余計な事を……
……個人的には、だよ?
折角この人数で食べるんだし、かぼちゃをくり抜いてそのまま容器にしたかぼちゃプリンを買って来たかったのよ。
小さい時からの夢でもあったし。
ただ、当たり前に予約が必須でさ。
当日買いに行っても、そりゃあ無かったよね。
次からはしっかり予約してやる……。
「前にかぼちゃを食べたのは天ぷらの時だったか?」
「でしたかねぇ……」
かぼちゃのスープを作ったような覚えが無くはない。
でもまぁ、この人達が言わないって事はそうなんじゃない? 知らんけど。
「あの時のかぼちゃはホクホクとしていて甘く、非常に美味だったな」
「それがスイーツになるのでしょう? 期待が高まりますわね」
という事で全員にかぼちゃプリンとスプーンを配膳。
ちなみにかぼちゃプリンには生クリームが乗せられているし、何ならかぼちゃの種もトッピングされてる。
こういう所でしか食べないけど、かぼちゃの種って意外と美味しいよね。
「これは何が乗っているんだ?」
「かぼちゃの種ですね」
異世界だと野菜や果物は全部マンドラゴラっぽいし、種とかの概念あるのかな?
流石にあるか。マンドラゴラがまさか動物とかってわけでもないだろうし。
「種が食べられるんですの!?」
「うお!? びっくりした……」
急に大きい声出さないでほしい。
別に種だって食べられても不思議じゃなくない?
「カケルは高度な解呪能力を持ってる。種を食べられるようにしていても不思議じゃない」
「……その言い方って事は……」
「いや、種に呪いは無い」
「じゃあ、何で?」
「呪いは無いが、魔素が濃いんだ」
……また馴染みが無い言葉が出て来たな。
教えて神様、魔素ってなーに?
(魔物の力の源、という所じゃな。基本的に魔物以外には有毒で、濃い魔素に当てられると魔物化する場合もある)
こわ。
そんなゾンビウイルスみたいなもんなのか……。
(成人男性でマンドラゴラの種三粒。もちろん個体差にもよるが、それが魔物化する目安じゃな)
ちなみに魔素は体に悪いんですよね?
(もちろん悪い。魔素を取り込み過ぎると呼吸困難や筋肉弛緩、意識混濁や昏倒と言った症状が出るの)
……どれもこれもこっちで言う一番最悪な症状例みたいなのばっかりなんですけど?
というか、そう言った症状が出ると普通に亡くなりません?
(そうじゃぞ? そこで力尽きると魔物化して復活してしまう)
恐ろし過ぎない?
……ちなみに一応なんですけど、炒り塩水で魔素を取り除けたりって……?
(可能じゃぞ)
マジか。
炒り塩水って何気に現代アイテムで一番のチートなのでは?
(まさかこっちの世界にこんなに神が存在するとは思わんでのぅ……)
神様も八百万の神々には驚くのか。
にしても、やっぱり八百万パワーって凄いんだな。
「魔素ってやつも、炒り塩水で浄化出来るみたいですよ?」
「…………」
何言ってんだコイツ、みたいな視線が突き刺さる……。
だって、神様がそう言ったんだもん……。
「カケル、私達だから聞き流しますけれど、そんな事は二度と口にしてはダメですわよ?」
「……理由を聞いても?」
「解呪だけでも十分化け物。その上で魔素の浄化まで可能とか、教会のトップが乗り込んできて連れ去り、神の生まれ変わりだと崇め奉るレベル」
「いやまぁ、時間さえかけりゃあ出来なくはねぇンじゃねぇか? 年単位で時間掛かるだろうけどよ」
「一食……いや、スイーツのトッピングの為にそれほどまでの時間と相応の支払いをするかと言われると……」
あ、はい。
二度と口にしません。
でも、という事は異世界にヒマワリの種とか無いのか。
(無いのぅ)
なんて事だ、それだとハム〇郎が生きていけないじゃないか!!
(あいつら野菜とかも食うじゃろ。それに、専用のペレットも今は販売されておるわ)
……なんで神様から当たり前のようにツッコまれているのか。
コレガワカラナイ。
そう言えば、ハム〇郎の曲にノリノリで合いの手入れてたな。
「少々怖いのですけれど、確かに鑑定しても魔素は無いと出てきますわね」
「カケルが変な物を出すはずもない。何も心配はいらん」
「じゃが、『――』に似た貝は出されたぞ?」
「私達は食べてないからな」
ガブロさんが言ってるのは恐らく牡蠣の事だね。
俺は牡蠣の見た目のバナナを食べた。
そのお返しに、異世界で言うバナナの見た目の牡蠣を食べて貰った。
うん、お相子だね。
しっかりトラウマになってるようで何より。
「それじゃあ、いただくか」
「うむ」
「「いただきます!!」」
*
「はぁ……パライバトルマリン……」
弟の翔から送られてきた画像を見つめ、早苗は何度目か分からないため息を吐く。
おおよそ現実では見ることが出来ない大きさの、パライバトルマリンの原石。
それを、こんな画像ではなく肉眼で見たい。
それは、宝石商として抱く、ごく当たり前の感情だろう。
「日本に帰る?」
正直、今すぐにでもすっ飛んで帰りたい。
だが、翔は言った。
この原石はリリウムさん達のものだ、と。
という事は、きっと彼女らがやってきた時に返してしまうのだろう。
今から飛行機に乗ったとして、日本に着くのは確実に翌日以降。
どうあったって間に合わないだろう。
「異世界での扱いがどうかは分からないけど、そう現代の基準と違いは無い。だったら、あの四人でも異世界で捌くのは苦労するはずだから、しばらくは手元に置いとくはず」
何度かリリウム達と宝石を交換して分かった事。
それは、異世界の宝石事情も現代とさほど変わらない事。
こちらで希少な物はあちらでも希少。
であるならば、あのパライバトルマリンの原石も向こうでは相当な値打ちのはず。
つまり、自分が日本に帰国しても、まだ四人の手元にある可能性は高い。
そう言い聞かせ、早苗は日本行のチケットを予約する。
――同じ頃、翔が『夢幻泡影』に、原石と引き換えに色々融通を利かせて貰っちゃえば? という提案をしたことなど、露知らず。




