量才録用
「別に信用してないわけじゃあないんだけどさぁ」
異世界組を見送り、後片付けをして、風呂入って、就寝――とはいかないんだなぁこれが。
俺には、渡された食材の味見をする必要がある……。
――大体異世界組のせいだけど、こんな体になったの。
ラベンドラさん達が異世界の牡蠣バナナを何も言わずに食べさせたからです。あーあ。
「まぁ、貝類ってお墨付きは貰ったし、俺がアサリって言ってたのに訂正してこなかったって事は、翻訳も間違ってないって事だろうし……」
ちなみになんでわざわざ声に出しているのかというと、少しでも自分を落ち着けるためである。
落ち着けるというか、言い聞かすというか。
マジでこんな体になったの、一生恨むからな異世界組。
「大きいのと小さいの両方試そう」
渡されるときに小さい方が味がいいって言われてたけど、どれくらい違うのかとかも確認しときたいし。
味見はもちろん塩茹でで。
醤油とかもいらないかな。
シンプルにいただこう。
「うーむ、アサリ……」
噛んだ食感も、溢れるスープも、磯の風味も、完全にアサリのソレ。
ちょっと後味に清涼感と甘さがあること以外は、概ね現代のアサリと呼んでも差し支えないのではないでしょうか?
こういうのはバター焼きにすると美味いんよな。
「続いて大きいの。――んー! 美味い!!」
で、大きいのだけど、まず何と言っても食べ応えが凄い。
口一杯に頬張るアサリからしか得られない栄養素が間違いなくある。
風味と旨味が若干薄いような気もするけど、正直ほとんど誤差レベル。
それよりも、身の大きさという無視できない要因から、俺はむしろこっちの方が好きまであるなぁ。
煮付けとか、フライにしたい、この大きさ。
「割とマジでフライとか、その辺が合いそう」
食べた感想だけど、素直に美味しくてサイズの大きいアサリ。
酒蒸しとかでプリッとした身にかぶりつくのもいいかもしれない。
……小さいのどうするかな。
「玉ねぎとかき揚げにしてみるか?」
想像したけど絶対に美味いな。
まぁ、天ぷらなんで、揚げるのはラベンドラさんなんですけどね、初見さん。
かき揚げで一個と考えると、酒蒸しとバター焼きとかの居酒屋三銃士で一食分かなぁ。
となると酒がいるか。
日本酒、ビールもいるだろうな。
……アサリの炊き込みご飯なんかも合わせちゃって。
よし、そうしよう。
「んじゃ、やる事やって寝ますかね」
味見もして、憂いは断った。
という訳で……おやすみなさい!
*
「アエロス、生きてますの?」
「初手生存確認から入るのは流石に酷すぎねぇっすか?」
異世界。
膨大な数の問い合わせも、気が付けば治まっていて。
それが、元副大臣が来てから急速に収束したものだから、アエロスたちは不思議に思ったが。
「問い合わせの内容は、ルールの抜け穴を探るための物です。ですので、あらかじめカッチリとしたルールを決めて提示しておけば、おのずと減るわけです」
そう言った副大臣だったが、当然そんな事はアエロスも行っていたわけで。
じゃあ元副大臣が何をしたかと言えば、副大臣時代のコネを使って、代表に声を掛けただけなのである。
何の代表かと言えば、この料理大会において、新しく出来るであろう利権にあやかろうとし、同時に、同じ考えの他陣営を出し抜こうとする連中。
そんな陣営の代表一人一人に、この条件から一切変わらない、と念を押して伝えただけ。
無論、いくつかの陣営はそれでも食い下がったが、
「じゃあ、あなた方に不利になる条件をつけましょう」
とニッコリ笑えば、今の条件のままでいい、と、非常に聞き分け良くなってくれた。
なお、副大臣の中で、
(ゴネれば多少の無茶が通ると思われているという事は、つまりは私が舐められているという事ですね)
と、明確な敵意を持たせたことを、その陣営はまだ気が付いていない。
そんなわけで、一応問い合わせ自体は減ったのだが……。
「何か苦労していますの?」
「場所の確保は大丈夫っす。本部代表が動いてくれたんで」
「場所に関しては、出し合いでしたからねぇ。ぜひうちの前を使ってくれ! とか」
「まぁ、移動少なく飯にありつけるならそうもなるか」
「それ以外は?」
「こういうのもなんっすけど……」
「食材が足りそうになくて……」
なお、一番大事であるはずの食材の確保が怪しいという、割と不味いのでは? 状態で。
これに関しては、食に対する関心が低かったこともあり、すぐにはどうしようもない、との事。
「この国の財務担当はどちらに?」
「今だと、王城の執務室かと……」
「ちょっと話をつけてきますわね」
そんな状況を打破するために必要なのはもちろん金であり、であれば、国の財布の紐を握っている財務大臣を動かすしかない。
という事で、
「とりあえず、今用意出来るだけの金を出しなさいな」
「……いきなり来て、何言ってるの?」
リリウムは、転移魔法で執務室へと突入。
ノックはなく、挨拶もない。
礼儀も何もないその登場だが、財務担当者は突然現れたリリウムに驚きもせず、大きなため息を一つ。
「食材の件なら、今八方に手を伸ばしてかき集めてる」
「そこらの食材はそうでしょうけど、どうせなら名物になるような美味しい料理が出来た方がいいでしょう?」
「? それはそうだけど……」
「だったら、素材となる食材が美味しい方が美味しい料理になりやすいのですわ。と言う訳でアメノサ、私達に可能な限り投資なさい? 少なくとも、期待に添えるだけの食材を取ってきますわよ?」
リリウムにそう言われ、アメノサ左大臣は……。
「え、無理」
一言で断ったのだった。
タイトルを適材適所にしたかったけど既に使ってたので類語のこれになりました(小声)




