ソクサルム「国を少々傾けただけです」
「ふぅ……」
「ではそろそろ」
食後の団らんを終え、マジャリスさんとガブロさんがこっちを見てくる。
そうだよね、知ってる。
「デザートの時間だな!!」
「酒の時間じゃぁっ!!」
「「ぬっ!?」」
ごめん、それは知らん。
せめて統一して欲しいなって。
「酒は昨日も飲んだだろう!? 今日はローテーション的にデザートのはずだ!!」
「何を言うか!! 今日も酒に決まっとるじゃろうが!!」
……。
どうしよう、これ。
ラベンドラさん、助けて……。
「マジャリス」
「なんだ!?」
「どれだけ主張しようが、カケルが前もって準備した物しか出てこない以上、それに従うしかない」
「……ですね」
「つまり今予約すれば明日は確実にデザートになる、そう言いたいんだな?」
絶対に違うと思う。
俺が出したものに文句言うなって意味だと思うんだけど……。
「いや?」
ほら。
ちなみに当たり前だけど、今日はウォッカベースのカクテルを作って貰おうと思ってるよ。
だからさっきガソリンとか言ってガブロさんに飲ませたんだし。
「最近糖分が足りないんだ……」
「町でドーナツを買い食いしてたの、知ってますのよ?」
しかも食ってるのかよ。
甘いもの。
「この場所で食べてないからノーカウントだ」
「まぁ……じゃあ、明日はデザートにしますか」
「よし!! ……待て、その言い方は今日は違うという事だな?」
「ですね」
「くっ」
まぁ、カクテルと一緒に涙を呑んでもろて。
そんなマジャリスさんは置いておいて、ラベンドラさん、お勉強タ~イム。
「……なるほど」
「ところでカケルやい」
「なんじゃらほい」
「あの燃料のようにアルコール感が強い酒、どうやって作っとるんじゃ?」
……この人達に蒸留の説明して納得して貰えるのかな。
それと、そもそも蒸留酒の作り方は教えていいの?
神様、そこんとこどう?
(ぜひ教えてやってくれ。ワインを蒸留して新しい酒になるらしいからのぅ)
ふむふむ。
まぁ、こっちの特別な材料とかも要らないし、聞くまでも無かった感じかな。
……気がかりなのは異世界の醸造ギルドの職員さんたちだけど、強く生きて欲しい。
いっそ蒸留ギルドでも立ち上げたらいいんじゃね?
知らんけど。
「えーっと、水とアルコールって蒸発する温度が違うの分かります?」
「?」
よし、カモン! 二台目タブレット!
中学サイエンスの蒸留のやり方講座、はーじまーるよー!
「よし、レシピは頭に入った。……? 何を?」
「今お勉強中です」
ガブロさんから『無頼』さん、リリウムさんにマジャリスさんが雁首揃えてタブレットに夢中。
うるさくない今の内にカクテル作っちゃいましょ。
「まぁ、静かに越したことはないか」
「ですです」
「ちなみにカケルはどれが飲みたいとかあるのか?」
ん~……ウォッカだしなぁ。
ある程度アルコール度数が低めで飲みやすいカクテルがいい。
じゃないとまた記憶が飛ぶ。
「あ、じゃあこれで」
と、レシピ動画を倍速で流して目についたものをオーダー。
その名は『スカイ・ボール』。
ウォッカとライムジュースを混ぜて、トニックウォーターや炭酸水を注いでカットライムを添えて出来上がり。
なお、ライムを用意してないのでそこはご愛敬。
ライムジュースだけでも入手に苦労したんだ……。
「先に作ろう」
という事で俺のを先に作って貰う事に。
で、すぐに出来まして。
「ほら」
「いただきます」
カクテルは氷が解ける前に飲めって漫画で読んだ気がする。
なので時間を置かずに飲みますわよ。
「おー、滅茶苦茶サッパリ」
夏の暑い日にいい、とか説明されてたけど、これは確かに、ってなる。
キンキンに冷えた感じとライムの香りが清涼感をぶち上げてさ。
酸味とほんのり苦み、炭酸のおかげで爽快感もある。
外で飲むのに最高だね。BBQの時とかこれ作って飲んだら雰囲気に浸れる自信がある。
……いや、正しくその状況なんだけどさ。
「こうでどうだ?」
「機構が多いのが気になりますわね」
「じゃが魔道具としてこれ位が妥協点な気がするぞい」
「とりあえず複写してくれ。俺も持って帰りてぇ」
で、動画見るの長いなーとか思ってたら、蒸留するための魔導具の設計図を描いてたでござるの巻き。
この人らほんと器用だな。
「お前らの分もカクテル作るぞ?」
「お願いしますわ。ここ、こっちに置換しませんこと?」
「頼む。そうすると作るのにコストがかかり過ぎる。全額寄付するわけにもいくまい」
「わしには強いのじゃぞ。ワインの発展形が作れるとか謳って教会を巻き込むのはどうじゃ?」
「俺にも強いの。教会が憶測に金出すわけねぇだろ。完成品持って行かねぇと動きゃしねぇよ」
蒸留一つでめっちゃ真剣じゃん。
いや、既に確立された技術だから俺がそう思っちゃってるだけかな。
新しいお酒が出来るってなったら、現代人でも歓喜しそうだし。
「ソクサルムにだけは早急に伝えますわよ? でないと後が怖いですもの」
「……まぁ、悪い使い方はしねぇだろうが……」
「いい使い方もしなさそうなのは分かる」
酷い言われようじゃん。ソクサルムさん。
何しでかしたんだろ。
「出来たぞお前ら。氷が解ける前に飲め」
「「はーい」」
設計図を覗き込んでいた四人が、それぞれ自分の前に出されたカクテルに視線を移す。
はー……『スカイ・ボール』美味しかった……。




