振り返れば奴がいる
「うっめぇ……」
「ご飯の量が、お肉が持って行く量に追いついてない」
「そこはお主の匙加減じゃろ……」
はぁ……お肉がとろける……。
口に入れて噛み締めたドラゴン肉は、しっとりとした食感を残しながら肉汁と煮ダレを放出しまして。
しっかりと噛み締めは出来るものの、噛んだ後はパラリと解けて肉汁たちと合流。
美味すぎるスープとなって口の中を好き勝手に暴れまわり、白米を寄越せと要求。
それに応えるように白米を送ってやれば、ご飯の甘さと手を組んで、さらに美味さを増長させる。
なんだろうな、超極上の角煮を、もっと美味しく仕上げたような……。
少なくとも、一般の家庭で出来る味じゃねぇわ、うん。
――作ってるんだけども。
「本当にカケルのご飯にはハズレがありませんわね」
「いやぁ……正直ドラゴン肉が美味し過ぎてどう調理しても失敗しない感じがしますけどねぇ……」
あえてドラゴン肉を不味く調理しようとしたらどうするだろう?
……ヨーグルト塗って焼くとか? それですらなんか美味しそうになりそうなんだよなぁ。
こう、素材の味ってよく言うじゃん?
ドラゴン肉は、その素材の味が滅茶苦茶強いんだよね。
でも、調味料とは全然喧嘩しなくてさ。
醤油でも、バターでも、塩でもキムチでも、マジで何でも合うんだよ。
つまりドラゴンは正義ってこと。
「ラベンドラ、『――』の肉と比べてこのドラゴン肉の角煮、どっちが美味い?」
「愚問も愚問。当然ドラゴン肉……と言いたいところだがな」
ん?
俺からすればドラゴン肉に勝てる異世界食材の肉ジャンル、存在しないんだけど……。
あ、でも、総合的にドラゴン肉が勝るって感じで、これまでの肉ジャンル食材も、ちゃんと素材を生かした調理をすれば、ドラゴン肉に勝らないし劣るけどいい勝負は出来ると思うよ?
「味だけならば当然ドラゴン肉だ。だが、当時の衝撃度合で言えば、『――』の肉の時もいい勝負だ」
「その心は?」
「出来立てでなくとも肉は柔らかかった。あの『――』の肉がだぞ!?」
酷い言われようじゃん、ブタノヨウナナニカ肉。
別に食べられないほど固いってわけでも無かったじゃん。
それこそ、本当にスーパーとかで売ってる豚肉みたいなもんだったよ、うん。
「カケル」
「どうしましたガブロさん?」
「焼酎をくれ」
「ロックでいいです?」
「うんむ」
力説してるラベンドラさんを余所に、ちゃっかり焼酎を要求するガブロさん。
じゃあ、グラスに氷を入れて、焼酎注いで……。
「これまでカケルに渡した食材を聞きたいかも」
「俺も気になる。何渡してたンだ?」
ガブロさんに渡す時に、『無頼』さんが横から掠め取るようにグラスを持って行った。
そして自然な流れで口へ。
「くぅ~~! うめぇ。肉汁とタレの甘さと焼酎のほのかな甘さが絶妙に混ざりあって新しい旨味になりやがる」
「……カケル?」
「す、すぐ用意しますから」
怖いから、そんなに見つめないでくれっての。
あと、『無頼』さんも欲しいなら言いなさいよ。
そんな横取りめいた真似しなくても、ちゃんと作ってやるっての。
「……結構満遍なく肉や魚を渡してる」
「渡すたびに興味が増える。この食材はどう調理されるか、どのような味付けにするか、とな」
「実は、この場所を訪れる前に四人で予想を立てたりしていたのですわよ? 今日は揚げ物だろう、とか」
「大体はハズレで、当たっていても味付けが違ったり」
「完答の時はほとんど無いんじゃないか?」
初耳なんだけど。
そんなクイズみたいな事されてたのか。
あと、当たった事そこまで無いのか……。
それはそれでどうなんだとは思っちゃうけどな。
ぶっちゃけ、そこまで凝った味付けとかにしてないし。
「マンドラゴラ類の時もあるの?」
「もちろんある。その時は、素晴らしいマンドラゴラ尽くしのメニューだったな」
「野菜のみのカレーの時もあった」
「コース料理さながらの時もありましたわね」
あったなぁ……マンドラゴラ尽くし。
あれだよね、冷蔵庫に入れてたら復活しちゃったやつ。
無害だったから良かったものの、もし叫ばれてたら俺は今この場に居ないよ。
(その時はわしが魂を引っ張っておったわ)
八百万の神様たちに怒られますよ?
「はぁ……うめぇ」
「丼の具で一杯やるのが最高じゃな」
……まぁ、うん。 美味しいだろうさ、そりゃあ。
丼の具なんて、ご飯と一緒に食べる前提で少し濃いめの味付けにするし。
それはそれは酒と合うでしょうよ。
「卵の黄身とドラゴン肉の相性がいい……」
「卵ご飯の時に確認済みだろうに」
当然っちゃ当然だけど、ドラゴン肉の角煮は卵との相性も抜群。
あと、煮ダレと白身も凄く合います、はい。
「ご飯だけお代わり貰えるか?」
「私もお願いしますわ」
「俺は具だけ」
「わしも具だけじゃわい」
ラベンドラさんとリリウムさんが、角煮一切れでご飯を掻っ込むからご飯が足りなくなったとお代わりし。
飲兵衛二人が、ツマミにするために具だけを追加。
「普通にお代わり!」
「わたしも!!」
で、マジャリスさんとアメノサさんが普通にお代わり、と。
よく食べますねぇ、みんな。




