ヤラカシニウムを検出
「ふぅ……」
「カケルはもう満腹か?」
「です」
俺としては結構頑張ったと思うよ?
全部の串は二回りしたし、そこに白米と焼き鳥丼のご飯だからね?
手羽先も食べたし、何ならビールまで飲んでる。
お腹一杯ですわよ。
「もっと一杯食べませんと大きくなりませんわよ?」
「……もう成長の見込み無いんで……」
リリウムさんに急におばあちゃんみたいな事言われた。
ただね、一般的にはもう俺の年齢だと成長は止まってるのよ。
これ以上育つとすれば皮下脂肪か内臓脂肪位……。
後は筋肉か。
――ハッ!? 鶏肉はたんぱく質が豊富で脂質が少ない。
サラダチキンとかが筋トレ中に食べられるという事を知って、もっと筋肉を育てろというリリウムさんからの助言なのでは?
無いな。無い。
リリウムさんはそんな事言わない。
「私もご馳走様~」
「堪能した?」
「堪能した」
俺に続いて姉貴もご馳走様宣言。
胃の容量だけは似てるんだなぁ……。
「翔、お茶」
「当店セルフサービスとなっております」
「チップは弾む」
「チップだけ承っております」
なんてアホなやり取りをしている間も異世界組は焼き鳥を焼いてもぐもぐ。
お酒グビグビ。
「……昔さ」
「うん」
「ばあちゃんが、何かあるたびに食べさせようとしてきたじゃん?」
「うん」
「最近、その気持ちちょっとだけ分かるのよね」
「同じく」
食べさせられる当人からしたら、正直鬱陶しいものもあったんだけども。
こうして歳を重ねて、若い頃は食べられてた脂っぽいものをがつがつ食べる若い人には、俺の分まで食え、ってムーヴしちゃう。
いやまぁ、目の前の異世界人たちが俺よりも若い人なのかって部分は疑問があるだろうけれども。
「俺らよりもはるかに長生きだろうし、ずっと元気でいて貰いたいわね」
なんて、ラベンドラさん達を見ながら姉貴に言ったら。
「流石にそれは爺臭くて無理」
とか言って梯子を外して来やがった。
お、なんだ? やるか?
「ふぅ」
「大満足じゃな」
……百本入りの串を三袋。
計三百本分の串を用意していたのに、残った串はたったの五本。
――食べ過ぎでは? さっきまで姉貴とあんなこと言ってたけれども。
あと、ガブロさんは当たり前にビール全部飲み干してるしな。
それで満足じゃなかったら滅茶苦茶デカいため息をついてたところだわ。
「キャベツ、美味しかった」
「手軽に摘まめるからついつい手が伸びちまう」
『無頼』アメノサ組もしっかり完食し、更にはサイドの野菜たちまで綺麗サッパリ無くなってる。
ここまで綺麗に食べてくれたら気持ちがいいってもんよ。
「『酒一滴』でもあのキャベツは用意していいかもしれんな」
「突き出しとして出すという事か?」
「そうだ。今は大体がナッツ系だろう? あの料理ならば大体の酒に合うだろうしな」
「強制ではなく、選択制にすればいいですわ。好みの問題もありますもの」
無限キャベツが出てくる酒飲み処か。
……居酒屋なのでは?
「だったら、山芋と梅を組み合わせたのも欲しいな」
「あれも美味しかった」
「焼酎や日本酒との相性が良かったのぅ」
……居酒屋では?
「出汁のかかったトマトも美味かったぞ?」
「あれはビールにも合ったわい」
……だから、居酒屋でしょ、それらが出てくる酒が飲めるところなんて……。
「よし、カケル。デザートは?」
「じゃあ、持って来ますね」
そんなお酒やおつまみの話題に入らなかったマジャリスさんは、お茶を飲み干し俺の方を向き。
いつもの言葉を投げかける。
俺がどうしても食べたくなったやつを喰らえ。
「アイスクリームです。色んなフレーバーを買って来たので、話し合って何を食べるかを決めてください」
本日のデザートはアイスクリーム。
しかも、日本で一番有名と言っても過言ではないBでRなお店のやつ。
フレーバー数が31であるから、別の名前の方が浸透してるけど。
まぁ、そのフレーバーの数も31から普通に変動してるんですけどね、異世界人さん。
「私キャラメリゼリボン」
「姉貴は毎回それだよね」
「これが一番美味しいからね」
ダウト。
一番美味しいフレーバーは、季節限定のブルーベリーのパンナコッタだから。
無限回言うぞ。
「もしや……前に食べたアイスケーキのお店のやつか?」
「ですです。丁度食べたいフレーバーがあったんで買って来たんですよ」
ちなみに当然のようにバラエティーパックを買って来ている。
あ、俺は当たり前にブルーベリーのパンナコッタを貰うから。
「フレーバーの説明は……」
「全部するのは時間掛かるので、こちらをどうぞ」
で、フレーバーの説明にはお店で貰ってきた商品カタログを渡しまして、っと。
……あれ? これもしかして俺――。
「ふぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!」
「マジャリス!! 私にも見せなさい!!」
またなんかやっちゃいました……?
「桃源郷か!? 桃源郷だな!!?」
「カケル……」
「ごめんなさいラベンドラさん……」
後先考えずに説明の時間を省きたいからとカタログを渡すなんてことをしてしまいました。
多分あの二人は全部作って貰って食べきるまで、執拗にラベンドラさんに付き纏う事でしょう……。
「お詫びに何かしら考えときます」
「まぁ、渡した後から言っても仕方がない。それで手を打とう」
気をつけなきゃな……スイーツ店のパンフレットとか持ち帰らないようにしよう。
万が一にも、あの二人にデザートの食べ放題なんて文言を見せてはいけないから。




