似たような言葉
「じんわりと浸みてくる旨味の繊細な味わいが最高」
「しみじみと食べられて落ち着いたシメって感じですわ」
「脂がサラサラと甘くて上質だからこそ、このように雑炊にも合うんだろうな」
「ネギの甘みも感じられるな。美味い」
ねぎま鍋の残りにご飯を入れ、溶き卵。
小ねぎを散らしたら完成する雑炊を、みんなに分けたら小鉢一杯分程度。
それでも、シメには丁度いい量だし味わいも素晴らしい。
イセカイカワブタ節とイセカイハモの出汁は、イセカイマグロとも相性抜群。
ラベンドラさんが言ってたけど、イセカイマグロの脂が上質な物だから、ご飯が吸ってもしっとりとした食感を崩さずに脂っこく感じないんだろうなって。
つくづくイセカイマグロの美味しさに感嘆するよ。
「はぁ……満足」
「食べつくした」
「しばらくマグロはいいかなぁ」
会社の人に言ったら怒られそうだけどね、こんな言葉。
でもまぁ、回転寿司では満足できない程の極上マグロを堪能してしまったからな。
……水揚げされたの異世界だけど。
「で、カケル? 今日のデザートはなんだ?」
「姉貴がお酒と一緒に買って来たものになります」
一応冷蔵庫に入れられてるのを確認して、すぐに常温に戻したんだけど……。
餅、きっと硬いままだよなぁ。
「あんこか?」
「お餅に滑らかなこしあんを乗せた、赤福という甘味になります」
「ほうほう」
ま、そうなったら責任は姉貴に取らせよう。
あ、お茶淹れよう、お茶。絶対に緑茶が合うんだから。
「お茶が合うので淹れますね」
「わしらは酒で合わせるからいいぞい」
「ああ」
「はいはい」
飲兵衛二人は赤福に日本酒か。
……現代日本人がやったら生活習慣病まっしぐらでは?
(お主らと栄養の吸収構造が違うから心配いらんぞい)
マジか。
神様からのお墨付き貰えちゃってるのか。
こっちの世界の一部の方々が何が何でも欲しそうな特性だな……。
俺は健康体だから不要だけどね?
会社の健康診断でも視力が多少落ちてきた位で所見無しだったし?
よし、お茶も淹れたし赤福を食べませう。
「はぁ……美味しひ」
「しっとりとしたあんこが口の中でさらりと溶けて広がっていく……」
「中のお餅も丁度いい柔らかさ」
「これまた酒に合う甘味だな」
「甘さと酒の酸味が最高に合うわい」
「……良かったね姉貴」
「うん」
お餅、柔らかくなってたっぽい。
全く、あのまま俺が気が付かなかったら、赤福の本当の美味しさを味わわせる事無く異世界に帰すことになってたんだからな?
それがどれほどの罪なのか、分からん姉貴ではあるまいに。
「あんこと餅。今までも食べてきた組み合わせだが、このデザートは今までとはまた違った味わいがあるな」
「同じ材料なのにしっかり違うと分かるのは、それだけ一つ一つのクオリティが高い証左ですわ」
「同じ材料で同じように作っても、恐らくこの味を完璧には再現出来まい」
分かる。
あんこと餅でしょ? って分かってるのに、赤福は食べると毎回うめぇなってなるもん。
こしあんの甘さ加減といい、餅の柔らかさといい、これが赤福! って言える完成度なんだもんな。
「お茶が合う」
「渋さがありながらスッキリとしていて、ただでさえ口に残らないあんこの甘さを香りごとクリーニングしてくれているようだ」
「お茶も美味しい」
「お茶と合わせることで、相互に高め合う存在の様子を見せてくれる」
ちなみに淹れたお茶は八女茶の玉露。
まだまだ残ってたんでね。
玉露の香りも赤福の味わいの邪魔をせず、それでいて赤福の甘さで飛ばない絶妙な強さ。
もしかして、八女茶の玉露は赤福と合わせることを想定していた……!?
「あっという間に食べてしまった……」
「材料はシンプルだから再現は可能だ」
「やはりラベンドラを『夢幻泡影』に誘ったのは正解でしたわ!」
「だが、先程も言った通り、完璧な再現はかなり遠い道のりになる」
「それでもお前ならやってくれるはずだ」
「エルフ三年会わざれば刮目して見よ」
三年は長いだろ。エルフでなくても刮目しろ。
あと、多分だけどそれは今使う文章じゃないだろ。
文脈的に考えて。
「たった三年の研究でもエルフならば成果を上げる。つまりはそういう事ですのね?」
「そうだ」
どういうことだよ。
あと、三年はたったじゃねぇよ。
いや、研究職じゃないから知らんけど。
そして文脈的に合ってたのかよ、一本取られたよ。
「完成したら私たちの国に送って」
「レシピと一緒にな」
「分かった」
で、出来た異世界赤福はアメノサさん達の国でも流通する、と。
これさ、その内異世界から赤福の起源を求めて聖地巡礼とか来始めたら笑えるな。
――そもそも日本円持ってないからどうにもならないだろうけど。
「はぁ、甘味の余韻で茶をシバくの最高」
異世界人が茶をシバくなんて表現使うな。
……あと、さっきから容赦なく姉貴にモフられてるけど大丈夫です?
「む、酒が尽きたか」
「十分に楽しめたわい」
そして一升瓶を逆さにして振る飲兵衛コンビ。
……目に焼き付けとこ。
多分、俺一人では一生辿り着かないだろう絵面だから。
日本酒の一升瓶を空にする、なんてさ。




