デウスエクスラベンドラ
「私は……寝る!!」
「お、お疲れ様ですわ……」
異世界に戻り、ごく当たり前に就寝。
そして、起床したら、目がギンギンに開いているラベンドラが待機しており。
「ひっ!?」
その狂気とも言える表情に若干の恐怖を覚えるものの、何やら手に持っている事を確認。
ズイっと無言で差し出されたソレを受け取ると……。
「まさか……知育菓子ですの?」
受け取った物には番号と、「水と混ぜる」や、「加熱する」と言った説明が書かれている粉たちが。
それを見て、寝る事無く研究に没頭していたと悟ったリリウムは、冒頭のこれから睡眠をとると高らかに宣言したラベンドラに、ねぎらいの言葉をかけ。
胡坐をかき、頬杖をついて目を閉じたラベンドラを確認し、
「渡したという事は、試せ、という事ですわよね?」
と、誰にも聞かれない独り言をポツリ。
そして、
「まずは、水と一番を混ぜる」
一人、ラベンドラの開発した異世界知育菓子の作成に取り掛かる。
「この粉末は薬草の乾燥粉末ですわね。……そのままだと苦いんですのよね……」
飲料水を空中に浮遊させ、それに粉をぶち込み。
風魔法で渦を作り、撹拌。
「次は……? ――専用の棒でかき混ぜる?」
現実の知育菓子では見られないような、専用の棒という、明らかにどこかの植物の枝での撹拌に切り替え……。
「色が変わりましたわね。これが属性の中和と言うものなのでしょう」
薬草を入れて混ぜただけでは緑色だった水が、棒でかき混ぜるだけで赤色に変化。
「少し味見を……」
と、水を少しだけ切り取って口に含むと……。
「苦みよりも渋味が出て来てますわね。味わいで言うなら、アルコールの入ってないワインみたいなものでしょうか?」
既に、苦いだけの薬草粉末と味が変わったことに驚愕。
……そして、
「果汁を垂らす……これで完成ですの?」
ハンドボールサイズの果物の輪切り。
本来のソレは、果汁を揮発させることで虫系の魔物を遠ざける効果のある代物だが……。
「わ、凄いですわ!」
空中に浮かんだ水溶液に果汁を垂らせば、その果汁に触れた水溶液がゲル化。
そのまま、重さの影響を受けて水溶液の底へとドンドンと沈んでいき……。
「おっとっと」
宙に浮いた水溶液から、地面に向かって落ちていく。
それを、当然落とす前に魔法でキャッチして。
「色の変化、味の変化、そして、形態の変化とでも言いましょうかね?」
翔の所で作った、知育菓子で体験した不思議経験。
それを、異世界ライズした商品を確かに体験したリリウム。
「でも、味が変であれば全部台無しですわよ?」
と、雫型のゲル化した水溶液を口に放り込む。
すると、
「結構柔らかめのグミ……いえ、どちらかというとゼリーみたいですわね。味は甘さが強く、やや酸味。べた付かず、苦みも少しは感じますわ」
意外にも、味わえる程度には味が整っており。
少なくとも、吐き出すような味ではない様子。
ちなみに、この異世界ライズされた知育菓子? を翔が食べた場合、
「十秒チャージ飯って謳ってるゼリー飲料のグレープフルーツ味に似てますね」
というのだが。
残念ながら、翔の口に入る事は恐らく無いであろう。
「何をしている?」
「おはようございますわ。ラベンドラが知育菓子を完成させたようなので試験をしていましたの」
「ふぅむ。……美味かったか?」
「変な味はしませんでしたわよ?」
「そうか。ちなみに効果は?」
「基本的には回復ポーションの効果。あとは……空腹感の軽減ですわね」
「空腹になると集中力が切れる。体力回復より、そっちの方がありがたい」
などと会話をしつつ、ガブロの分を作ったリリウムが、雫ゼリーを渡し。
「ふむ。甘すぎず、歯に当てるだけで崩れる固さ。喉に詰まるような事も無いじゃろうし、固形ではあるから肺にも流れにくいじゃろう」
「確かに。動けなくなった対象にも与えられることを考えると、結構有用かもしれませんわね」
「空腹感も紛れるなら、動く活力も沸く。正直、冒険者もじゃが、復興中の村や町などに配りたい代物になりそうじゃのう」
二人して、ラベンドラの試作した知育菓子? の評価を言い合う。
「アメノサ達が欲しがるじゃろ、これ」
「ソクサルムも絶対に欲しがりますわね」
そもそも、材料さえあれば水と混ぜ、専用の棒で混ぜて果汁を加えるだけで出来る非常食兼ポーションなど、欲しがらない国は存在しないのだが。
まだまだ寝起きで、そこまで頭が回ってない状態なので、この評価なのも致し方なし。
……なお、この知育菓子? を報告されたソクサルムの反応は推して知るべしである。
一応、
「独占とかされたらポーション屋や調合ギルドが店を畳むしかなくなるので早急にレシピを寄越せ」
と、懇切丁寧な文章が送られてきた、とだけは伝えておく。
なお、この報告を受けた瞬間に、王城が震えるほどの慟哭が響いたとか響かなかったとか。
それはニルラス国の王城なのか、ミカラデ国の王城なのか、はたまた両方なのかは……互いの国の名誉の為にも、ここでは記載しないでおこうと思う。




