神様「お忍びで日本を堪能するかのぅ……」
(うぉっほん)
異世界組が魔法陣を潜り、異世界に戻ったのを確認し。
神様が、わざとらしく咳払い。
はいはい、知育菓子でしょ?
今すぐには用意出来ないんで、ちょっと買い出しに行ってきますわよ。
(ではついでにチーズなどがあると嬉しいぞい)
はいはい、チーズですね。
――スモークチーズでいいです?
(うむ)
という事で買い出しへゴー!
ちなみに神様たちに送る知育菓子は『掬って〇魚』。
そもそも縁日で金魚すくいとかした事無いだろうけど、その体験が無くてもあの知育菓子は面白いはず。
――ついでに何か値下げされてないか見て来よう。
ワインとか値下げされてると嬉しいんだけどなぁ……。
*
(不思議じゃのぅ! なんで膜を張っただけなのに掬えるようになるんじゃ?)
なんやかんやですからね。
(そうか、なんやかんやか)
いいのか、そんな雑な説明で。
まぁ、楽しんでるっぽいしいいか。
「……ん?」
今気づいたけどスマホに通知来てるな、なんだろう……。
「またそんな急に……」
通知の送り先は姉貴。
パライバトルマリンを一目見たいから戻って来るとの事。
――もう俺の手元に無いけど?
ラベンドラさん達、姉貴が帰ってくるまでパライバトルマリンを手元に置いておくかな……。
ま、いっか。
後は、自分もゴー君に合成して貰いたい宝石があるって事で……。
合成が終わるまで家に居るんかな?
えぇっと、帰って来るならお土産を大量に買って来い、と。
ワインと、スイーツを所望する、と。
俺が、じゃなくて、エルフ達が、と。
これでよし。
「んじゃ、明日は何作るかボーっと考えながら寝ますかね」
それじゃあ、おやすみ!
*
「凄い賑わいだな……」
「正しく戦場ですわよ」
とうとう開催された、ミカラデ国の料理大会。
その熱気は、主催者側も、エントリーした料理人側も、予想を大きく上回るもので。
「ちょ、商人! 言い値で買うからサバラン草はねぇか!!?」
「どっさりある! どれだけいる?」
「全部!」
「毎度あり」
出店用に用意していた材料が早々に底を尽き、商人からその場で現地調達をする様子がしばしば見られ。
「大会期間中は関税撤廃。ガンガン輸入して」
「優先してミカラデ国の方へ手配しますよ。陸路、海路、瞬間移動、全てを使って」
そのような事態に対応すべく、アメノサはソクサルムと臨時で特別貿易体制を締結。
『夢幻泡影』を利用した、一瞬の内に膨大な食材を輸出し、それらを現地で商人に売却。
その商人が今度は大会の現場で売り捌くという、バケツリレー方式で大会会場に食材を行き渡らせていく。
「大会期間を三日に区切ったのも正解っすね。初日にこの勢いじゃあ、一週間とか続けてたら料理人側の体力が持たねぇっすよ」
「経済効果も正直見当が付かない。一般人はおろか貴族すら少数の護衛で出店を回って楽しんでいると聞く」
広報担当のアエロス、大会本部責任者の元大臣も、大会の熱気には思わず目を見開いた。
元大臣はともかく、過去に何度もニルラス国で料理大会に携わったアエロスが驚いている事が、この大会の熱気の凄さを何よりも物語る。
「軽食、メイン、スイーツ、飲み物、酒、食器、本当に様々な物が売られているな」
「食器をここで売る発想は無かったっすけど、確かにあると便利っすよねぇ」
そんな熱気の中、特に浮いて見える屋台には、
「刺して掬って食べられる。これ一個で二つの役割がこなせるよ~!!」
料理大会で出店しているほとんどの店の商品を食べられると謳い、ズラッと並べられた食器が一点。
現代で、先割れスプーン、あるいはフォークスプーン、スポークと呼ばれるその食器は、これまで食に関心が薄かったミカラデ国の住人にとっては画期的な代物であり。
家族用にとまとめ買いがされていき、文字通り飛ぶように売れていた。
「へぇ、珍し」
そんなスポーク販売所の前に、見回りに来た『無頼』が登場。
翔の家でも見かけないその食器に興味を持ち、
「三本くれ」
「毎度!!」
身内分も合わせて購入。
後に『無頼』は翔にそれを見せるも、
「これですよね?」
と、あっさりプラスチック製のそれを見せられるのだが。
それはまた別の話。
「ひき肉を炒めてじゃがいもと小麦粉を捏ねた生地に包んで揚げたじゃが団子とか言うのが美味かったぞ」
「贅沢にチョコレートをかけたポテトチップスも最高でしたわよ?」
「コロッサルの身を焼きながらプレスしたコロッサルシートというのが酒のツマミにピッタリじゃったぞ?」
「各種マンドラゴラのチップスが美味かった。天日干しにして丁寧に水分が抜かれたマンドラゴラたちは、旨味が凝縮していてワインに合う」
そんな中、瞬間移動による貿易の手伝いを終えた『夢幻泡影』も大会に参加。
各々で気になる商品を食べ歩き、たまに集まって意見交換。
ニルラス国の料理大会では、決勝の審査員としての立場が固まってしまい、こうして屋台を巡る機会も失われつつある。
そういう意味では、このミカラデ国の料理大会は、『夢幻泡影』にとって有意義な時間になった事だろう。
――ちなみに、『夢幻泡影』が使っている食器は『箸』である。
八百万「ダメです」




