酒が飲めるぞ~い
「ピンと筋の通った濃厚な旨味、酸味も感じられる甘み、後味のキレ。……美味い」
「魚に合うのは当然。じゃが、この味わいなら肉でも合うじゃろうな」
「飲みやすい……」
「昨日いただいたワインも素晴らしい物でしたけれど、この日本酒も素晴らしいですわね」
「酸味のおかげでネギトロの濃厚な旨味と脂の甘みが引き立つ」
「美味しいわねコレ」
銘柄を調べてみたら、大阪の北の方の山里で作られてる日本酒らしい。
みんなの感想に合った通り、濃厚な旨味と甘味、酸味のバランスが良くて、凄く飲みやすい。
それでいて後味はスッキリとしていて料理の邪魔はしない。
今回のイセカイマグロにめちゃめちゃ合ってるけど、正直これは和食なら全般に合うって感じの味わい。
なんだろうな……整ってる、って感想でいいのかな。
「たくあんと酒だけで無限にイケるな」
「あら、ではぬか漬けもお出しします?」
『無頼』さんが薬味用にと刻んでおいたたくあんでしっぽり飲み始めたのを合図に、リリウムさん印の糠漬けが登場。
三日坊主にならないかと心配だったけど、ちゃんと続いてるんだね、関心関心。
――姉貴も見習ってどうぞ。
「ぬか漬けの香りがまた酒に合うのぅ」
「マジでこの酒が俺らの国でも飲めるようになンねぇかな」
「米の研究は進んでいる。そう遠くない内に出来るんじゃないか?」
「エルフの言うそう遠くない内って言葉ほど信用出来ねぇものもないわな」
「そもそもわしらが欲しとるのはこのクオリティの酒じゃ。それこそ何年先になる事やら……」
……目逸らし。
日本酒の歴史って、奈良時代とかからあるらしいから、現代基準だと1300年とかの技術と伝統の賜物なのよ。
それを異世界でってなると……。
下手すりゃエルフの寿命より歴史があるからな、日本酒。
「うん、お代わり」
「ユアセルフ」
「コチュジャンと生卵乗せてユッケ風にするんだ~」
ガタッ!
――いや、うん。
悪気はないのは分かるし、全然美味しさを想像してテンション上がるのは分かるんだけどさ?
そういう発言すると、食いしん坊達が自分たちもとお代わりを急ぐようになっちゃうでしょ?
姉貴はもう少し自分の言葉に気を付けて?
「醤油はいるかな?」
「タラっと回し掛ける位でいいんじゃない?」
「うい」
で、戻ってきた姉貴の茶碗の中の完璧なビジュアルよ。
ご飯の上にネギトロ、真ん中を窪ませてウズラの卵が乗り、その周囲にコチュジャンが盛り付けられている。
仕上げに醤油がネギトロの部分に薄くかけられてて、この見た目だけでご飯が進むレベル。
……俺も次はユッケ風にしよ。
「はぁ……幸せ」
そりゃあそうでしょうよ。
今の内に噛み締めな。こんなの外国に行ったら味わえないんだから。
――日本国内に居てもイセカイマグロが味わえるのはここだけなんですけどね。
「ヅケの塩味がまた酒と合うな」
「このお吸い物と酒の相性も最高じゃぞ」
……みんなさ。
目の前の丼に気を取られ過ぎて忘れてない?
今日のご飯はねぎま鍋もあるんだぜぇ?
と言う訳でねぎま鍋に一番乗り。
大トロと、ネギを取って、まずは大トロから。
「やっば」
ただマグロとネギを煮込んだ鍋でしょ? そう思っていた時期が僕にもありました。
いやうめぇわ。
お箸では持てるのに口に入れた瞬間からホロリと崩れる大トロ。
しかも崩れただけなのに肉汁をまき散らしてくるんだ。
スープの味付けも完璧。安定感抜群のイセカイカワブタとイセカイハモの黄金出汁の旨味と風味に醤油の風味と塩味がプラスされ、大トロの脂に負けない素晴らしい味付けになってるね。
サラサラとした脂は甘みはあれどくどくは無く、加えて脂の層の部分は加熱されたことによりゼラチン質な食感に変化。
ホロホロぷるぷるとした食感に、溢れる肉汁と吸われた出汁。
今からこのスープで雑炊を作るのが楽しみ過ぎる。
「あー……酒に合う」
そして日本酒とよく合う。
当然だよね。
はぁ……美味し。
「むほほほほ!」
「ネギがうめぇな! 焼き目の香ばしさとネギの甘さがより際立ってやがる」
ねぎま鍋に手を付けた二番手は飲兵衛コンビ。
笑顔で日本酒呷ってるよ。
「癖が無くて美味しい。身がしっとりしてる」
アメノサさんが食べたのは中トロか。
そっちも美味しそうだなぁ。
……あ、そうそう。
生のワカメも用意したんだよね。
これはしゃぶしゃぶ用。
「ちょっと失礼します」
と言う訳でねぎま鍋にワカメをイン。そして数秒ほど待ちまして……。
引き上げて頬張る!
「……美味い!!」
わかめの印象が大きく変わるね、ワカメしゃぶしゃぶ。
本当はワカメが旬と言われる春にやった方が美味しいんだろうけれども。
これはこれでまた美味い。
というか、やっぱ出汁の美味さって正義だわ。
マジでイセカイカワブタ節とイセカイハモ節が流通しないかな。
……ダメだな。どう考えても俺が手を出せない程高騰する未来しか見えない。
「磯の風味がまた酒に……」
「正直この鍋囲んで酒摘まんでる方がいいまであるな」
とかなんとか言ってる飲兵衛コンビですけど?
俺知ってますよ?
そんな事言いながら丼二杯目のお代わりをして戻ってきたところなの。




