あったのは熊型
「うっわ……懐かし」
「でしょ?」
異世界組がポカンとする中、姉貴だけが反応したソレは。
俺が仕事に行く前に見つけ、掃除と消毒とを済ませた一品。
古くは俺や姉貴が子供の頃から。
所々塗装が剥げているものの、触った感じ、壊れている様子はない。
「それは……動物か?」
「作り物感が凄いですわ」
でしょうね。
実際作りものだし。
「これを使ってデザートを作っていきます」
「……で? それは何なんじゃ?」
夏場に使う、デザートを作る、何か動物を模した物。
この情報で、俺が何を持って来たか。
そして、姉貴が懐かしんだそのアイテムが何なのか、分かる人も居るんじゃない?
「これは……かき氷機になります!」
「???」
いや、そりゃあそうだろうけど。
この人らの視線というか、表情が全てを物語っていますわよ。
氷を削っただけ? と。
もちろん、そんな事はない。
……んだけれども。
「私イチゴミルクね」
姉貴からのネタバラシが早いなぁって。
いやまぁ、いいんですけれどね?
「ふむ。……つまり、削った氷に何かしらをかけて食べるデザートと言う訳か」
「じゃあチョコ!!」
ねぇよ。
いや、正確にはカキ氷用チョコシロップとかあるのかもしれないけど、ここにはねぇよ。
「わしゃあジンをかけてくれ」
「……マジで言ってます?」
「大マジじゃが?」
で、ガブロさんはガブロさんで酒ぶっかけろとか言ってくるし……。
「それが通るンなら、俺は日本酒がいい」
「好きにしてください」
飲兵衛のことなんてちややい!!
とりあえず先に氷だけ削っちゃおう。
かき氷機に、スーパーで買って来た氷をぶち込み、ハンドルを回す。
……あれね? 板状の氷じゃなくて、それを砕いた状態で売ってるやつ。
家で作る氷より溶けにくいらしいし、そっちの方がいいかなぁって。
「そこを回すのか?」
「ですです。……魔法でお願い出来ます?」
「任せろ」
という事でラベンドラさんに託したら、削った氷が出てくるところにお皿をセット。
そして、
「ふん」
ガキョッ!? という音を立てて、へし折れるレバー。
こっちを見るラベンドラさん。 何も言えない俺。
嘘だろ? という顔でラベンドラさんを見つめるマジャリスさんとリリウムさん。
もう酒だけでいいか、とそれぞれの酒に手を伸ばす飲兵衛。
「あー……氷さえ削れればいいので、魔法とかでも大丈夫かと」
「良かった……」
滅茶苦茶ホッとしてるな。
というか、折れるんだ、レバー。
やっぱりだいぶ古かったからなぁ……。
「壊れたんか?」
「レバーが折れただけっぽいですけど、この調子だと中も結構古くなってる可能性がありますね」
「開けていいか?」
「構いませんよ」
で、壊れたかき氷機に興味を示すガブロさん。
言うて構造はシンプルだし、これは異世界でも作れそうだよね。
「カケル、氷の大きさはコンマどれくらいだ?」
「そんなに細かくなくていいと思うんですけど……」
あれだよね? 削った後の話してるよね?
実際に測った事は無いけど、そんなに小さな粒じゃないんじゃない?
いやまぁ、細かかったらフワフワした柔らかいかき氷にはなるだろうけど。
……そうだ。
「粒の大きさでどう味わいが変わるか試してみるというのは?」
「採用」
という訳で異世界組とワクワク実験タイム。
削った氷の大きさでどれくらい味わいに違いが出るか~。
「姉上はどれくらい細かくする?」
「じゃあ、出来る限り細かくしてみて」
「心得た」
……大丈夫かなぁ? 何事もやりすぎって良くないと思うんだけど……。
「こんな感じだが?」
「綺麗ー」
……かき氷だよな?
雪みたく、器に入るまでに空中をゆっくりと降りてくるんだが?
「イチゴミルクだったよね?」
「うむ」
とりあえず、そのふんわりかき氷にイチゴシロップを掛けまして……。
大丈夫かな……。半分くらいかさが減ったんだけど……。
まぁ、食べるの姉貴だし……。
練乳も搾りまして、っと。
「どぞ」
「……なんか、減ったくない?」
「氷が細かすぎてすぐ溶けるんでしょ」
「なる」
で、まぁ納得したらしくさっさと一口……。
すると、
「なにこれ! すっごいフワフワで軽いかき氷!」
「美味い?」
「美味い! 何だろ……本当に綿菓子みたい!」
ほう。
ラベンドラさんの限界の細かさに設定すると、綿菓子のような軽い口どけのかき氷になる、と。
気になるな。
「マジャリスはどうする?」
「私は程よく口に残るくらいがいいですわ!!」
マジャリスさんだって言ったでしょ。
リリウムさん、順番を守りなさいよ。
「割り込むな。お前の希望は後で聞く」
「ぶぅ」
ラベンドラさんに言われてやんの。
「俺も姉上殿と同じく限りなく細かく。……チョコは無いんだな?」
「無いです」
「であれば……うむ、メロンだ。当然練乳付きで!!」
「へいへい」
へへ、メロンとは分かってますね、マジャリスさん。
やっぱりかき氷と言えばメロンだよね。
……練乳はあんまりイメージ無いけど。
「かさが減った分は追加してくれ」
「あ、はい」
なお、姉貴のように目減りしたままで妥協しない模様。
まぁ、好きに食べればいいんだけれども。
「おい、飲兵衛ども。お前らの希望は」
「わしらは――」
……これ、俺の番まで回ってくるのは最後になりそうだな。




