ニッコリ
「これはどうやって食べる物なのだ?」
「これはですねぇ……」
綺麗に並べ、盛り付けられた鶏飯の具材たち。
それを指差し、質問するラベンドラさんに、俺はニッコリ笑顔を返し。
えーっと、錦糸卵、インゲン、しいたけ、蒸したリボーンフィンチとご飯に乗せて、スープをかける。
仕上げに紅しょうがをちょいと乗せて、
「こうやって、あとは掻っ込むだけです」
「ふむふむ」
と言う訳で、鶏飯、いただきます!
「リボーンフィンチの旨味がギュッと凝縮されたスープが、ご飯にも具材にも最っ高に合う……」
旨味と、ほんのり甘味脂身の味。
それが、インゲンの歯ごたえやしいたけの旨味、卵の味とかと相性最高で、最高の鶏茶漬けって感じ。
紅ショウガとアクセントもいいね。凄く合う。
「美味いな」
「掻っ込めるところがいい。サラサラと口に入っていく」
「酒飲み過ぎた翌日とかに最高だろうな、こういう飯は」
「いいかも。……リボーンフィンチでの再現は無理でも、王宮の料理人に伝えておくのは有り」
「会合だのなんだので酒飲まされてるからなぁ……あいつ」
こういう会話は気になる所ではあるんだけど、僕知ってる。
首を突っ込むとろくなことにならない奴だ。
君子危うきに近寄らず、って言葉があるし、藪蛇は勘弁なので特に聞きはしませんわよ?
「これだけでも十分に満足出来る飯ではあるのに……」
「唐揚げがあるの多分バグですわね」
違うが?
というか、バグってそのまま言葉通り虫食いの事だからな?
プログラムに虫食いのごとく穴があって、そのせいで起きる色んな挙動の総称だからな?
翻訳魔法さん、正しく覚えて?
「軟骨の唐揚げはやはり美味いのぅ」
「もも肉にたっぷりとタルタルをつけて食べる背徳感は何物にも勝る」
「それをビールで流し込めれば最高なンだがなぁ」
買って来てないよ。
というか、ビールもワインも日本酒も、ごみ捨て面倒なんだからな?
異世界組は知らんのだ。
みんなが飲んだ缶ビールを、ちゃんと洗って潰してプルタブ外して……って俺がやってるのを。
その内やらせるからな。
「この旨味がギュッと詰まった煮付けも最高ですわね!」
「煮付けの味が残っている口内に、鶏飯を掻っ込んで噛み締める幸せよ」
ちなみに煮付けも好評。
やはりね、ばあちゃんのレシピは美味いのである。
「この野菜とリボーンフィンチの甘辛ソースも美味しい」
「棒棒鶏って名前の料理ですね」
トマトやキュウリの瑞々しさが、鶏肉のさっぱりとした部分にマッチしてなぁ。
そんで、ピリ辛のソースがサッパリ感の敵である物足りなさをカバーする。
最強の布陣だと思うね、俺は。
「サッパリな料理と、ジューシィな唐揚げと、しっかりとした煮付け。全て美味い」
「この鶏茶漬けを忘れるな。何なら、この料理は他の料理のいいとこどりだぞ?」
そこまでかなぁ?
いやまぁ、美味しくはあるよ? 鶏飯。
でも、全部のいいとこどりかと言われると……。
流石に言い過ぎなのでは? と言わざるを得ない。
「乗せる具材は決まっているのか?」
「俺が知ってる料理は決まってますけど、アレンジはどれだけやってもいいんじゃないですかね?」
「そうか!」
そもそも、俺が今日作ったのもアレンジ入ってるし。
別にアレンジされたからと言って、憤慨するような人種じゃないよ、日本人は。
常にアレンジする側だったから、アレンジされる事にも寛容なのだ。
……食べ物を粗末にさえしなければ、ね。
「どんなアレンジを考えてる?」
「サラサラと食べられるのも魅力だが、これ一杯で冒険の食事を賄えるポテンシャルにしたい」
「肉だな。肉を追加しよう」
「もっと濃い味付けの物を乗せた方がいいんじゃないか?」
「野菜のバランスも増やしたいところですわね」
まぁ……うん。
そういうアレンジの方向性なら、目くじら立てることもあるまい。
「カケル」
「何でしょう?」
「この煮付けに関しては詳しいレシピをくれ」
「いいですけど……そっち基準だと材料を揃えられるか分かりませんよ?」
「構わん。……この味は私がどう研究しても出せそうにない」
鳥モツの煮込み……まさかのエルフに勝利する、の巻。
いやまぁ、俺も食べただけで再現しろ、なんて言われても無理だけどさ。
でもまぁ、言われて悪い気はしませんわね。
「こいつにはビールもだがSAKEだな」
「じゃな。濃い味付けにピリッと来る刺激、それらがたまらなくSAKEに合うじゃろうなぁ」
「好みで七味や一味かけても美味いですよ」
「じゃろうな」
リボーンフィンチのもつ煮込み、ピリッと来るって言われてた刺激の正体はまぁ、たっぷり使った生姜だろうさ。
この生姜が、味の再現を難しくする原因さ。
入れすぎると主張が強くなり過ぎて、少ないと物足りない。
この生姜の比率が、煮込みを美味くたらしめている要因と言っても過言ではない。
……なお、その比率を見つけたのはばあちゃんのもよう。
「ちなみにカケル」
「はい」
「お代わりは好きに具材を乗せても?」
「いいと思いますよ?」
「よし! では肉と卵と――」
「みんなの分も考えて取ってくださいね?」
「……はい」
知ってるか? 笑顔は元々威嚇なんだぜ?
俺の顔から笑顔が消えないようなご飯の食べ方はしないようにね?




