異世界の風習
「レモンとクリームチーズのやつは紅茶が合うな」
「流石にそこまで行くとですねぇ」
意外な事にチーズもあんこと合うんだよな。
もちろん、合うようにチーズの方を調整してるんだろうけど。
レモンの方も、皮が少し入ってるのか酸味の中に少しだけ苦みがあって。
それがあんことチーズの相性を向上させてるんだろうな。
「スイカのシャクっとした食感と清涼感がたまらん」
「分かる。あと、甘さがスッと消えるのがいい。あんこの甘さに集中できる」
「濃厚な味わいなのにサッパリしてて、身はトロリ。この金柑ってやつ、凄い」
「それで言ったらマンゴーもですわ。この前食べた物ほどではありませんけれど、濃厚でサッパリ、トロリとしていて、そこに香りが乗っかりますわ!」
いや、フルーツ大福の中に入ってるマンゴーと、宮崎県が誇る高級マンゴーを比べるんじゃないよ。
同じ人間でしょ? とか言って俺とオリンピック選手を比べてるようなもんだぞ。
……大福の中のマンゴーに失礼か?
いやでも、俺も結構大事に育てて貰った自覚あるぞ?
「お茶に合わせるならイチゴが良いな」
「そうか? 金柑やマンゴーでも合うと思うぞい?」
「口に一番合うのはレモンとチーズのやつだな。そういうもんばっか食ってたからってだけだが」
「スイカが一番驚いたな。餡もそれ用に改良をされていた」
「シャインマスカット。次点で金柑」
「全部甘くて美味い」
うむうむ。みんな結局甲乙つけがたい感じだよね。
ちなみに俺はレモンとクリームチーズ、キウイ、マンゴーの三つを自分用に買って来てる。
その最初にレモンとクリームチーズをいただいたってわけ。
「……美味い」
二個目はキウイ。
噛んだ瞬間から溢れる果汁と、口の中に広がる甘酸っぱい香り。
その香りが鼻から抜ける前に、舌にあんこの甘さが乗って来て、めっちゃ新感覚。
大福の皮のモチモチ間とキウイの食感が意外と相性いいし、時間が経つにつれて酸味が強くなるキウイ果汁の味わいを、あんこの甘さがかなり緩和してる。
意外な組み合わせかと思ったけど、普通に美味しいな、キウイ大福。
ちなみに一般的なグリーンキウイの方ね。
ルビーレッドキウイは正直みんなの分買ったら売り切れちゃったんだ。
「はぁ……お茶が美味い」
大福を食べた後のお茶が得も言われぬ味わいを出す。
なんて事ない一般的なお茶なのに、満足感が凄い。
「にしても美味かったな」
「やはり甘味、甘味は全てを解決する」
「甘味メーター満タン振り切って一周しましたわ!!」
大丈夫なのかそのメーター。
壊れてない?
……今更っぽいな。
「全てを平らげた後のお茶を飲む感じがウイニングランを彷彿とさせる」
ちょっと分かるかもしれない。
いや待て、異世界にもウイニングランの概念ってあるの?
何に勝った時に走るんだ?
「ウイニングランって?」
「? 強力な魔物を倒した時に、天に向けて残った魔力をぶっ放す事ですけれど……?」
随分と物騒なウイニングランだな。
ていうか大丈夫か? それ。
はるか上空に居るドラゴンとかに魔法直撃して第二ラウンド始まったりしない?
そうなると魔力全ブッパしてるから勝ち目無さそうに思えるんだけど……。
(結構迷惑なんじゃよなぁ、あれ)
? 神様は関係なくないですか?
(いや、わしの居る場所、結界で周囲と隔離しとるんじゃが……)
言ってましたねそんな事。
(角度や魔法の規模によっては、結界に直撃するんじゃよ)
ウイニングランが?
(ウイニングランが。おかげでちょいちょい結界の修理をしなくちゃならんでのぅ)
神のお告げとかでそれとなく辞めさせたらいいのでは?
(いや、ウイニングランの発祥がそもそもお告げじゃし……)
……自業自得では?
(そうなんじゃよなぁ)
そもそもなんで神様はそんな上空に魔法をぶっ放すウイニングランをさせようと思ったんだよ。
まずはそこでしょ。
(強敵を倒した時の合図じゃろ? 倒されたら補充に動かねばならんからのぅ)
……補充?
(食物連鎖の上位種がいきなり討伐されるんじゃぞ? 当たり前に保っていたバランスが崩れるわい。そうならん為に、わしが早急に感知してバランスを保つために新たな個体を創り出すわけじゃ)
……え、神様?
(散々とそう言ってきたじゃろうが)
嘘だろ? あの神様が神様らしい事をしてるぞ?
(心外じゃのぅ……)
いやまぁ、普段の行いとしか……。
でもそれなら確かに、今更というか、やめさせるわけにはいかないですね。
(うむ。まぁ、まだ結界にちょっと傷がつく位じゃから、そんなすぐに結界が壊されるという事はなさそうじゃが……)
……普通にスルーしてましたけど、神様がいる場所って上空に存在してるんですね。
(まぁの。見上げるより見下ろす方が楽じゃからな)
さいですか。
うし、マンゴー大福を頂こう。
……美味い!
マンゴーの香りと甘さがやっぱりあんこに合ってるんだよな。
なんだろうな? このあんこって存在の包容力は。
最初はマンゴーの味や香りを邪魔しない。でも、時間が経つと徐々に主張してきて、最後には口全体を占領する感じ。
そうしてくれるから、お茶を口に入れた時の味わいが深いものになるんだわ。
「ふぅ……ご馳走さまでした」
フルーツ大福、完食。またすぐに行って、今回買えなかった分を俺用に購入しよう。
はぁ……
お茶が美味い。




