てんつら
う~む……。
本日の晩御飯はイセカイハモの天丼で確定。
で、付け合わせを考えてるんだけど……。
「紫蘇と海苔の天ぷらは確定として、人参のかき揚げとか、卵天とかあったら嬉しいか?」
メインであるイセカイハモが大ボリュームの為、丼に乗せられる具材に限りがある。
色合い的に紫蘇と海苔は欲しいとして、後は人参のオレンジも映える。
卵は……いいか。
なんて思いながら買い物中。
「そうだ、デザートも考えないと……」
必要なものをかごに入れながら、重要事項を思い出す。
どうしよう……。
まぁ、何とかなるか。
「ん~……そういや、あそこ寄ってみるか」
頭の隅から引っ張り出されるは、近所の和菓子屋さん。
そういや、フルーツ大福がどうの、みたいなのぼりが立ってた気がする。
ラインナップ見てみて、良さそうならばそれにしよう。
よし、じゃあとりあえず会計済ませて――帰宅!!
*
ただいま、という事でね。
いやぁ、あの時思い立って良かったなぁって。
にしても、フルーツ大福って結構一杯あるんだねぇ。
先に紹介しちゃうけど、定番のイチゴやシャインマスカットはもちろん、金柑にスイカ、マンゴーにキウイ、更にはレモン&クリームチーズとか見つけてさ。
店内に自分しかいない事もあって、めちゃめちゃテンション上がってた。
あと、キウイも期間限定で実が赤い? キウイが使われてるのも買ってみた。
ルビーレッドキウイだったかな。
いやぁ、食べるのが楽しみですなぁ。
*
「よくもまぁこんな個体が見つかったな」
「噂はずっと流れてたのよ。黒い大きな巨体を見た、って」
「だが手が出せず、我々に話が流れ着いたという事だな」
「そそ。まぁ、Aランクの冒険者たちですらお手上げって言うんだもん。だったら、あんたらに頼むほかないかなーって」
「『ヴァルキリー』も居るんじゃないか?」
「別にそっちでも良かったんだけど、この話、あんたらに回さないと怒るでしょ?」
「そりゃあな」
王城で朝食に『リュウグウ』鍋を振る舞い、大会の後片付けやら後始末を手伝って。
アキナに呼び出された『夢幻泡影』は、とある資料を渡される。
そこには、アキナの管理するレシュラック領。
その港からかなり離れた沖の方で、黒光りする巨体を発見したという報告と。
ギルド職員が調査し、発見した痕跡や、映像魔法にて納められたその姿から、とある魔物という事が発覚。
その魔物とは……、
「『龍落とし』。この大きさであれば名前負けしないであろうな」
顎の先端が異常に長く、細く。
更には生半可な防具すら貫通するほどの固さを持ち、名前の由来である、空を飛んでいた龍に襲い掛かり、落としたことがあると言うほど獰猛で。
体の表面には、共生関係にある貝の貝殻と魔力によってコーティングされ。
綺麗な部分では黒いダイヤとして取引される程の希少性。
姿形は現代で言うカジキマグロに酷似しているが、サイズは桁違い。
「一撃でやれると思うか?」
「ピンポイントで頭に『レンジでチン』を叩き込められればやれるでしょうけれど……」
「泳ぐ速度は早い。何かしらの妨害は必須だな」
「とりあえず空中に転移させて、落下以外出来無くしてから叩き込むか」
「何度かトライすれば成功するでしょうし、それで行きましょう」
なお、新たな食材と心を躍らせている四人の前では、今まで羅列した特徴は全て些細な事である。
『夢幻泡影』にとって重要なのは美味しいか、美味しくないか、の二択であり。
『夢幻泡影』に狩猟されたくなければ、美味しく無ければよいのだが。
(こやつらが潤えばわしの所にも恩恵があるからのぅ。味の方はわしに任せるんじゃ)
あろうことか、この世界を司る唯一神が、その味を保障してしまっている。
つまり、『夢幻泡影』に目を付けられた食材は全て、翔の手に渡って美味しく調理されてしまう運命にある。
……もっとも、その事は異世界の神以外知りようのない真意なのだが。
「もし奴が『トキシラズ』のように空中を回遊することが出来たらどうする?」
「そんなことが出来るならもっと目撃証言なり、被害なりが報告されとるじゃろ」
「それもそうか」
(面白そうじゃな)
なお、異世界の神様は気まぐれで、ライブ感で魔物のステータスを少しだけ弄ったりしちゃう性格であり。
余計な事を口走ると、本当にその通りに魔改造されてしまう事を、この四人は……というか、この世界の住人は知らない。
「ではアキナ、船を出してくれ」
「壊したら弁償だからね?」
「安心せい。行って倒して戻ってくるだけじゃわい」
「うむ。余程のことが無い限り、船には傷一つ付かん」
なお、全力でフラグである。
この後、神様の気まぐれで魔改造された『龍落とし』が、転移魔法発動と同時に空中を泳ぎ回る様になり。
悪態をつきながらも捕縛と攻撃を繰り返して、ようやく『龍落とし』を仕留めた時には。
アキナから借りた船は、しっかり海の底へと沈んでいった後なのだった。
……しこたま怒られたし、しっかり弁償もしたのだが、『龍落とし』から取れた黒ダイヤや貝殻。
骨に皮にと素材を売ったお金で賄うどころか大幅な黒字を叩き出し。
アキナ率いるギルド職員が、他のギルドと連絡を取り合い、可能な限りの買取を行っている脇で。
『夢幻泡影』は勝利の宴と、『龍落とし』のステーキを頬張るのだった。




