。


「スキレットって洗剤で洗ってよかったの?」

「現実のスキレットでそれしたら絶縁だけど、異世界の木のスキレットなら洗っても問題無いと思う」

「絶縁なんだ」

「少なくとも、二度とまともに呼びはしなくなるかな」


 スキレットの育て具合にもよるかもだけど。

 十年とか育てたスキレットを洗剤で洗われたら、とりあえず絶縁するよね。

 幸いなことに、エルフ印のスキレットはそもそもなんでそんな効果が付いてるの? の連発だし、洗剤で洗った程度で魔法効果が落ちることもあるまい。

 ――大丈夫ですよね? 神様?


(無論)


 良かった。

 身内が一人減る所だったぜ。


(じゃが気を付けよ?)


 へ?


(すすぎと脱水、漂白までやると魔法の効果が薄れるぞ)


 洗濯かよ。

 やりませんよ、スキレットを脱水だの漂白だの。

 ――あー、食器洗浄機に入れるとワンチャンアカンか。

 なんで魔法と科学で喧嘩しちゃうかなー。


「そうそう。神様に供えるワイン買って来てるわよ」

(はよ)


 やだなぁ。

 お供え物に食い気味の神様。

 まぁ、お供えするんだけども。


「全部直感で買って来たから、気に入って貰えるかは分からないけど」

「……大丈夫だと思うよ」

(うむ。介入しておるからな)


 姉貴、直感で買ったと思っているそれらは、全て神様が示した結果なのよ。

 全部神様が飲みたいと思ったワインだから、心配しなくて大丈夫。


「後は本場のイタリアチーズも買って来たから、ワインと一緒にお供えして」

(うっひょ~~!!)


 あ、そこまでは介入してないんだ。

 ワインだけなんだ、介入したの。


「んじゃあ、お供えしますか」

「ん」


 と言う訳で姉貴が買って来たワインとチーズを並べ。

 二人で二礼二拍手一礼。

 神様、今後も我々を見守ってください、と。


(願い、聞き届けたり)


 あ、神様っぽい。

 ……ん? 待て? なんか、どっかで聞いたことあるぞ、そのフレーズ。


「姉貴、願い、聞き届けたりってなんかの台詞だっけ?」

「願いじゃなくて恨み、だったら『ヘル少女』のやつかな」

「あー……『ヘル少女』か」


 なんか聞き覚え合ったけど、やっぱり元ネタあったわ。

 神様もネタをアレンジする時代か。


(いっぺん……飲んでみる?)


 もう飲んでるでしょ。

 ちなみに感想は?


(明るい赤味の色調から想像される、爽やかで瑞々しい香り。その奥からスパイスの香りを感じられ、口に含むとほのかな酸味と滑らかな渋味が重厚な果実感と絶妙なバランスで味わえる。美味いのぅ、やはり)


 かつてここまで饒舌に喋る神様を聞いただろうか? いや、ない。


(わしが口にしたワインの中で、一、二を争うほどの味わい)


 なんかボージョレー・ヌーヴォーみたいな事言いだしたし。

 そう言えば、もうじき解禁なんだっけ?


「姉貴、神様がボージョレー・ヌーヴォーを飲みたいって」

「解禁されたら買いなよ。お金渡しとくから」

「あいあい」


 よし、言質取ったぞ。

 異世界組と絡む様になって、今まで興味が無かったものにも湧くようになった。

 今回はそれがボージョレーってわけ。


「ん、来る」

「ほーい」


 相変わらず姉貴の転移予言から数秒。

 紫の魔法陣が出現し。

 『夢幻泡影』と『無頼』アメノサ組が姿を現すのだった。

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― 新着の感想 ―
「全部直感で買って来たから、気に入って貰えるかは分からないけど」 「……大丈夫だと思うよ」 (うむ。介入しておるからな) 何も考えてないから神様も介入しやすそう
ヘル少女……ぶっちゃけパチしか知りません…
ひっくり返す位は普通に出来ると思ったら、そこにも一捻りあるの流石姉上…
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