異世界親子丼(正)
「……カケルは何してるの?」
「? ご飯に韓国のりとネギとゴマを振りかけて焼き鳥丼の下地を作ってるだけですけど……」
焼き鳥のタレと白米は合う。当然合う。
だが、白米にアレンジを加えても当然に合うのだ。
某焼肉チェーン店のカルビ専用ご飯をイメージしてチューンアップしてみた。
「それ私にも」
「私にもくださいます?」
なお、アメノサさんとリリウムさんが乗っかってきたもよう。
別に構いませんけれども。
「ガブロさん、ハラミ、もも肉、胸肉、砂肝を全部タレで」
「心得た」
で、乗せたい具はその場でガブロさんにオーダー。
これ、勝手丼形式に則ってるな。
「……その卵は?」
「最後に中央に卵黄だけ乗せるんですよ」
なぜそんな分かり切ってることを聞くんです? マジャリスさん。
その為に現代日本の卵を使っているというのに。
「オムレツの具材にこの焼き鳥を使って作っても美味そうだな」
「オムとりとかですかね。丼にしても美味そう」
「ソースはケチャップよりは、やはりタレだろうな」
「具材に刻みネギもたっぷり入れたいですね」
肉が焼けるのを待つ時間、新たな発想をするラベンドラさんと意見交換。
オムとり丼、普通に美味そうだな。
「また美味しそうな話してる……」
「朝ごはんに作らせましょう」
異世界組の朝ご飯はオムとり丼に決定か。
こっちの朝ご飯どうしようか。
正直、普通にリボーンフィンチの胸肉の味噌焼きとかで済ませたいな。
――西京味噌を買って来て西京焼き、という手もある。
……というか待て、恐らくだけど異世界組の使う卵はリボーンフィンチの卵じゃん?
で、使う肉もリボーンフィンチの物じゃん?
という事はだよ?
前回作った時は異世界腹違い丼とか言ってた親子丼が、オムとり丼は正真正銘の親子丼になっちゃうって事だよな?
言ってて自分で分からなくなってきたわ。
「焼けたぞ」
「待ってました」
なんてやってたら焼き鳥丼の具が焼けましたよっと。
全部を丼に乗せて貰って……。
卵黄を落として……完成!
「見た目百億点」
「あ、それ私も食べたい」
「なんで俺が完成させたタイミングで言いやがるんです?」
アメノサさんやリリウムさんを見習え。
焼き鳥丼の説明をした時に、食べたいと意思表明してただろうが。
その時の姉貴は、私このまま食べるから、みたいな雰囲気で焼き鳥とビールを楽しんでたでしょ。
よりによって出来立てで一番美味しいタイミングに割って入って来るんじゃない。
「ある程度食べたら作ってやるから」
「待つ」
威圧感で姉貴を引かせ、栄えある一口。
……むふ~。
最高過ぎる。
ハラミの柔らかくもジューシィな噛み心地と、溢れる肉汁。
それが白米や海苔と合わさって口の中でオーケストラを奏で、ネギの香りやゴマの風味がそれを後押し。
タレのピリッとした七味の刺激と合わせて、さらにご飯が欲しくなる好循環。
一度食べ出したらやめられない止まらない。
スマンな姉貴、ある程度で止めるなんて、未熟な俺には出来なかったよ……。
「めっちゃ美味そう」
「最高」
そんな姉貴の視線を受けながら、卵黄を箸で突いて破り。
焼き鳥達へ満遍なく広げていく。
「卵が加わるとまた滑らかになって……」
「ほぼ飲み物と化しますわね!!」
いや、固形だが?
そもそもご飯は飲み物にならん。
「お箸が止まらない……」
アメノサさんも俺と同じく、お箸を止めることが出来ない様子。
それだけ美味いんだもんね、分かるわ~。
「姉上、私で良ければ作るが?」
「あ、じゃあお願い」
なお、姉貴の焼き鳥丼はラベンドラさんが代わりにセッティングしてくれました。
というか自分で動けよ……。
「山椒とかあったらより楽しめるかもしれませんね」
「それいいな」
思い立ったら即行動、何やら木の実を取り出すラベンドラさん。
それが異世界山椒なのね。
「カケル、焼酎貰っていいか?」
「ロックでいいです?」
「温ロックにするわ」
『無頼』さんから日本酒ではなく焼酎のリクエスト。
『無頼』さん、何気に焼酎にハマってるよな。
「わしは変わらず日本酒でいいぞい」
あ、大丈夫です。
誰もガブロさんの心配はしてないんで。
というか、ご機嫌に焼いて食って飲んでしてるガブロさんを心配するはずがないんで。
「ガブロさん、日本酒美味しい?」
「最高じゃわい。口に入れた瞬間に膨らむ風味と旨味、鶏肉の脂の甘さに調和する甘さ、タレにも負けないピンと通った確かな味わい、どれも筆舌に尽くしがたい」
「良かった。あ、ハツもお願い」
「ほいほい」
姉貴が買って来た日本酒、飲兵衛たちに好評なのよな。
まぁ、お店の人おススメって話だし、間違いないんだろうなぁ。
「しし唐お願い出来ます?」
「お安い御用じゃて」
ふぅ。
一気に焼き鳥丼を掻っ込んでしまった。
あまりに美味い。そして麦茶が美味い。
……というわけで箸休めならぬ口休めでしし唐を注文。
「ほれ」
これよこれ。
この刺激が口の中をリセットするんだ。
「はぁ……うま」
しし唐でリセットされる直前に焼き鳥丼の余韻で一息。
いやぁ、マジで美味いな、リボーンフィンチ。




