天才じゃったか……
「まずはこちらの白身からだ」
という事で記念すべき一貫目はイセカイハモの握り。
湯引きしたイセカイハモを握り、上に……なんだ?
「梅とポン酢を混ぜたジュレを乗せている」
「美味しそう!」
梅ポン酢ジュレ、か。
ラベンドラさんもやりますねぇ。
「梅の酸味と『――』のフワッとした甘みが酢飯の酸味とすっごい相性いい!」
「うめぇもんだ」
「塩気とかも丁度いい。繊細な味わい」
「これから食うぞー! と気持ちが上がっていくようじゃわい」
「お代わりですわ!!」
異世界組の反応は当然いい。
……姉貴は?
「……天才?」
「よく言われる」
シンプル感動してるみたいですね。
あと、ラベンドラさんの返しが強者側過ぎる。
俺もその返し使ってみたい。
「ワイン美味し……」
「寿司にも合うもんじゃのぅ」
なお、オレンジ色のロゼワイン? は寿司に合うらしい。
どれどれ……?
「お、美味」
まず待ってほしい。
シンプルに寿司が上手すぎる。
美味いし上手い。
口に入れた瞬間にパラリと解れるシャリ。
歯を当てるだけで噛み切れるような鱧。
それらがまるで計算されたような混ざり方をし、最高の配分で飲み込まれていく。
鼻に抜ける梅の香り。ポン酢のサッパリとしつつもしっかりとある塩味。
鱧の甘みに旨味、シャリの酸味にご飯の甘み。
全部を計算式から作ったんかってくらい完成度が高い。
店で食べたら一体いくらするんだこれ……。
そんなレベルの一貫。
「香りは結構ストロベリーとかを感じるかな……」
で、お寿司の余韻を楽しみつつ、ワインの方へ。
グラスに鼻を近付ければ、こう……酸っぱい感じのイチゴの香りに似たフルーティな香り。
合うのかなぁと思いつつも口に含むと……。
「おー……意外」
色合いからは想像出来ない位に酸味が優しい。
そして、香り程ガツンと味も主張してこない。
口に入れた瞬間は酸味があるけど、時間が経つと酸味が抜け、微かな甘みと果実感の強い余韻が残る。
それがまた鱧と合うんですわ。
鱧の脂の甘みとワインの酸味のマリアージュが素晴らしく、その脂は甘さと共にワインに溶けて。
飲み込んで、ワインの余韻に浸る頃には、口の中がサッパリとリフレッシュ。
寿司に合い、次なる寿司への準備もしてくれる。
姉貴が適当に選んだにしては結構いい組み合わせなんじゃないの?
「……マジでうめぇな」
「これ、持って帰りたい」
「全部神様に没収されるぞ」
「そうなの?」
「一滴たりともここからワインを持ち帰る事が出来た試しがない」
「神様のけち」
「また弾かれるぞ」
「というのは嘘」
『無頼』アメノサ組が初めての現代ワインに舌鼓を打ってらっしゃる。
いや、うん。
俺からしてもこのワインは美味しいと思うよ。
というか、飲みやすい。スルスル飲めちゃう。
「次の寿司だ」
と、お出しされたのはまた湯引きされたイセカイハモ。
ただ、さっきと違って何かかかってるね。
「今度は山椒レモンで食べてみろ」
ほほぅ。山椒レモンですか。
大したものですね。
と言う訳でいただきます。
「クッソ合う」
「美味しいですわねぇ」
山椒のピリッとした刺激が、イセカイハモの身と相性抜群。
更にレモンの酸味が旨味を引き締め、口の中が美味しいの洪水で溢れてしまう。
そこに追っかけるようにロゼワイン。
レモンの酸味よりも優しい酸味の登場に、口の中は落ち着きを取り戻し。
口内に残る脂を全て流して余韻に繋ぐ。
飲み込んだ後に口の中の空気を鼻に抜くのが最高にチル。
うめぇわぁ……。
「……天才?」
「よく言われる」
数分ぶり二度目。
いやでも、確かにこれは天才か? と思わず聞き返したくなるお寿司だった。
山椒レモン、鱧と合う。
覚えた。
「もう一品握ったら赤身に行こう」
との事でお出しされたお寿司は……。
「かば焼き握りだな」
タレを塗り、炙ったイセカイハモに山椒を少々。
こんなの絶対に美味いだろ。
「甘さを抑えたサッパリ系のタレが、鱧の旨味と合わさって極上のシャリのお供になってる……」
「ワインとの相性もすげぇぞ? 今までより濃い味付けなのに、その濃さに負けないワインの美味さが認識出来る」
「じゃから言ったじゃろ。ここのワインは一線を画すと」
「いつでも高いレベルのワインをオールウェイズ提供してくれますわ」
「ラベンドラさんの腕も凄いですよ。持てるのに口に入れたらシャリが解けるって具合の握り方が素晴らしいです」
「多分、私が食べたどの海外の寿司屋よりも腕いいわよ?」
みんなワインばっか褒めるけど、真に褒められるはラベンドラさんだよ。
こんな繊細な握り方出来るの、ほぼほぼ寿司職人だけだろ。
「自分でも思いのほか上手くいって驚いているさ」
ちなみにラベンドラさんもみんなと一緒にお寿司食べてワイン飲んでるよ。
自分が握って、自分で食べてってしてるけども。
「それにしてもこのワインは美味い。あっさり、さっぱり、味が濃いなど、ほとんどの料理に合うんじゃないか?」
「あっさりとしていて酸味も優しいが、決して味が弱いと言う訳ではない。そこが『――』と相性がいい要因だろうな」
「香りもいいですし、アイスとかとも合いそうですわ」
「まだここから赤身に移るんだろう? どんな相性になるか楽しみだな」
そうじゃん。
まだ三貫しか食べてないじゃん。
……それでこの満足度? 異世界食材恐るべし過ぎるんだけど……。




