八百万ダディダディ
異世界イカとエビとホタテ入り餅チーズ玉。
つまりは全部盛り。美味い。
まぁ、俺から食材を取り上げるなんてことが許されることもなく。
ラベンドラさんの一言で全部手元に戻って来まして。
……何を言ったか?
「明日以降水とパンだけになってもいいのだな?」
だよ?
風が遅刻する速度で手元に戻って来た。
食べ物の恨みは恐ろしいって言うでしょ?
みんな怖がったみたい。
「まぁ、独り占めするつもりはありませんから」
「さすカケ」
「略さないでもろて」
なんだろう、普段は翻訳魔法さんの仕業を疑うんだけど。
アメノサさん、なんか普通に言ってそうなんだよな、これ。
多分気のせいじゃない。
「結構具材も自由なンだな」
「ですです。人によってはキムチとかも入れる人居ますね」
「なるほどな」
俺は命が惜しいからさ。
ここで安易に焼きそばを入れるとかは言わないんだ。
まぁ、ラベンドラさんの事だから、教えなくてもその内その発想に至ると思うけど。
「表面はサクッ、中はフワフワ。そこからお餅とチーズが伸びる……」
「表面のチーズの焦げたところがまた美味しいですわね」
「餅も原材料米なンだろ? マジで何にでも米が合うんだな」
……まぁ、ね。
お好み焼き定食とかあるみたいですし?
そもそも、炭水化物同士の組み合わせは焼きそばパンを筆頭に、割とポピュラーだし。
ラーメンとご飯、とかね。
「出汁強めのこっちの方が海鮮系とは合うのぅ」
「そうか? 海鮮系とソースの相性は『ドワーフに槌』だと思うが?」
「もちろん美味いがの。じゃが、酒と合わせることを考えると、こっちの方が合うんじゃわい」
……誰も説明してくれないけど、多分鬼に金棒とか、虎に翼とかと同じ意味だと思われる。
合ってる? 翻訳魔法さん。
(頷いとるぞい)
よし。
最近、段々とそう言う異世界特有表現には慣れてきた感じがあるからな。
ある程度は対応出来るわ。
「ふぅ……美味かった。ごっそさン」
「もういいの?」
「もう、って言われる量じゃねぇよ。あとはゆっくり酒を飲むさ」
「そう」
「アメノサは前回までとは違って食べますわね」
「換毛期だから、エネルギーが必要」
「なるほどな」
……あるんだ。
異世界獣人にも換毛期が。
……てことはこの部屋にアメノサさんの抜け毛が落ちまくったり?
「ここに来る前に毛づくろいしてきた。だから大丈夫」
「そうですか」
俺の表情で何を考えてるのか分かったらしい。
しっかりと伝えて来た。
「そう言えば、何ですけれど」
「?」
「この世界にもブラシとかは存在するのでしょうか?」
「ありますよ、当たり前に」
俺のじゃないけど、この家にももちろんある。
姉貴が置いていった奴と、ばあちゃんが使ってたやつ。
……ばぁちゃんのやつなぁ。べっ甲の櫛なんだよね。
しかも一点物らしく、かなり大事に使っててさ。
今でも俺が手入れをしてるんだけど、手放すつもりは無いし……。
「換毛期用のもある?」
「ありますね」
ペット用だけど。
犬用と猫用のはあるけど、流石に狐用のは無いと思うなぁ。
「ちょっと欲しい……」
「適当なので良ければ……」
「お願い」
お願いされたし。
まぁ、マジで適当に買うかぁ。
換毛期の最終兵器……これだな。
ポチッとな。
「ちなみに異世界の櫛ってどんな感じなんです?」
「ピンキリだ」
「使ってる魔物の素材で値段が違いますわ。高いものは、ほとんどが貴族用って位置づけですわね」
「ふむふむ」
「鳥類型魔物のくちばしから始まり、高いのは亀型の魔物の甲羅を加工したものだ」
……それはべっ甲なのでは?
「魔獣型の爪を並べただけのものもあるぞい」
「それはほとんど武器としての運用だがな」
「へー。ちなみに『無頼』さんも換毛期があるんですか?」
「ン? あンぞ? 面倒だから暴風の中に突っ込ンで、抜けた毛をぶっ飛ばして終わりだけどな」
あまりにもワイルドすぎる。
と言うか、暴風の中に突っ込んで無事なのか……。
良い子は真似しないでね、というか、真似出来るならしてみろ案件……。
「ごちそうさま。美味しかった」
「同じくご馳走さまですわ。本当に、加工さえ出来ればこんなに美味しい食材ですのにね」
「解呪が大概面倒くさい。正直、カケルが居なければ私達もここまで頻繁に味わえていない代物だ」
「そうなんです?」
「そうだぞ? 研究しているギルドに持ち帰ったら、どうやって解呪したのか鬼のように詰められた」
「……はぁ」
(ちなみにわしが手助けをし、ワインを垂らした聖水に一晩漬けこむことで、わしの世界では完全に解呪出来るぞい)
神様まで出張ったのか。
……一晩?
山芋マンドラゴラを?
(そうじゃぞ?)
炒り塩水だと三分とかだけど。
やっぱ八百万の神様ってスゲー。
(分かったから。どや顔で寄ってくるんじゃあないわい)
「さて、カケル」
「お楽しみタイム」
「デザートですね。少々お待ちください」
しっかり冷してましたからねー。
メロンさーん! 隠れてないで出ておいで―! と。
「姉からの贈り物で、メロン食べ比べセットです」
「ほう」
「既に甘くて芳醇な香りが漂って来ますわね!」
と言う訳で早速食べましょう。
最初の品種は……アンデスメロン! 君に決めた!!




