異世界魔改造
「ふぅ……」
クッキーとクリームが安定して美味い。
常設フレーバーの中ではこれが一番好きだね。
というか、ここのアイスクリーム屋に限らず、スーパーとかで売ってるアイスでもクッキー&クリームの安定感凄いよね。
大体美味いもん。
「抹茶が美味いな」
「美味しいですよね」
ラベンドラさんの二つ目はもはやラベンドラさんと言えば、な抹茶ですわよ。
ここの抹茶がなぁ、いい感じの苦みと渋味で美味しいんだよなぁ。
「わたあめ美味い」
なんてマジャリスさんが言うもんだから、ん? と思ったけど。
コットンなキャンディの事か。
それも期間限定なんですよねぇ。
「体中に染みわたるような甘さが俺にピッタリだ」
「ぐぬぬ」
何がぐぬぬだ。
取り合いの末にストロベリーなチーズケーキを勝ち取ったでしょ、リリウムさん。
「!? 飴が入っていますわ!!」
で、自分の確保したアイスを食べてそんな事を言うリリウムさん。
食べたのは……アップルキャンディか。
りんご飴を意識したとかで、リンゴの果肉と飴とがアイスに入ってるんだよね。
果肉はシャクシャク、飴はガリガリとした食感で、食べてて楽しい。
……飴が冷やされててちょっと固いのだけが難点かな。
「一気に食べてしまった……」
「美味し過ぎるのがいけませんわね」
「お前らはいつも一気に食っとるじゃろうが」
「他のフレーバーも試したい」
「その内ラベンドラが作るだろ。それまで待て」
「材料から何から提供してくれれば早く完成するぞ?」
庭で焼き鳥という、夏の熱さを全身で浴びて汗だくになりながらの食事だったからさ。
冷たいアイスが文字通り体に染みわたったんだよな。
これぞアイスの醍醐味よ。
……真冬に炬燵に入って堪能するアイスも捨てがたいけど。
「今日の食事も最高だった」
「自分は肉を切っただけですけどね」
「デザートだけでおつりが来ますわ!!」
「そうだぞ! ラベンドラのデザートレパートリーが一気に増えたんだ! 誇れ! お前は凄い!!」
……。
その言い方だと、ラベンドラさんの作れるアイスのレパートリーを増やした、お店のカタログのが凄いって話に……。
いや、やめておこう。
きっとマジャリスさんはそんな事を思っていない……と信じたい。
「では、カケル」
「明日は鶏しゃぶなのだろう? 楽しみにしているぞ」
「焼酎と日本酒を頼むぜ」
「そろそろワインもだな……」
と言いながら、紫の魔法陣に消えていく異世界組。
よし……。
あれ? そういえば姉貴が静かなような……。
「って、寝てるし。起きろー、せめて片付けの邪魔だから部屋で寝ろー」
「すやぁ」
「バカ姉貴ー」
「今私の事バカって言ったか?」
よし、覚醒成功。
*
「……まだあるっすか?」
「私も冗談だと思ったのだがな……」
異世界に戻り、一夜明け。
早朝にラベンドラ宛という個人名指定で送られてきた膨大な荷物。
それを取りに来るようにとソクサルムから通達され、出向いてみれば……。
「アメノサさんからあなた個人への贈り物だそうです……何に使うおつもりで?」
翔宅でこちらの世界に戻る前に話していた、現代アイスフレーバーを再現するための素材の数々。
それらが、向こうの国で用意出来る限界まで送られていて。
「……新しいアイスのフレーバーの研究にだな」
と正直に話せば、
「そういえば、今は丁度各貴族達の集会が行われていましてね?」
研究成果、出すよな? とソクサルムに笑顔で詰められる。
「……『夢幻泡影』と、アエロスを同席させることが条件だ」
「お安い御用で」
その条件に、甘いもの大好きエルフ二名と、またもや何も知らないカウダトゥス・アエロスを差し込んで。
「どうせ後々公表する予定だった。今集められる調理士を可能な限り集めろ」
「助かりますねぇ」
折角だからと、現代再現フレーバーを作るのに、集められるだけの調理士も招集。
奇しくも、本人の意思とは関係なく、『ラベンドラのアイスフレーバー教室』が開催される運びとなった。
*
「やはり果汁と合わさったアイスはサッパリとしていてよいですな」
「これならば料理の途中の口直しにピッタリでしょう」
「チョコレートのアイスとはいやはや、長生きはするもんですなぁ」
などなど、ラベンドラの提供するアイスたち全てに舌鼓を打つ貴族達……は置いといて。
「もう自分、食べられないっす」
「だらしがありませんわよ。まだ六つ目ではありませんの」
「そうだぞ。こんなもの、食事の内にも入らない」
「自分、朝食は既に済ませてたでありますよ。それに、甘いものもそこまで得意じゃないであります」
「わしももうええわい」
「全く。しょうがありませんわね」
「お前たちに提供されるアイスは、俺たちがしっかりと食べてやろう」
と、ギブアップを申し出たアエロスとガブロに提供される筈だったアイスは。
ニッコニコのリリウムとマジャリスのお腹の中に消えていく。
――そして、その会場から遠く離れたとある場所で。
「なァ」
「何?」
「思ったンだけどよ?」
「ん」
「こいつの原理を解明できりゃあ、温けぇアイスってのが作れるンじゃねぇか?」
『無頼』がアメノサに、異世界でしか作ることが出来ないアイスのアイデアを提案しているのだが。
それが『夢幻泡影』に提供されるのは、もう数時間後の話である。




