魔改造……?()
「下ごしらえは向こうで済ませてきた」
「じゃあ、本当に俺がやる事無いんですね」
「うむ。座って待っててくれ」
異世界組が到着し、姉貴が『無頼』さんやアメノサさんに突貫。
今日もワインあるよ、と囁けば、物凄く嫌な顔をされながらもケモミミやケモ尻尾のモフモフ権を確保。
さっきまで寝ていたからかエネルギーが有り余っているようで、それはもうモフモフ、モフモフとされておられますはい。
「そうだカケル」
「何でしょう?」
「メインをマグロのステーキとシュニッツェルの二品にする」
「あ、はい」
シュニッツェルってなんだったっけ……。
確か、ヨーロッパの方のカツレツだったような……。
日本のトンカツみたいに厚くなく、薄く引き伸ばした肉を揚げた料理だったような……。
重そうだけどな、ステーキと揚げ物って。
最初にサラダとか食べて、胃に野菜を敷いておきたい。
「アミューズとしてカルパッチョ、オードブルとしてタルタルステーキを出す」
「もうその時点でメイン張っててもおかしくない料理達ですね」
「間違いないな」
と言う訳でコース料理の確認。
アミューズは確か突き出しとかの、一番最初に出てくる料理だったか。
食前酒を飲むための料理とかって考えられるらしいな。
で、前菜ことオードブル。
その時点で既に満足しそうだ……。
「料理の仕上げに白ワインを使う予定なのだが、カケル、どれがいいか見繕ってくれるか?」
「分かりました」
神様出番ですよ。
(ん? なんじゃい?)
料理のソースや仕上げに使う白ワインの選定ですって。
(ふむぅ……魚の形のボトルワインがいいと思うぞい)
魚の形のやつか。
確か神様が二本買っとけと言ってたやつだな。
「その魚の形をしたやつがいいかと」
「なるほど」
で、俺がそれを指差したら、ラベンドラさんは流れるようにボトルを開けて、テイスティング。
「ズルい!!」
「ズルいも何も、味を見なければ調理に使えん」
「ですよ?」
当然異世界組が声を挙げるも、味の分からない調味料を料理に使うはずがないだろ。
使う場合はちゃんとレシピ通りに作ってる時ぐらいだっての。
「フローラルで果実味がしっかりある。香りもよく、ミネラル感や酸味のバランスがいい」
「それなら色んな魚料理に合わせられますよ?」
「うむ。ボトルの形通り、魚と親和性があるようだ」
で、早速そのワインと何やら調味料たちを混ぜ合わせ……。
カルパッチョにかけて、アミューズが完成。
「これはそのままこのワインでいただこう」
と、お出しされるは買っておいた二本目のお魚の形ワイン。
まぁ、それを使って仕上げたんだもの。
合わないはずがないわな。
「では……いただきます!!」
ちなみにコース料理よろしく、食べ終わるタイミングでラベンドラさんが次の料理を持って来てくれるようす。
当のラベンドラさんは、調理しながら合間に出来た料理を摘まんでワインを頂くスタイルらしい。
立って食べるのとか、どうせなら全部作ってからみんなで食べればいいのにとか、色々と思う所はあるのだけれども。
物凄く楽しそうに調理してるんだよな。
まぁ、本人が楽しいならいいか。
ご飯は楽しく美味しく頂くのが一番だからね。
*
「アキナ様」
「なぁにぃ?」
「言われていた解呪の腕があるものと、調理に心得がある者、空き地と建設予定の設計図を揃えましたが……」
「ん、行く」
遠く離れた異世界に居るはずの『臥龍岡 早苗』。
そんな彼女と、どこか被ってしまうレシュラック領ギルドマスター、アキナは。
部下に命じた物が揃ったと、それの確認に出歩いて。
「にしても、魚を生で食すなど……」
「抵抗あるのは分かるけどね。しっかり解呪して、生臭さとかを取り除ければ素晴らしく美味しいのよ」
向かう先に居たのは、港の敷地にギリギリ入るか程の位置にある、開けた場所。
そこに、木材などの材料が運び込まれ、建設担当のドワーフ達が、すぐにでも着手出来るぞ、と腕を組んで待機中。
「立ち食い想定で椅子無し、テーブル無し。カウンターのみ」
「心得とる」
「正面の扉は先日考案された木製スライドドア方式を採用。店内が見えるよう、中央を抜いてガラス嵌め込み」
「ガラスの厚さはこの辺の潮風の強さを考慮し、ナイフ程度では押し破れん程度の厚さの物を用意した」
「上々。じゃ、期間は二週間。予備に三日として、完成後に修正があればその期間で対応」
「問題ない」
「報酬は前払いで支払い済み。完成後に、ボーナスとして『酒一滴』の招待券を人数分あげるわ」
「その言葉で百人力よ。では早速取り掛かる」
「速度も品質もあんた達の所より優れてる所は無いから、期待してるわね」
「おうとも!」
と、ドワーフの棟梁と、これから立てる建物の確認。
そして、建築後のボーナスの話を終えたところでアキナは振り返り。
「じゃ、まずは簡単に解呪後の下処理と作って貰いたい料理の説明をするわね」
待機中だった解呪士と調理士にそう言うと……。
「すぐにじゃなくて、将来的になんだけど、このお店で複数種類のお魚を取り扱う寿司屋を経営して欲しいのよ」
と、ギルド職員ですらまだ馴染みがない料理名を口にして。
「料理の説明は詳しくする。だから、可能な限り早く人に食べさせられるレベルまで上がって欲しいの。あの料理は、ここの新しい名物になるわよ!」
アキナだけがテンションが高いまま、寿司なる、今まで見たことも聞いた事もない料理を教えられた調理士と解呪士の二人は。
この後、しばらく試行錯誤の研究の日々を乗り越えて。
ついに、ドラゴンロール寿司の開発を成功させるのであった。




