好みの変化()
「満足☆」
「そりゃあよござンした」
……アメノサさん、果たしていくつシュークリーム食べたんだ?
ひぃ、ふぅ、みぃ……いや、やめといてあげよう。
……一個当たりのカロリーを理解したら悲鳴上げそうだな。
「美味かった」
「シュークリームと言っても色々とあるんですわね」
「まぁ、一番ベーシックなのはカスタードクリームのやつですけどね」
今日出したやつ以外で行くと、バニラシューとか、そもそもシューアイスとか。
そういや、コンビニで中身がプリンのシュークリームとかもあったな。
あれ好きだったんだよな……。
「あとは、クロッカンブッシュなんて言うのもありますね」
某海賊漫画で知名度爆上がりしたと思うんだ、クロッカンブッシュ。
「どういった代物だ?」
「小さい目のシュークリームを、飴や蜜、キャラメルなんかで固めてタワーにするんです。お祝いの席とかで出されるみたいですよ?」
改めて思うけど、どうやって食べるんだろ?
まさかそのままかぶりつくなんてことは無いだろうし……。
まぁ、ナイフとフォークで切り分けるのかな。
「ラベンドラ!」
「ラベンドラ☆!」
「こっちを見るなこっちを」
マジャリスさんとアメノサさん、ラベンドラさんにクロッカンブッシュを作れって迫ってるわ。
……作れるのかな?
「すぐには無理だ」
いけるっぽい。
このラベンドラ凄いよぉ! 流石『夢幻泡影』のコックさん!!
「……ふむ」
「どうしたんじゃ?」
「次のカクテルの大会の日、我々以外はほとんどが貴族か王族だろう?」
「ですわね」
「そこにクロッカンブッシュを持って行けば、かなりインパクトがあるのでは?」
「俺らの国ではこうして新しい作り方で出来た酒の大会を催し、このようなスイーツも作れるぞ? と、他国に自国の力を見せつけるいいやり方ではある」
「一応ソクサルムに確認ですわ。もしかしたら止められるかもしれませんもの」
「諸手あげて喜ぶだろ、アイツなら」
「邪悪な笑みを浮かべる」
『無頼』さんにアメノサさん、相変わらずソクサルムさんとやらを信用してないな。
何しでかしたのやら。
「よし、カケル」
「持ち帰りの料理ですね」
「ああ!」
と言う訳でデザートタイムを終え、持ち帰りの料理へ。
……と言っても、
「普通にドラゴン肉バーガーですけど……」
「無論構わん」
許可も取れたので早速作りましょ。
まずはドラゴンの各部位を薄切りにしまして……。
「カケル、ゴーレムにやる星晶塩はこれくらいか?」
「聞いてみますね」
スマホくらいのサイズの星晶塩を渡され、それを持ってゴー君に確認。
「これくらいでいい?」
「ンゴンゴ!!」
「満足みたいです」
「うむ」
ゴー君の体内に星晶塩を置いたら、薄切りの続き。
そしたらそいつらを焼いていくんだけど……。
冷蔵庫の奥にプルコギのタレを見つけまして……。
もうすぐ賞味期限切れちゃうって事で、こいつで味付けしていきましょ。
「からしマヨ、野菜、共に完了だ」
「ありがとうございます」
パンにからしマヨを塗り、レタスは千切ってトマトは輪切り。
それらを並べるって作業を、ラベンドラさんが一人でやってくれました。
そしたら後は焼けたドラゴン肉を並べまして……。
「状態保存魔法、だな」
「ですね」
ドラゴン肉が元に戻らないようにして貰えば完成っと。
結局楽なバーガーが持ち帰り料理には安定してるよ。
味も安定だしね。
「ではカケル、また」
「明日も楽しみにしてますわ!」
「また、デザート。美味しいの」
「あんまり言ってるとまた弾かれンぞ」
「今日みたくビールがあると嬉しいぞい」
「楽しみにしている」
持ち帰りのバーガーを持ち、紫の魔法陣を潜って帰る六人。
……さて。
明日は何を作ろうかな……。
*
「シュークリームバベル?」
「そうだ。作ったシュークリームを蜜や飴で固めて塔を作る」
「それを大会の審査員席の近くに並べておくんですわ」
「……まぁ、構いませんが」
クロッカンブッシュを審査員席に並べるという『夢幻泡影』の提案を、ソクサルムはしばし考えて許可を出した。
もちろん、意図は理解しているし、それによって他国へどのような影響が出るかも計算済み。
……ではあるのだが。
(正直、問題はそれを作れる料理人がどれほど居るか、という点。下手をすると『夢幻泡影』の方にも手が伸びかねません)
懸念はある。
とはいえ、『夢幻泡影』自体、他国にどうこう出来るような存在ではないし、例え他国の勧誘になびき、ニルラス国を離れることになるならば、そこはそれ。
打つべき手などいくらでも用意してある。
むしろそちらよりも、
(材料費の高騰、その他、様々な食品関連の高騰が予想されます。……農業ギルドなどには今の内から備蓄をと通達するべきですかね)
シュークリームバベルなる料理の提供。
その影響で、新しい料理の開発合戦が勃発しかねない。
そうなった時、真っ先にダメージを受けるのは細々と営業をしていた店になるわけで。
そこらがバタバタと店を畳む事態になれば、国内で混乱が起きる可能性も出てくる。
その程度で衰退するような国力ではもちろんないが、そこを他国に付け込まれないとも言い切れない。
(杞憂であればよし、もし実際に起こっても、備えてあればある程度のダメージコントロールは可能)
そう考えたソクサルムは、各所へと通達する書類を作成しようと歩き出すと……。
「ちなみに規模の小さいシュークリームバベルを作ってあるが……食べるか?」
動きを止めるような事を言いだす『夢幻泡影』。
そして――誰か達のせいで働きづめだった脳みそに、クロッカンブッシュの甘さが染みわたった結果。
ソクサルムの好みが、甘いもの、とお酒、になった事は本人だけが知っている。




