仕事ばかりが増える
「チョコレートのお酒とは革命だったな」
「甘さよりも風味や香ばしさがもう少しあればのぅ」
「それは甘いものがあまり好きではないからこその言葉ですわ」
「まぁ、悪く無かっただろ。アメノサが飲めなかったって暴れる未来が見えらぁ」
「ちなみにカケル、この酒の作り方は?」
……まさか一回でチョコレートリキュールの内一本を飲み干すとは。
と言うか、マジでどうなってんだよ……。
文句言ってるガブロさんですら、余裕で二桁杯は飲んでたぞ……。
ちなみに飲み干されたのはブラックチョコレートリキュールでした。
「お酒にチョコレートをぶち込んで作るみたいですけど……」
「なるほど、そこまで大変ではないのだな」
知らんけど。
作った事無いけど、一応家庭でも出来るみたいですわよ?
ホワイトリカーにチョコレートを混ぜるだけって調べたら出て来たし。
……そもそもホワイトリカーってなんだよ。
――ほへー。焼酎と同じ作り方だけど、蒸留の回数が多いのがホワイトリカーなのか。
で、蒸留の回数が多いせいで癖が無くなるから、梅酒とかに適している、と。
……梅酒作る時に使ってたあれ、ホワイトリカーだったのか。
パッケージに『梅酒に!』みたいにあったから、特に商品名とか見ずに買ってたんだよな。
……ゴン、お前だったのか。
「混ぜる酒は? ワインか?」
「何度も蒸留した癖のないお酒が良いとされてるみたいです」
「と言う事は蒸留ギルドだな!」
「チョコレートは材料がまだ手元にある。戻ったら即出向いて色々と試させよう」
「研究のための財源も必要ですわ。いくつかすぐに売れそうな素材も見繕っておきましょう」
「……次の大会の審査員枠でも売りに出せばいいんじゃねぇか? オークション形式で跳ね上がるぞ?」
なんか、『無頼』さんが邪悪極まりない事言ってない?
そりゃ、確かに値段はつり上がるでしょうけど……。
「貴族しか審査員になれなくなる。そして、自分の息がかかった参加者を優勝させるまで余裕で目に浮かぶ」
「それに、審査員枠はもう埋まっていますのよ」
「なンだ、そうなのかよ」
「ニルラス国と繋がりのある国王や、それに相当する立場の者たちを呼ぶらしい」
「そっちの方が裏工作凄そうに思えンだが……」
「ソクサルムの前でそんな事をすればどうなるか、以上ですわ」
「これ以上ねぇ抑止力過ぎる……」
こう、色々と話を聞いただけの感想だけどさ。
これ、ソクサルムさんって人がラスボスと言うか、裏ボスなんじゃねぇの?
国王を裏で操ってるとか。
「さて、カケル」
「あ、持ち帰りの料理ですね」
「うむ。今回は先ほどのマーボー春雨を持ち帰りたい」
「構いませんけど……」
特に持ち帰りの料理を決めていなかったわけだけど、晩御飯と同じものをと言われたらちょっとだけ悲しい気持ちになるな。
いやまぁ、俺の明日のご飯になるからなんだけど。
でもまぁ、美味しいしいいか。
それじゃあ持ち帰りの料理……開始開始~!
*
「ふぅ。ラム酒をロックでお願いします」
「最近連日顔を出しますね。……仕事が大変なのでしょうか?」
「そうですね。……色々と立て込んでいます」
蒸留ギルド、試飲室。
ニルラス国内でも限られた人物しか入れないその場所に、姿を現すは『ストレプト・カーパス・ソクサルム』。
その目的は、ここでしか飲めないお酒を飲むことで。
酒を飲む理由は、現代人と同じであった。
「この場所が作られるきっかけとなった四人がいるでしょう? あの方々の動きのせいで、各所に根回しが必要で……」
「ははは。あまり聞かない方がいい話のようで」
そんなソクサルムにお酒を渡すのは、蒸留ギルドの副マスター。
ギルドマスターが運営を引き受けているのに対し、副マスターは製造した蒸留酒の広報を担当。
その一環として、こうして試飲室を営んでいる。
――と、そこへ、
「ここに居たか」
件の『夢幻泡影』が勢いよく姿を現すと。
「チョコレートの酒のレシピを閃いた。すぐに試す」
「へ? あ、はい!」
ギルドマスターが不在だったためか、わざわざ試飲室までやってきて副マスターを捕まえた『夢幻泡影』は。
「ソクサルム、居たんですわね」
自分たちが原因で、ここで酒を呷っているソクサルムに、
「今度の酒は凄いぞ! スイーツと酒の境界みたいな代物だ。貴族、市民、男女問わず愛される酒になる!」
酒の進みが早くなるような言葉を残してその場を後にする。
……もちろん、悪い意味で。
「はぁ~~~~!」
誰も居なくなった、ソクサルム一人となった試飲室で。
特大のため息を吐いたソクサルムは、
「今の内から販路の確保。製造可能になった場合の製造箇所の設定に必要資源の洗い直し、後は……どれだけ他国へ流せるかの試算も必要でしょうか」
口に出すことで自分の中で必要な事の再確認を済ませ。
「ご馳走さまでした。お代は置いておきますよ」
と、誰も居ない試飲室へ多めの金を置くと。
「ぐっびぐっびぐっびぐっび」
ラム酒のボトルをラッパ飲みしながら、大股で試飲室を後にする。
「クソが!!」
一気に増えた仕事に向けて、蒸留ギルドを出た直後。
汚い台詞を吐いた事は、夜空に輝く星々と、神様だけが知る事となった。




