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アルコールNO1

「んっふっふっふっふ」

「クッソ上機嫌で怖いんですけど何があったんですか?」


 いつも通りに紫の魔法陣が出現し、その中から異世界組が姿を現す……のだが。

 今日は先頭のガブロが、スキップしながら鼻歌交じりにこちらの世界にやって来た。

 あー……手遅れですねこれは。強めのお薬……度数が強めのお酒を出しときますねー。


「カクテルの大会が開かれた」

「あー……」

「多分三人ぐらいに分身して飲んでいたんじゃないか?」

「あー……」


 そっか、ガブロさん……お祭りだったんだ。

 あと、本当に分身か? 全部実態有りの残像か影分身だったんじゃないか?


「多分、俺ら全員の合計量より一人で飲ンだぞ?」

「マジすか……」


 流石ドワーフと言うべきかなんと言うか……。

 酒を飲んだ量で五対一で勝つんじゃないよ。

 肝臓とか大丈夫なんかな?


「まぁ、ガブロの事は置いといて」

「はい」


 置いとくんだ。


「今日の食事は?」

「しゃぶしゃぶってあったじゃないですか」

「ああ、覚えているぞ。美味かったからな」

「最初はしゃぶしゃぶを楽しんで、途中から野菜たちと色々煮込んで鍋に移行します」

「ほぅ」

「最後に〆のお蕎麦をしようかと」

「楽しみだな」


 という事でラベンドラさんに今日のご飯の説明を終え、ご飯の準備。

 と言っても出汁は取ったし具材も切った。

 コンロをテーブルに並べて鍋をセットするだけですわね。


「出汁にすりおろした玉ねぎを入れますね」

「その心は?」

「恐らく魚と相性がいいはずなので」

「ふむ」


 で、泣きながらすりおろした玉ねぎをたっぷりとお出汁に投下。

 冷したら目に染みないとか色々言うけど、結局その玉ねぎの個体差なんだと思う今日この頃。

 涙が出ちゃう……調理中だもん。


「じゃあ、とりあえずしゃぶしゃぶ用に切った魚が無くなるまではしゃぶしゃぶという事で」

「うむ」

「「いただきます!!」」


 ……え? いつもより食事までが早いって?

 ――お腹空いてるの、言わせるな恥ずかしい。



「むほほほほ」

「お出汁と魚の旨味とが絶妙にマッチしますわねぇ!!」

「半生からしっかり火を通したものまで、自分の好みの加減で食べられるのがこの料理の利点だな」

「生に近ければ食感は柔らかく、火を通すほどにホロホロと崩れるほどのふっくら具合」

「相変わらず出汁もうめぇ。『――』から出来た奴なンだろ? 出汁取ってるの」

「そうだ。定期的に今も作って貰っている」


 どの食材の事か一瞬分からなかったけど、イセカイカワブタ節の事だな。

 マジで美味いからね。

 これ単体でも美味いし、他の出汁と混ぜても絶品。

 異世界食材の中で、一番日本料理に馴染んでる食材かもしれん。


「数秒しゃぶしゃぶして、つるりとした身を楽しむのが美味しいですわ」

「いや、しっかり火を通し、ホロホロと崩れる身を噛み締めて食うのが一番美味い」

「梅肉ポン酢に付ければどっちも美味しい」

「出汁から引き上げてそのまま口に運ぶのがうめぇよ」


 ほらほら、喧嘩しないの。

 みんな違ってみんないいじゃん。

 ……あと、すり下ろした玉ねぎを出汁にぶち込んだのは正解だった。

 『無頼』さんが言うように、それのおかげで出汁から引き上げたまま口に入れても美味いもん。

 一瞬だけ香る玉ねぎの香りと、その後に畳みかけてくるイセカイハモの旨味。

 最後に玉ねぎの甘みが口の中の旨味を口内の壁に馴染ませて、その後から飲み込む唾まで美味い。

 無論、白米を口に入れればフィーバータイムよ。


「今日じゃ無けりゃあ酒を、と言うんだけどな」

「たくさん飲みましたものね」

「あ、そうだそうだ。気になったんですけど、優勝はどんなカクテルだったんです?」


 日本酒に絶対に合う鱧のしゃぶしゃぶ。

 当然のようにリクエストされるだろうと思ってたけど、どうやらカクテル大会でお酒をしこたま飲んだらしく。

 今日はもういいってさ。


「優勝したのは甘くなく、苦みがベースのカクテルだった」

「……ほぅ」

「飲んだ時はそうでもないんだが、時間が経つごとにまた飲みたい、と思わせる一杯でな」

「氷が解ける前に飲み干すのも、氷を溶かしながらゆっくり飲むのも、どちらも酒の表情が変わって美味いんだ」

「ほへー」


 俺が読んだ漫画じゃあ、カクテルは氷が溶ける前に飲めって言われてた気がするけど……。

 まぁ、異世界の酒だしな。


「苦いが拒絶するほどじゃなく、何と言うか……ほろ苦い感じか」

「それなのに香りは甘くて香ばしくて……話してたらまた飲みたくなってきましたわ」

「優勝して個人店の出店が確約されたんだ。近い内に開くだろう」

「開店してすぐはドワーフが殺到するじゃろうがな」


 う~む、想像つかんな。

 でもまぁ、こっちの世界にも苦いカクテルってあるし……。

 そんな感じなのかな? 知らんけど。


「しかし、アイツの酒がワンツーフィニッシュで掻っ攫うとはなぁ」

「しょうがない。あの才能は今は誰にも追いつけん」

「……? 一人の人が一位と二位だったんですか?」

「複数の酒の提出が認められていたからな。だが、どちらも最終選考レベルのクォリティに仕上げたのはそいつだけだったが」

「調理士でもありませんでしたものね」

「えぇ……」


 何者だよ優勝者。

 カクテルの申し子か何かか?


「……あら? もう無くなってしまいましたわ」

「じゃあ、ここからはお鍋タイムに入ります」


 なんて言って食べてたら、あっさりと用意したイセカイハモのスライスが無くなりまして。

 これより、我ら鍋に入る。

 

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― 新着の感想 ―
見える、見えるぞぉ……優勝者の名前を聞いたママが突っ込む姿が…!!
しゃーぶしゃーぶが美味そうなんですけどー!?
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