有罪
「……何してんの?」
「いやぁ……アハハ……」
(何度も悪夢を見させて起こそうとしたんじゃがな……)
仕事から帰ってきたら、姉貴がリビングのソファで気持ち良さそうに寝息を立ててた。
――恐らく、買い物にも行かず。
「……被告人、弁明は?」
「被告は国を跨ぐ長距離の移動の後で非常に疲れており、また、時差ボケの影響で体調が思わしくなかった部分があります。そこに大変美味しい食事をとって満足してしまい、一時間だけと体をソファに預けたところ、このようにガッツリ睡眠をとってしまった次第であります」
「つまり弁明は無いという事でいいですね?」
「ガッツリ弁明してたつもりだったんだけど!?」
まぁ、要は美味しいご飯食べてお腹一杯になったからうたた寝してたってだけで……。
出来れば買い物してから眠ってて欲しかったなぁと。
「今から買ってくるから!」
「何を?」
「ワイン!」
「……買って来たけど?」
「……あ、本当だ」
俺を舐めるなよ姉貴。
どうせそんな事だろうと全く思ってませんでしたはい。
帰宅途中に神様から、
(お主の姉が眠りこけて目を覚まさなんだ)
という連絡? 密告? を受けたから、ため息つきながらワインを買って来たまでよ。
ちなみに姉貴に授けるハズだった神様からのワインの助言は、しっかりと俺が受けとってます。
チリワインにイタリアワイン、フランスワインを赤白織り交ぜて買って来た。
ロゼワインも欲しかったから、もちろん買って来てある。
(もう少し品ぞろえが良い所が良かったがのぅ)
贅沢言わない。
スーパーのワインコーナーなんてそう力を入れてるところ少ないんだから。
デパートとかになればもう少し探せたかもですけれども。
(むぅ)
まぁ、今回に関しては確実に姉貴が悪いので、非難はそっちにお願いしますね。
非難なのか避難なのかは分からんけども。
「よし、だいぶ寝たからかなり元気!」
「これで身体だるいとか言ってたら布団に放り投げて縛り付けてたからな」
「? 縛ってどうなるの?」
「ラベンドラさんお手製マグロのコース料理が食べられない」
「鬼! 悪魔!! 翔!!」
「言ってろ。ほら、今からゴー君にご飯あげに行くよ」
「あ、行く行く~」
と言う訳で姉貴を連れてゴー君へのご飯やり。
最近はお昼の分も朝にあげれば、自分で食べる量調整してくれるんだよねゴー君。
多分、姉貴よりも賢い。
*
「……怖がられてない?」
「あんた誰って顔されてるんだけど……」
庭に行き、姉貴が自分でご飯をあげたいって言うから任せてみたら、ゴー君、めっちゃ警戒して全然貰った土に手を出さない。
あれか? 出張とかでしばらく会わないせいで自分にだけペットが懐かない旦那さんとかと同じ現象か?
時間を置きすぎたんだよ、姉貴は。
「覚えてない? 翔のお姉ちゃんなんだけど……」
「ンゴ~?」
居たっけなぁ、だってさ。
まぁ、俺にしか聞こえないというか、理解出来ないらしいゴー君言語だし、姉貴には伝わらないと思うけど……。
「まぁ、また一から信頼を築いていけばいいか」
とかなんとか言ってますけど?
果たしてこれまでが信頼を築けていたかと言われると……。
そもそも、信頼を築いていたなら忘れられないのでは? 翔は訝しんだ。
「とりあえず、変なものは入ってないから食べても大丈夫だよ」
「ンゴ!」
俺がそう言ってあげると、モリモリと土を食べ始めるゴー君。
姉貴が変な顔でこっちをメッサ見てくる。
どうにかして欲しい。
「これが……女子力?」
「どれが?」
何をどう受け取ったら女子力になる?
「翔……立派になって……」
「誰目線で何目線だ?」
姉貴が錯乱してる……。
まだ時差ボケが続いてるのかな?
それとも普通にボケなのかな?
「そういや、今日はなにも用意するものが無いんだっけ?」
「ワイン」
「あ、うん。それ以外で」
今日のご飯はさっきも言った通りラベンドラさんのフルコース料理だからね。
俺が準備するものは無い。
たまにはこうして一切料理しない日があるのは嬉しいよなぁ。
結局、料理ってエネルギー使うからね。
準備や片付けまで含めて。
それを一任できるのはマジでありがたい。
ラベンドラさんに感謝。
「説明聞いてただけでも美味しそうだったもんね」
「マジで期待しかない」
前も確かこんな感じでコース料理を食べた記憶があるな。
あれはなんだったっけ……?
まぁ、いいか。
「肉料理とかどうするんだろ?」
「普通にイセカイマグロを焼くって言ってなかった? ステーキって」
「それは魚料理じゃないの?」
「……それはそうだけれども」
俺もラベンドラさんの考えを全部理解しているわけじゃないから何とも言えないけど。
どうするんだろ。
あ、ドラゴンの首肉のステーキとか食べたいかもなぁ。
姉貴も食べてないし、丁度いい気がする。
ブレス液をベースにしたソースとかで。
赤ワインに滅茶苦茶合うだろうし。
「ん、来るわよ」
「ほいほい」
姉貴だけが感知出来る、異世界からのこちらへの干渉。
それを受けて、来た、ではなく、来る、と発言した姉貴の言う通り。
数秒後に、紫の魔法陣が出現。
さて、それじゃあ異世界コース料理……堪能しますか!




