鈍感系主人公
……なーんも手伝う事無かった。
ブレス液はそのまま使うと味が濃すぎるって事で、今回は赤ワインに加えてブイヨンを使って伸ばしたみたい。
そこに一口大に刻んだドラゴン肉、刻んだ玉ねぎやブロッコリーと加えていって。
空中に浮遊させた状態で生地に包んで終わり。
後は茹でるだけって状態にして、俺に渡してくれたよ。
「このまま茹でても加熱前に戻りません?」
まぁ、当然のように聞いたけど。
肉だけ生とか全然笑えないからね。
……だけど、
「カケル、ドラゴンのブレス液は辛かったな?」
「? はい。無理って程じゃない、程良い辛さでしたけど?」
「辛さは刺激だ。つまり、辛いソースに絡んでいるドラゴン肉は常に刺激を受け続けることを意味する」
「……マジです?」
「大マジだ」
ほへー。
ドラゴン肉は辛みさえあれば再生しない……翔、覚えた。
「てことはカレーとかにも使えるんですね」
「そうだな」
こう、ドラゴン一枚肉みたいなのを豪快にカレーに入れてさ。
ナイフとフォークを使って切り分けながら食べるみたいなやつ。
ちょっとやってみたさあるよね。
……まぁ、明日作る料理はカレーじゃないんだけど。
「俺の方は多くねぇか?」
「アメノサさんの分も入ってますからね。デザート込みで」
「本当にわりぃな」
「何したか分かりませんけど、神様に許されるといいですね」
ほんと、あの神様に怒られるなんて相当な事だと思うんだよな。
一体何をしでかしたのやら……。
「本人が気が付いてねぇのだけが救いだな」
「? 何か言いました?」
「何でもねぇよ」
? まぁいいか。
「ではカケル、次回の食事を楽しみにしている」
「デザートもな!!」
「次は酒じゃろうが!!」
「どうせ美味しいのですから気にするだけ無駄ですわよ」
なんてやり取りをしながら紫色の魔法陣に消えていく『夢幻泡影』。
その後を、
「神様によろしく言っといてくれ」
なんて言葉を残して追う『無頼』さん。
? ……まぁ、そう言うなら?
紫の魔法陣が消えたのを確認し、シェイカーの中のドラ墨を少々フライパンに落とす。
そこにバターと赤ワインを入れ、ブラックペッパーで味を調えて……。
マカロニを別で茹でたら、ドラ墨ソースと絡めまして……。
お皿に盛って、とろけるチーズを上からかければ、ドラ墨のマカロニ手抜きグラタン風の完成。
こいつを、今日は残った赤ワインと一緒に神様にお供えっと。
「なんかよく分かりませんが、よろしくお願いしますっと」
二礼二拍手一礼をすれば、すぐに消えていく料理とワイン。
多分これでいいんだろうな、きっと。
*
「ふぉっふぉっふぉ、ワインにツマミのお供えとはあやつも殊勝じゃのぅ」
上機嫌に現代赤ワインを飲み、翔からお供えされたドラ墨マカロニグラタン風を食べながら。
異世界の神は自身の管理する国の景色を確認する。
その場所は、どうやらアメノサが調達できる限りの赤ワインを持って駆け込んだ教会の様子らしく、食べる手も飲む手も止めぬままに観察し。
それが正しく自分の所へと供えられるものだと確認したところで、
「折角カケルから貰った赤ワインがあるんじゃからいらんもんね~」
と、軽く腕を振ってそのお供えを弾く神様。
すると、映された景色では司祭と思われる人物とアメノサの驚愕する姿が確認でき。
こんな事は初めてだ、とか、何をすればいいのか、とか、分かりやすく慌てる二人。
「もうしばらく時間が経たんとほとぼりは冷めんなぁ」
そんな二人に届かぬと分かっていながら、神様はそう呟く。
アメノサがそのような扱いを受けるのは当然翔に対する様々なちょっかいの罰なのだが、これに巻き込まれている司祭は偶然なのかと言うとそうではなく。
実は、司祭と言う立場から結構様々な物品の横流しを行っており。
既に神様からの神罰秒読みになっていた存在でもある。
なお、そんな事をしていながら人一倍信仰心だけは持ち合わせており、日々の祈りや神様の教えなど、活動自体は熱心に行っていたりしたが。
もうこれ以上は目を瞑れんと、アメノサと一緒に罰せられることになってしまった。
「さて……。そろそろ全教会に神の声としてブランデーを奉ぜよと届けるかの~」
そんな神様は異世界で今だ試作段階のブランデーを自分で早々に作り出しており。
しかも時間跳躍魔法の制限を自分だけ外し、たっぷりと熟成期間も過ごさせていたりする。
最近の楽しみは、現代ワインと異世界ワインの掛け合わせで出来る自分好みのブランデーの配合比を見つけること、と言うのだから入れ込み具合もひとしお。
「その内カケルにもブランデーを供えさせるかのー」
などと、割と遠くない未来に起こしそうな出来事を、物凄く上機嫌に高笑いしながら呟くのだった。
――なお、
「『無頼』……助けて!!」
「うゎぉびっくりした!?」
お供えすら弾かれたアメノサは、戻って来た『無頼』が反応出来ない速度で持ち帰りの料理とデザートを奪取。
涙を流しながら、これこれこの味……と、現代の料理――、
「あ、今日作ったのラベンドラだったぞ」
ではなく、現代で作られた料理を堪能するのだった。
現代料理関係なく美味しかったので、特に不満を抱く事は無かったという。




