神様「うむうむ。はよ発展せい」
「はぁ~。……美味しいですわぁ」
「柑橘やそれに類するフレッシュな甘く、酸っぱい香り」
「味自体は辛口で非常にボリューミー。ややアルコールが強いか?」
「いや、そこまではない。ワイン自体の肉厚な味わいによるものだろう」
……信じられるか? これ、千円でおつりがくるワインの評価なんだぜ?
「アクアパッツァとも相性が良いな。ギュッと詰まった貝類の旨味とニンニクや胡椒のスパイス感が、ワインの酸味や甘みとよく馴染む」
「しっかりうま味を吸ったトマトやアスパラが美味い。それに、ワインに非常に合うぞ」
「こんなワインがあるなら、私ももっとワイン飲めるのに……」
アメノサさん、ぼそっと言うとりますけども。
あなた、俺と同じでお酒に弱いでしょ?
ワイン飲んで倒れても知らないよ?
「このしぐれ煮っての、うめぇな」
「日本酒の伸びのある旨味とふくよかな香りが、どこまで行っても相性が良いわい」
「はぁ……」
なんと言う事でしょう。
お茶漬けだって言ってるのに、エルフ組やアメノサさんはアクアパッツァとワインでしっぽり。
飲兵衛組はしぐれ煮と日本酒でしっぽり飲んでいるではありませんか。
えぇい、まともなにお茶漬けを食べるのは僕だけか!?
――という訳でいただきます。
ずずー。
「はぁ……美味い」
そりゃ美味いよ。
出汁の香りがふわっとしたら、しぐれ煮のパンチの効いた旨味がズドン。
その旨味を支える出汁の旨味も相まって、それらに浸った米が美味い美味い。
ちなみに、今回の出汁茶漬けは現代の昆布と鰹節からの黄金出汁にしてあります。
現代のなんて注釈が必要なあたりあれなんだけど、異世界産のイセカイカワブタ節とかはあまりにも旨味が強くてね。
少なくとも、あっさりした食べ物、にはなりようがないんよ。
美味いもん。過剰に。
という事で、胃袋を休ませるためにも今日は現代黄金出汁でござい。
「胡麻をちょっと入れたい」
一口食べて味を調整。
ゴマの香ばしさが欲しい。
「あー……これこれ」
味変をして思い通りになった時って達成感あるよね。
今がまさにそれ。
「甘辛いアサリとあっさりした出汁の組み合わせ、いい」
「でしょ?」
ようやくアメノサさんがお茶漬けに手を付けた二人目になりました。
で、感想がこれ。
昔テレビであったさ、いわゆる太目タレントが食べ歩きするみたいな番組。
その中で、お茶漬け回なるものがあって、何がお茶漬けに合うか、みたいなのを延々試していく回なんだけど……。
そこでホタテの貝柱を甘辛く煮詰めた奴がかなり高評価だったのを思い出すわ。
あれ? 干物だったかな。
とりあえず、お茶漬けにも甘辛いものが合うっていう、新たな知見を得た瞬間だったね。
「ワインご馳走様でしたわ」
「……まさかですけど、もう飲んだんですか?」
「そりゃあ、美味かったからな」
「えぇ……」
で、アクアパッツァとワインを堪能したエルフ組が合流。
うわ、マジでボトルが一本開いてるでやんの。
「なぁ、カケル」
「何でしょう?」
「今日のワインはその……そこまで値が張らない物なのか?」
「まぁ、かなりお手頃なワインではありますね。……どうして?」
「コルクじゃなかったからな」
「ああ……」
確かに、今日買って来たワインはコルクじゃなくスクリューキャップだったね。
高いワインはスクリューキャップだったりは流石にしないか。
「あの味わいのワインでも手頃なのだろう? やはりこちらのワインの完成度は凄いぞ?」
「過去に飲んだワインと比較するとどうしても見劣りしてしまう部分はあるんですけれど、それでも十分美味しいですしね」
「むしろ逆に、これまで値が張るワインを用意させていたのでは? という申し訳なさがな……」
いやまぁ、ワイン選びとか結構苦労しましたしね?
でも、それ言うならそのおかげで普段飲まないワインを俺もありつけたし……。
値段相応に美味しいって思えたから、別にそれはいいんだけれども。
――ワイン代とかは基本姉貴基金から出てるわけだし。
「美味しく飲んで頂けているのであれば構いませんよ」
「カケルの懐がデカい……」
何度も言うが、結局のところ、金を出しているのは姉貴なわけで。
その姉貴は、異世界組からの宝石や香木で金を生み出しているわけで。
結局、巡り巡って自分たちが飲むワインを用意しているような状況だし。
「よっぽど高いワインじゃなければ問題ないです」
オーパス・イチとかね。
あれは美味しかったんだけどね。
少なくとも、アレ一本に六桁のお金をポンとは出せない。
最近また円安の影響で値上がりしてるっぽいし……。
「ん? ……待て」
「どうしましたの?」
「このワイン……無属性だな?」
「そうですわよ?」
速報、チリワイン。無属性だった。
「この世界のワインはほとんどが無属性じゃありませんの。今更驚く事でもありませんわ」
逆に属性があるワインがあるのか。
ちょっと飲んでみたいな、それ。
「……知育ポーションで属性同士を打ち消す術を手に入れたんだぞ?」
「あ」
お? 流れ変わったな?
「戻ったら、無属性ワインの試作ですわね?」
「やらいでか」
そう言って、ようやくお茶漬けに手を付けるエルフ達。
「うめーですわー!!」
そりゃそうでしょうよ。




