神からの授かりもの
「……待ち遠しいですわね」
「もうしばらくですので……」
しゃぶしゃぶをして残った出汁に、豆腐、しめじ、水菜、玉ねぎ。
そしてイセカイハモを可能な限り鍋に入れたら、蓋をしてコトコト。
待っている間はお茶をちびちびやりながら会話にでも花を咲かせましょ。
「調理士じゃない人が参加してたんですか?」
会話の内容はもちろんカクテル大会の事。
あまりにも興味が湧く内容だったもんだからつい。
「うむ。と言っても全くの素人、と言う訳ではなかったがな」
「まぁ、少しは料理してた人なんでしょうね」
じゃないとお酒の掛け合わせたるカクテルを、ただのセンスだけで乗り切ったことになってしまう。
いやまぁ、天才とかだったらそれでやっちゃうんだろうけども。
「いや、料理はしていない」
「?」
「醸造ギルドの職員だったな」
「……反則では?」
常日頃から酒を扱う人が参加しちゃってたのかよ。
それっていいのか?
「? 何故だ?」
「だって、それだったら他の人たちよりお酒に触れる機会が多いですし……」
「職員と言っても醸造をするだけだぞ? 勝手に飲んでいいわけでも、勝手に混ぜ合わせていいわけでもない」
「……確かに?」
「それに、そいつは酒に弱いからな。自分の作ったカクテル一杯で千鳥足になる程だ」
なんだ仲間かよ。
……だとするとその人、ほとんど味見とか出来なかったんじゃ?
とんでもない事やってない?
「あいつは何なんじゃろうな」
あの酒に詳しいガブロさんすら把握しきれてないのか。
あの酒に詳しいガブロさんが。
「神から授かった才能、だろうな」
……なんて言われてますよ神様?
(ま、たまにはそう言った存在を出さんとな)
……マジで?
ガチのマジで神様が授けた才能なの?
……良かったね、色々と。
その才能、『夢幻泡影』が俺の家に来てなかったら持ち腐れだったかもしれんぞ?
運命ってのは分からんものだねぇ。
「いい匂いがしてきた」
「そろそろいいかな」
なんて話をしてたらお鍋がいい感じですわ。
と言う訳でオープン!!
「「おぉ~~」」
立ち昇る湯気から現れるは鱧鍋。
あ、もちろんだけど初めて食べます。
ネギとか入らないんだね。鍋の定番なのに。
……玉ねぎなら入ってるけど。
「『無頼』! よそって!!」
「自分でしろよ……」
とか言いつつ言われた通りによそってあげる『無頼』さんマジお兄ちゃん。
……と思っていたのか?
イセカイハモ無し、豆腐無し、しめじ無しで水菜と玉ねぎばっかりよそってやんの。
「怒るよ?」
「じゃあ自分でしろよ」
「むぅ」
……なるほど。ああやってあしらえばいいのか。
今度姉貴からやられた時に試してみようっと。
「ご飯のお代わりをよろしいですの?」
「あ、はい」
と言う訳で俺以外のみんなにご飯のお代わりをよそいまして。
……俺? 俺はちゃんとしゃぶしゃぶの時からこの鍋の事を見越した配分でご飯食べてるから。
「それじゃあ早速、いただくとしよう」
と言う訳で第二陣、鱧鍋……推して参る!!
*
「……ふぅ」
「美味いな」
あぁ……食べてると落ち着くわぁ。
滅茶苦茶美味しいんだけど、何と言うんだろう。持続型というか。
美味いがずっと続いてくれるから、瞬間的な感情で表現する必要が無い。
ただただ美味いがこんこんと溢れてくる感じ。
「柚子胡椒が美味い」
「やっぱり梅肉だろ」
「ポン酢が一番シンプルだぞ?」
「柚子ぽんじゃろ、JK」
「辛子味噌、美味し」
「ポン酢に七味も美味いですよ」
味わい方もそれぞれで、その全てで美味い。
まずやっぱり出汁が美味いんだよな。その出汁を纏ったイセカイハモはもちろん、野菜たちもかなり美味い。
水菜のシャキシャキした食感と瑞々しさは、その爽快感でイセカイハモの旨味を一瞬忘れさせてくれる。
でもすぐに思い出したように旨味を感じられて、より長く楽しめちゃう。
玉ねぎはしゃぶしゃぶの時とは違いスライスしてるから、より甘みが強く感じられるね。
ポン酢の酸味、イセカイハモの旨味、玉ねぎの甘みのジェットストリームアタックが口の中で暴れまわる。
これを鎮めるためには白いご飯が必須。
これが白い悪魔……ってこと?
「この調味料好き」
「柚子胡椒ですね」
鱧に合うからって事で引っ張り出してきたけど、うまいよね、柚子胡椒。
ふわりと香る柚子と、ピリッとした刺激。
海外でも人気らしいよ? 柚子胡椒。
「再現したものがあるぞ?」
「レシピが欲しい」
「まぁ、構わんだろう」
「やた」
なんてやり取りを横に見つつ、呆れながら豆腐を口にした『無頼』さんが。
「うま」
文字通り目を丸くして驚愕。
「出汁を吸って、極上の食い物になってるじゃねぇか」
「豆腐、美味いですよねぇ」
すき焼きとかの豆腐も、最後の方の味を吸った浸み浸み豆腐大好き。
すき焼きでも好きな具材のかなり上位に入るし。
「確かに美味い。味がかなり浸透している」
「キノコもすっごく美味しいですわ!」
鱧鍋、初体験だったけどこりゃ美味いわ。
……お店でも食べてみたいな。あとで値段調べとこ。
「ガブロ」
「何じゃ?」
「こういう土鍋って、ドワーフに頼めば作ってくれる?」
「まぁ……物好きなドワーフが居たらじゃな」
「そう……」
アメノサさん、土鍋が欲しいのか。
安いので良けりゃあ買って来てあげ――。
「じゃあガブロ作って」
「ん」
なくていいみたいだ。




