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知らない単位

「む、姉君が戻ってきたのか」


 紫の魔法陣から異世界組が登場。

 先頭を歩くガブロさんがすぐに姉貴の存在を察知。


「ガブロさんお久~」


 そして姉貴は緩い挨拶をした後……。

 ――その姿が消える。


「わきゃっ!?」

「フルモッフ! フルモッフ!!」


 なお、消えた先はアメノサさんの尻尾である。


「カケル! これ誰!? ヤっちゃっていい!?」

「姉貴です。ヤるのはダメですね」

「離れろ」


 突然尻尾をモフられて困惑したアメノサさんは、涙目で俺に説明を求め。

 その上で物騒な質問をしてこられまして。

 この時点でブチギレ具合が分かって来るけど、それよりも何よりも。

 俺が聞いた事無い位低い声で『無頼』さんが威嚇してる。

 しかし、姉貴には効果が無いようだ。


「うわぁ! 本当に犬〇叉じゃん! かなり〇夜叉! かなり犬夜〇だよこれ!!」


 今度は『無頼』さんの耳や尻尾の方へと向かって行って……。

 耳は身長が足りずに届かず、尻尾も……なんて言うんだろ。

 猫じゃらしに遊ばれてる猫みたいな、追いかけてるけど全然追いつけないみたいな……。


「姉貴、それくらいにしといてくれ。弟として恥ずかしい」

「えー! もう少しくらいいいじゃん!」

「今晩のご飯が食パンになっていいなら続けてどうぞ?」

「私は正気に戻った」


 正気じゃなかったんかい。

 ……正気じゃないか。そりゃそうか。

 にしても、マジで効果絶大だなご飯食パンの魔法。

 俺が使える唯一の魔法が効果覿面で何より。


「フーッ!! フーッ!!」


 なお、アメノサさんは姉貴に思いっきり警戒してるもよう。

 残念でもないし当然。


「それで? 今日の料理は?」

「今日はラベンドラさんに張り切って貰おうと思いまして」

「ほぅ?」

「頂いた食材たちでお寿司を握って貰おうかと」

「なるほど」


 説明しただけで既にやる気のラベンドラさん。

 話が早くて助かる。


「酢飯は?」

「今からですね」

「であれば寿司酢から私が準備しよう」

「お願いします」


 今日の晩御飯は楽だわ。

 全部ラベンドラさんにお任せでいい。


「茶碗蒸しは用意してるんで」

「うむ」

「カケル……」


 と、ラベンドラさんとやり取りしていたら、アメノサさんが姉貴に警戒しながら俺の裾を引っ張って来て。


「どうしました?」


 聞けば、


「あの人嫌い」


 早々に嫌い宣言。

 流石に初手尻尾モフりは好感度ツンドラになりますわよ。

 姉貴、反省してどうぞ。


「姉上が帰って来たという事は、ワインにも期待していいのか?」

「もちろん。さっき翔が神様にお供えしてたけど、滅茶苦茶喜んだらしいわよ?」


 ピクリ。

 俺にすがっていたアメノサさんの耳が、明らかに姉貴たちの方へと向いた。


「デザートワインにアイスワイン。赤と白にロゼ。微発泡のも買って来てるわよ」

「流石じゃな」

「久しぶりにこの場所のワインが楽しめますわ!!」


 そう言えば最近は出してなかったっけ。

 日本酒にカクテル、焼酎ばっかだったか?

 ……ちょいちょい出してたような気もするけど……。

 まぁ、いいか。


「そんなにうめぇのか?」

「私たちが普段飲んでいるワインが児戯に思えますわ」

「バハムートの血を入れて熟成させたワインと張る。というか、こっちの方が上だ」

「一度飲むと忘れられん呪縛になるぞい」

「「ゴクリ」」


 可哀そうに。

 ワインの話に食い付いたのを見た姉貴の顔が、それはもう邪悪な笑みを浮かべておられる。

 さながら鬼畜眼鏡キャラが顔に影を落としながら眼鏡をクイッてしているかのよう。


「飲みたい……」

「でも私の事嫌いなんでしょう?」

「うっ……それは……」

「なんて、冗談冗談。1モフり一杯で飲んでいいわよ」


 知らん単位で取引しようとすな。

 どんだけモフりたいんだ……。


「わりぃな、最近モフ高でそのレートじゃ無理だ」


 『無頼』さんも乗っからなくていいから。

 後、なんだモフ高って。

 モフりの価値って変動するのかよ……。


「じゃあ、1モフり二杯」

「妥当。でも、既に私の尻尾4モフりしてる」

「確かに。じゃあこっちのお兄さんの方モフらせて貰えればいいや」


 もう好きにやっててくれ……。


「酢飯の用意は出来た」

「海苔とかいります?」

「あると嬉しいな」

「了解です」


 ラベンドラさんの寿司準備を手伝いつつ、俺はお寿司に必要なものの準備。

 湯呑、醤油皿、ガリ、茶碗蒸し……そしてみそ汁。

 味噌汁はもちろんイセカイカワブタ節の出汁をふんだんに使ったあおさの味噌汁。

 これぞ寿司! って感じのラインナップだよね。


「『――』の身は脂のノリごとに切り分けるぞ?」

「それがいいと思います。あ、こっちのは湯引きでいいんですよね?」

「うむ。それが一番美味い」


 楽しみだなぁ、鱧寿司。

 どんな風になるんだろ。


「お寿司にワインって合うのかね?」

「魚料理とワインは合わせるんだし、合わない事は無いんじゃない?」

「ちょっと調べてみる」


 ワインを飲みたい異世界組と、ワインを飲ませてモフりたい姉貴の思惑が合致。

 姉貴から率先して、寿司とのペアリングを調べるなんて……。


「よく分かんないからこれで合わせてみよう」


 前言撤回。

 調べるなら最後まで責任もって調べなさいな。


「綺麗……」


 そんな姉貴が適当に選んだのは、オレンジ色のワイン……。

 オレンジというか、こう……夕焼けみたいなピンクとオレンジの合わさった色というか……。

 ロゼワイン……なのか?


「始めるぞ」


 何はともあれ、ダークエルフの握る寿司、始まります。

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― 新着の感想 ―
ケモミミケモ尻尾だからマイルドに見えてるだけでよく考えると、初対面でいきなり耳とか位置的にお尻とかさわって来たようなものなのかな?と思うとなかなかのやばさだ姉貴
なんか、イメージ…アメノサちゃんはワインを気に入ってそう でも無頼さんは気に入ってるけど焼酎とかウイスキーの方が喜びそう
「わりぃな、最近モフ高でそのレートじゃ無理だ」 無頼さん、悪乗りしててww
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