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後の大清酒祭

「結局ネギトロが一番美味い」

「分かる」


 本物の……と言ったらアレだけど、ネギトロ、マジで美味い。

 これ味わっちゃうと今まで食べてた回転ずしのネギトロとかは、ああ、代替品なんだなって分かっちゃうんだ。

 身と旨味のねっとり感、香り、脂の甘み。

 どこを取っても今までの記憶に該当する物が無いもんね、ネギトロ。

 ……回転寿司のネギトロも、特徴は捉えているんだけどな。

 本物の後に思い返すと、うん。

 よく頑張ってここまで似せたね、って感想しか出てこない。


「たくあんとの相性もいいのですね」

「お鍋とぬか漬けの組み合わせ、最高」

「中落ちはここまで美味いものだったんだな」

「脂のノリが正義ではないという事か」


 ネギトロに感動してる飲兵衛も居れば、ねぎま鍋や中落ちの美味しさに感動しているエルフや獣人も居ます。

 ねぎま鍋に関しては飲兵衛たちも摘まんではいるけども。


「ふぅ……お腹一杯」


 一方こちらは姉貴の言葉。

 お茶碗三杯は結構健闘した方なのではないでしょうか?


「マグロ、堪能した?」

「堪能した。というか、普通に最上位に入る美味しさだった」

「美味いよね、イセカイマグロ。……もう無くなるけど」

「まぁ、これだけ用意したらねぇ……」


 貰ったイセカイマグロも今日の勝手丼風晩御飯でほとんど使い切っちゃったからね。

 あとねぎま鍋。

 明日の俺の朝ご飯位は可能だけど、このままだとお持ち帰り分すらない。

 まぁ、ペース的に勝手丼用の具が残るっぽいし、それをそのまま持って帰って貰おうかな。


「酒を持って帰れねぇのが残念だ」

「その分ここで飲めばよかろう」

「もう少し開発が早く進めばいいのに」

「焦って急かせた所で、研究や開発というのは情報の蓄積。特に成果が上がる事は無いと思うが?」

「やる気の問題」


 なんか根性論みたいな事言い始めたな。


「先行きが不透明だからモチベーションが上がらない。明確な目標や指標、達成項目が欲しい」

「その点この酒が持ち帰れりゃあ、これを目指して進むことが出来るわけだろ?」


 思ったより根性論じゃなかったな。

 確かに物事を達成したって思う事はモチベーションに繋がるのは分かるなぁ。

 先行き不透明のプロジェクト……曖昧な目標……届かない達成項目……ウッ、頭がっ……。


「いっその事、日本酒品評会とかを開催しちゃったらいいんじゃない?」


 姉貴が急になんか言い始めた……。

 もしかして酔いが回られておられるので?


「大会か?」

「大会って言うか、ここではこんなもの作ってます、みたいなのを見せる場、かな。ここでもあるのよ。一つの会場に何百ってお酒が並んで、簡単なおつまみとコップ貰って飲み比べる会場みたいなのが」


 何百は言い過ぎじゃない?

 あるにはあるけど、大体地域密着というか、広くても各都道府県が開催する地元のお酒を飲み比べるイベントくらいなイメージだけど。


「そもそも品評会が出来るほど研究が進んでいるか?」

「経過を見せるだけでも効果はありそうだが……」

「会場周りに出店が並んで酒の友とかを売り込んでそうじゃのぅ」

「居酒屋とか無いんですっけ?」

「……なんだそれ?」


 知ってたけど、やっぱり異世界に居酒屋はない、と。

 あってもいいと思うんだけどなぁ、居酒屋。

 今の日本みたく、食事処としても活用できるものじゃなく。

 読んで字のごとくの、お酒とおつまみを楽しむだけのお店。


「酒と酒の友だけを販売する飲食店って感じですね」

「あと、シメ用の軽いご飯ものとかね」

「例えを聞いてもいいか?」

「イメージですけど、おでんやコロッケ、煮込み料理に焼き鳥、刺身に焼き魚とかですね」

「枝豆とかも」

「なるほど……」


 あくまで俺と姉貴のイメージってだけで、今の日本の居酒屋のイメージではない。

 

「何か考えてる?」

「いや、ドワーフ連中の集客が見込める以上、新しいスタイルとしては有りだと思う」

「いかにわしらドワーフが酒のみとは言え、未完成の酒をがぶがぶ飲みたくはないぞい?」

「だが、酒の成長を見守れる、と言い換えればどうだ? 研究が進むにつれ、自分が飲んでいた酒が徐々に美味くなっていく。この酒はわしが育てた、と言えるようになると考えれば?」

「あ、普通に通うのぅ」


 通うのか。

 あと、そのフレーズって異世界にも存在するんだな。

 ○○はわしが育てた、ってやつ。


「酒造ギルドは日々ドワーフからのフィードバックを受け取れ、ドワーフは酒を育てている感じを得ることが出来る。意外に上手くいきそうではないか?」

「最初の導線が必須じゃな。一度定着すれば口コミで広がっていくと思うが、そこまでこぎつけられるかどうかが鬼門じゃわい」

「そこはガブロに頑張って貰おう」

「……? 何をさせる気じゃ?」

「アエロスにとある記事を書かせる。その記事はガブロが美味い酒に巡り合ったという内容だ」

「……嫌な予感がするぞい」

「そこでお前が書く内容は、カケルの所で飲んだ日本酒のレビューだ」

「同族に追い回される未来が見える見える」


 なんか異世界組が企んでますけど、箸が止まったのならそろそろシメを作りますわよ?

 調べたらお蕎麦が普通らしいんだけど、今日のねぎま鍋は突発的な思い付きだし。

 シンプルにご飯と溶き卵を入れて、雑炊にしますわ。


「大変だなぁ、とっつぁんも」

「お主も名前も出すからな。一緒に飲んだ、と」

「冗談きついぜ。とっつぁんは同じドワーフだからそう強く言われねぇだろうが、俺はドワーフじゃない以上尋常じゃない突き上げが来るぜ?」

「旅は道連れ」

「情けくらいはくれよ」


 大変そうだなぁ、異世界。

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― 新着の感想 ―
何か美食し続けて舌が雄山とか山岡さんとかになりつつあるな…
「大変だなぁ、とっつぁんも」 「お主も名前も出すからな。一緒に飲んだ、と」 「冗談きついぜ。とっつぁんは同じドワーフだからそう強く言われねぇだろうが、俺はドワーフじゃない以上尋常じゃない突き上げが来る…
多分異世界にはスイーツバイキングとかもなさそうですよね。 現状スイーツ大量生産の手法なさそうで実現不可能ですけど、カケルの世界での存在知ったら家からの脱走考えそうなのが二人ほどいる()
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