アメノサ「ざまぁ」
「カケル、持ち帰りの料理だが」
「お鍋セットを考えてましたけど、それでいいです?」
「うむ。出汁用の素材と骨を抜いた『――』さえ貰えればこちらで調理をする」
「しゃぶしゃぶ、美味しかったですわね」
「うむ。向こうでも定期的に食べられるようになればいいが……」
異世界に戻る前に、持ち帰り用の素材を受け取るラベンドラさん。
最近はこっちで調理せずに向こうで調理して貰う事ばかりだなぁ……。
べ、別に持ち帰り料理がバーガーとかサンドばっかりとかであまり思いつかないってわけじゃないんだからね!!
勘違いしないでよね!!
「では!」
「あ、予告しておきますけど」
「なんだ?」
「明日は天丼になります」
「……楽しみだ」
俺も。
すっごい楽しみ。
「美味しかった」
「また頼むぜ」
「明日は酒もあると嬉しいのぅ」
と、アメノサさんに『無頼』さん、ガブロさん達が紫色の魔法陣に消えるのを見送って。
「……デザート、何にするか……」
最近一番考える時間が多い事について、頭を回すのだった。
*
「……なんだって?」
「だから、『リュウグウ』の鍋だ」
「あの骨だらけのやつのか?」
「いいから食え。飛ぶぞ」
『夢幻泡影』から朝食の誘いを受けたオズワルドは、その朝食の内容を聞いて眉を顰める。
『リュウグウ』……翔が言う所のイセカイハモな訳であるが、あまりに骨が邪魔で食べられたものではない。
唯一骨が無く快適に食べられるのは尻尾の先程度のもので、その認識からか水揚げされても金にならないと放流される始末。
……そのおかげで、大きな個体に成長しやすく、一定以上の大きさになると『リヴァイアサン』に呼び方が変わるのだが。
「他のやつらは? 特にアキナ」
「呼んでいる。もうじき来るだろう」
と、言葉が終わるかどうか、というタイミングで、
「うっわめっちゃいい匂い!!」
噂のアキナが登場。
「朝からあまり重いもんは食えんが?」
そのアキナの後ろからダイアンが登場し、
「……暑い」
甲冑姿のカルボスターも集合。
――そして、
「自分までいただいて良かったんすか?」
ギルドマスターではないのに、何故か当たり前に招かれているアエロスも無事着席。
「今回はかなり特殊な方法で骨を抜いた」
「……ほぅ?」
「『解体神書』の腕のおかげかな?」
「わしはそこまで関わっとらん」
食べる前に、食材の説明……この世界では今のところ誰も行えていない、『リュウグウ』の骨の完全除去の事を説明すると。
真っ先に疑われるのは解体士のガブロ。
当然のように否定はするが。
「自分らに明かすって事は工程を教えて貰えるって事っすよね?」
「こいつら今から排除して私にだけ教えてくんない? 港町にだけその情報が届いた方が有意義だと思うのよ?」
早速取材モードになるアエロスと、早急に利権独占モードに入るアキナ。
「あくまでやり方……というか、たまたま成功した方法は教える」
「引っ掛かる言い方だが……」
「全部の個体で同じことが出来るとは思えませんの。ですから、こうして公表することで、色んな個体への実例を集めたくて」
「……なるほど、サンプル数を増やしたい訳か」
「そういう事だ」
……実際の所、骨を抜いたのは翔の家の庭にいる特殊過ぎるゴーレムではあるし、そこに『夢幻泡影』はほとんど関わってはいない。
――だが、
(ゴーレムに出来て我々に出来ないはずがない)
(きっと、何かしらの手がかりがあるに決まっていますわ)
エルフという種のプライドか、自分たちが生み出したゴーレムに後れを取るわけにはいかない。
――それが、よく分からない現代の土や異世界の素材を食べて魔改造されたものだとしても。
「それで? やり方って?」
「まず『リュウグウ』の骨を解析。その個体の弱点属性を添えた毒属性を浸透させ、骨全体を溶かす」
「骨が溶けたのを確認して解毒魔法。その後に浄化魔法をかけて何とかなりましたわ」
という事で、恐らくはこうすれば行けるんじゃないか? とエルフ三人で話し合った方法をギルドマスター達に伝えると……。
「……毒属性に別の属性を添える?」
「そもそも毒属性は勝手に周りに侵食するじゃろ?」
「骨だけに毒属性が行き渡る事なんて無いと思うんだけど……」
「忘れてたけどこいつ等エルフだったわ。俺たちと魔法の捉え方ちげぇんだわ」
「……まずその方法が取れる人……居るっすかねぇ?」
割と散々な事を言われてしまう。
……だが、
「面白そうな話をしていますね」
急にこの朝食の場に現れた、呼んでない一人のエルフ。
ソクサルムが、胡散臭い笑顔のまま歩いてくると。
「東の教会が毒属性に関する研究を熱心にしていたと記憶しています。そこならばあるいは?」
「東の教会……? 確か、司祭だかが神の怒りに触れたとか何とかで……」
「そうです。その司祭が落とした信用を取り戻すために、浄化や解毒について調べることで一発当てようとしていたはずですよ」
「浄化や解毒は呪いや毒に関する知識が必須、か」
「上手くいけば、そこで安定した骨抜きが可能になりそうですわね」
と、一筋の光が差し込んだところで、
「うっま! なにこれウッマ!!」
「オズワルド抜け駆けー。許さん」
「ほっほ。老体に沁みる味じゃなー」
「美味い」
「まーたバカうまなんすけど。……はぁ、またしばらく何喰っても味気ない食事になるの確定っすよ……」
呼んでいた五人が鍋をつつく。
「……私の分は?」
「呼んでないから作っていませんわよ?」
「――ソウデスカ」
なお、折角情報を持って来たソクサルムの分は用意されておらず。
流石に可哀そうだと思ったラベンドラに提供された、イセカイカワブタ節とイセカイハモのお吸い物を、鍋をつついてワイワイやってる五人を見ながら静かにすするのだった。




