大好きよ
「続いて胸肉じゃな」
「いいですねぇ!」
お次は胸肉。
脂身は無く、筋もない綺麗なピンク色のソレは、タレを塗られて輝く一本と、塩の化粧でキラキラと輝く一本に分かれ。
「タレの方はしっかりした旨味で米が進む」
「塩の方は誤魔化しが効かねぇ美味さで酒に合うぜ」
「こんなのどちらも両方に合うに決まっていますわ!!」
「噛み締めれば噛み締めるほどに溢れてくる肉汁が美味い……」
「これの後に食べる無限キャベツが最高」
と、みんなそれぞれの反応。
……俺?
茶碗に盛ったご飯の上に、タレ焼きの方を休ませつつ塩焼きで白米掻っ込んでるよ?
「そういえばラベンドラ」
「む?」
「カケルに渡し忘れていた部位があったと言っておらんかったか?」
「むふ」
なんだと?
なんか今聞き捨てならない言葉が聞こえて来たな。
……あと、ガブロさん。
よりによってラベンドラさんが白米を口一杯に頬張ってる時に話題振るのやめてあげてください。
「忘れていた。一部ポーションの材料だったので確保していたんだが、そういえば食べられるのでは? と思ってな」
「ほう?」
「リボーンフィンチの内臓には強烈な疲労回復効果や滋養強壮効果がございますの」
「だから、他の部位と比べて内臓系は少量しか渡していなかっただろう?」
初耳ですけど。
というか、普通の鶏レバーの数倍の大きさを渡しておいて、少量しか、では無いのよな。
あと、疲労回復と滋養強壮って言った?
確かに鶏しゃぶで味見をした翌日、体の具合が良かったような……。
「ちなみに部位はこれだ」
「ハッ!? 砂肝!?」
そうか、なんか鳥の部位にしては足りんなぁとか思ってたら、砂肝、お前だったのか。
相変わらずデカいけど。
渡された砂肝、俺の広げた手のひらサイズの大きさだけど。
だから! 加減しろバカ!!
(今わしの事をバカって言ったか?)
言ってますん。
(そうか……うん?)
いやぁ、しかし……このサイズの大きさの砂肝は果たして俺らの歯と顎で噛み切れるのかな?
文字通り歯が立たない、みたいな感じにならない?
(お~い、微妙にはぐらかさんかったか?)
神様は無視で。
俺には目の前の巨大砂肝をどう調理するか考える義務があるんだ。
「とりあえず通常サイズに切り分けて串焼きする?」
「それが一番無難だよねぇ」
とりあえずは目の前の焼き鳥に合わせる形で落ち着いた。
……砂肝のアヒージョとかやりたいかもね。
絶対に美味いし。
「アメノサ、覚えておけ」
「?」
「カケルがあの表情をしたら、何か美味い料理を考えている証拠だ」
「ん。飯の顔。覚えた」
覚えんでいい、んなもん。
というか、そんな変な顔してたかなぁ?
普通に考えてただけなんだけど。
――あと、飯の顔は普通は食べた側の表情に使う言葉なのであって、料理を考えてる人には使わないから。
「とりあえずラベンドラさん」
「なんだ?」
「もも肉や胸肉と同じサイズになるまで、砂肝を切って貰っていいですか?」
「お安い御用だ」
「で、リリウムさんとマジャリスさんは切られた砂肝の串打ちを」
「合点」
「承知の助ですわ」
よし、とりあえずこれでいいか。
「これで砂肝だけ私たちが知る砂肝と遠くかけ離れてたら笑うわね」
「具体的には?」
「……蜂蜜味とか?」
「あまりにも嫌すぎる……」
姉貴に聞いた俺がバカだったわ。
変な想像させやがって。
口の中が甘ったるくなっちゃうじゃん。
「ほれ、ささみじゃ」
そんな口の中を改善しようとお出しされるはささみ串。
タレ焼きの方は大葉に巻かれて焼いてあり、塩焼きの方は、刻んだ茎ワサビが乗せられている。
「解呪されとるっちゅーことで、焼き加減レアでのご提供じゃ」
「最高」
「大葉の香りとタレの甘辛さ、七味の僅かなピリッと来る刺激がささみと合う!!」
「塩焼きの方の茎ワサビとの相性も最高だぞ」
「ご飯が! ご飯が! ススム!!」
ステイ。
アメノサさんその辺でステイ。
……違うな、翻訳魔法さんの方だな。ステイをさせるのは。
「最近見ないわね、あのCM」
姉貴も反応しない。
残念だけど、俺一人の時にこのくだりやったのよ。
なので俺はノータッチを決め込ませて貰う。
「茎ワサビのおかげでサッパリ食べられるね」
「安いささみとかだと加熱したらすぐパサパサしちゃうけど、これはそうならない焼き加減で仕上げられてるし、普通に最高」
「同意」
結構買うんだけどね、ささみ。
加熱するとすぐパサつくのがなぁ……。
棒棒鶏とかで活用してたわ。
「続いて砂肝じゃ」
というわけでお待たせしました砂肝。
好きな人はとことん好き、苦手な人はてんでダメ。
好みの二極化が激しい焼き鳥のメニュー、割と上位と思ってる砂肝。
俺? もちろん好きの最先端にいますわよ。
「いただきます」
砂肝は塩だろって事で、まずは塩から。
さてさて……お味の方は……。
「っ!!?」
「うっま」
まず身の弾力が凄い。
固いわけじゃなく、物凄く歯を押し返してくる。
で、そんな弾力に負けじと噛んでいくと、ある時点から反発が消え、プリッとした食感と肉汁がこんにちは。
よく知る砂肝の食感に変わり、噛む度に旨味が溢れてくる。
臭みとかは元々少ない部位だと思うけど、リボーンフィンチの砂肝も例外ではなく。
内臓とすら思わないんじゃないかってくらい、臭みも癖も少ない。
歯応えだけだね、砂肝を想起させるの。
「美味しいですわね」
「これ、俺好きだな」
「私も好き」
『無頼』アメノサ組が砂肝沼に導かれました。
後は沈むだけです。
訂正、沈めるだけです。




