すっごい便利
「やっぱり卵は固ぇ方が食いでがあンな」
「ふわふわ卵も捨てがたい」
「どっちも美味しいですわね」
「俺のイメージとしては固い方なんですけどねぇ……」
みんなが当たり前にお代わりする中、俺も小盛だけど固く焼いた方を味わうためにお代わり。
もちろん、現代人としての使命感からだ。
「タレとの絡みか食いでを取るか、人それぞれじゃろう」
「卵が希少とは言え、料理的にはそこまで難しいものでもない。……これも流行るだろうな」
「タレの味付けを変えればパンにも合いそうですし……海鮮オムレツとか言っておけば貴族は喜ぶのではなくて?」
……何だろう。
天津飯をオムレツと言われるの、なんかモヤる。
この気持ちは何だろう……。
「オムレツで思い出した。カケル」
「はい」
なんか急に話題振られたんだけど。
何を思い出したと?
「この間のフライパンのお礼を持って来た」
「……はぁ」
なんかちょっと嫌な予感がするぞ……。
「スキレットだ」
取り出されたのは、ラベンドラさんが使っていると言っていた木で出来たスキレット。
サイズ的に目玉焼き二個が作れるぐらいのサイズ感。
……普通だな?
「カケルに渡す物だからと、『――』の木を削って作ったんだ」
「……スキレットの為に?」
「これほどスキレットに適した材料もないんだぞ? 軽くて丈夫、耐火性に優れしならない」
「勿体ない気もする……」
アメノサさんの表情とかから察するに、本来はスキレットなんかに使う素材じゃないんだろうな。
こう、ジト目になっちゃってるし……。
「そしてもちろん魔法も付与してある」
あぁ……その日、人類は思い出した。
トンデモ加工を施された、どか弁の存在を。
ここまではただの木で出来たスキレット。
ただ、ここからが異世界なんです!
――そもそも木で出来たスキレットの時点で不思議か。
「油を引かずとも焦げ付かず、汚れも水不要でふき取るだけでサッと取れる」
便利すぎかよ。
ちょっと嬉しいんだけど……。
「しかも、魔法の補助のおかげで、軽く手首のスナップを利かせるだけで、確実にひっくり返す動作が成功するぞ」
……なんて?
なんか今、とんでもない魅力的な事おっしゃってなかった?
「それってどういう……」
いや、待て。
まだ笑うな。
ちゃんと効果を確認してから勝ちを宣言しろ。
「オムレツでも、パンケーキでも、目玉焼きでも、この動作だけでひとりでにひっくり返る」
と、行われた動作は手首だけで『返す』もの。
本当に? 本当にそれだけでひっくり返せるの?
「なお、スキレットはどれだけの物を焼いていても重さが変わらず、上に料理が乗っている間は火から降ろしても温度が保たれるようにした」
あ、買います。
買わせていただきます。
普通に欲しい、それ、現代の技術ではどうあがいても再現不能なスキレットなんで。
「日頃の感謝の気持ちも込めた」
「ありがたく使わせていただきます」
早速明日の朝はこのスキレットを使ってベーコンエッグでも焼いて食べよう。
もちろん目玉焼きはひっくり返す機能を確認するために両面焼き。
いわゆるターンオーバーで。
ちなみに受け取った感じ、このスキレット、重さが卓球のラケットくらいかな?
ぜんっぜん軽い。
「ちなみに武器としては――」
「あ、それは使う事無いと思うので大丈夫です」
「……そうか」
嫌だよ、これで、
「銃弾やナイフは容易く弾く」
とか言われたら。
もし強盗に襲われたとして、このスキレットで撃退したとして。
ニュース記事に、『強盗をスキレットで撃退!! ナイフで傷一つ付かない木製スキレット!!』とか見出し付けられちゃうじゃん。
こぞってみんなのネタになるし、学者が材質を調べようとするじゃんね。
(ま、強盗が入りそうになったらわしがガチ警告するがの)
それはありがたいんですけれど、警告受けても対応出来るかどうかは……。
実際の所、これから強盗が来ますよーと伝わったところで、出来ることなんて急いで逃げる位じゃない?
結局強盗の被害には合いそう。
最悪の事態は避けられるかもだけど。
(? いや、警告の対象は強盗じゃぞ?)
……ん?
流れ変わったな?
(カケルの家に強盗に入ろうと思った時点で、まずトラウマを思い出させる。そこから実行しようと考えている間、過去の楽しい思い出や両親との記憶をフラッシュバックじゃな)
……それって走馬灯なのでは?
実行者が、俺って死ぬの? と思うやつでは?
(後は最終手段で、パトカーのサイレン音の幻聴を聞かせる)
それが一番効果がありそう。
というか、神様って結構この世界に干渉出来るんですね。
(これに関しては八百万の神々たちからやって良しと言われたでのぅ)
……まぁ、八百万の神様達からしても、罪を犯すことを止めるなら大目に見るよって感じなのかな?
――神様が一個人を守るためにやってることは置いておいて。
「ふぅ、美味かった」
「ごっそさン」
そんな脳内会話を繰り広げていたら、気付けばみんな食べ終えていて。
「ゆっくりでいいぞ」
俺が食べるのをみんなが待つことに。
普段あまり食べない俺が、お代わりしたもんだから、食べるのに時間が掛かってると思われちゃってるみたい。
食事中に神様と会話してた俺が悪いわ。
ごめんね、待たせちゃって。




