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約束の潤い

「お前にはレシピを見た瞬間からこれだと決めていたものがある」

「ほぅ?」


 と、どうやらラベンドラさんはラスボスに対する準備が万端の様子。

 では見せて貰おうか、異世界のエルフの腕前とやらを。


「氷とコイツ……む? これはワインか」


 空中にジン、氷と入れて、最後の材料であるドライベルモットを注ぐ。

 ――時に匂いを嗅いだラベンドラさんに電流走る。

 ベルモットって確か、ハーブ系やスパイス系を入れた白ワインだったはず。

 そこに気付くとは……やはり天才か……。


「カケル、オリーブは?」

「ありますよ」


 混ぜ合わせた材料をグラスに移し、仕上げにオリーブの実を添えれば完成。

 ……ちなみにカクテルピンは無かったので爪楊枝で代用してます。

 見た目がちょっぴり残念な気がする……。

 いやまぁ、一般家庭にカクテルピンなんて無いからね、しょうがないね。


「ほら、カクテルの王様と呼び声高い『マティーニ』だ」

「王様とは大きく出たのぅ」


 そう言いながらグラスを受け取り、傾けて一口。


「むふー!」


 あー……。

 えっとねぇ……大層気に入られてるみたいですよ?

 何も言わずにもう満面の笑みでニヤニヤしてるから。

 いつもなら、


「美味い酒じゃわい!」


 とか言いながら一気に呷るのに、マティーニは一口飲んでむふー、また一口飲んでむふー、を繰り返してらっしゃる。

 マティーニねぇ……ジュースを一切使ってない、お酒同士で作るカクテルだから、当然アルコール度数は高いわけで。

 多分俺は、飲む機会無いと思うな。


「ガブロ、味が気になる。……甘いのか?」


 既にオレンジブロッサムを飲み終えたマジャリスさんが、ガブロさんに味を聞きに行くけど。

 残念ながら、希望の答えは返って来ないと思いますよ?


「キレが良く、香りは芳醇。引き締まる程の辛口で、甘さとは無縁じゃな」

「そうか……」


 露骨にガッカリする傍ら、今度は『無頼』さんがガブロさんに問う。


「どンぐらい美味い?」

「わしらドワーフの渇きを潤すのに十分な酒じゃな」

「そこまでか」


 渇きを潤すってんなら水とかでも当てはまりそうだけど。

 ドワーフってのを加味してもビールとかで良さそうじゃない?


「カケル、解説しよう」

「?」

「ドワーフの口にする渇きを潤す酒というのは、生涯それだけしか飲めなくても悔いが無いほど気に入った酒というニュアンスがある」

「へぇ」

「そんな酒に出会えるドワーフは少ないとされ、ドワーフ間でもそんな酒を求めて意見の交換などが積極的に行われているそうだ」

「じゃあ、そんな一杯を見つけたガブロさんは……?」

「ドワーフの中でも幸せ者、という事だ」


 マジかよ。

 というか、ガブロさんにそうまで思わせるマティーニってカクテル、マジで美味しいんだろうな。

 ただなぁ、その美味しさって言うのが、お酒が好きな人にしか分からないであろう美味しさだからなぁ……。

 俺にはまだ経験値が足りない。


「カクテルの王様……覚えたぞい」

「浸っている所悪いが、このカクテルは再現は難しいぞ?」

「!!? 何故じゃ!?」

「材料に白ワインをベースに香草やスパイスを加えた物を使用している。ワインのクオリティは元より、そうしたワインに何かを混ぜるという事が……」

「神の名の下に厳しい……か」


 あぁ、なんか分からないけどガブロさんが脱力して天井を見上げ始めた。


「いやまぁ、この場所でなら飲めるンだろ?」

「それもそうじゃな」


 そして爆速で回復した。

 忙しいなこの人。


(カケルやーい)


 どうしました神様?


(そのマティーニとやら、寄越してくれんか?)


 構いませんよ?


「ラベンドラさん」

「? どうした?」

「マティーニ、神様が飲みたいらしいです」

「分かった。作ろう」

「わしもおかわりじゃわい」


 神様の分のマティーニをお願いしたら、もう飲み終えたガブロさんがおかわりを要求。

 それらを作ろうとしたところで、


「先に俺に作ってくれよ」


 『無頼』さんが割って入る。


(む?)


 まぁまぁ、神様。手を挙げるのが遅かったんですから、ここは『無頼』さんに譲ってくださいよ。


(むぅ)


 聞き訳が良くて偉い。


(神じゃからな)


 ですよね。

 と言う訳で『無頼』さんへのカクテルは……。


「ギムレットを作ろう」


 出た、名前だけ知ってるカクテル上位のやつだ。

 そもそもジンベースだったのか。


「カケル、ガムシロップを」

「どうぞ」


 という事で早速作られていく。

 もはや慣れてしまった空中にジンを注ぐ作業の後、氷とガムシロップ、そしてライムジュースを注ぎ……。

 魔法により一気に撹拌。

 そしてそれらがグラスに注がれ……。


「ギムレットだ」

「シロップが入るのか……甘いんじゃねぇか?」


 差し出されたグラスを受け取り、怪訝そうに尋ねる『無頼』さん。


「安心しろ。少量であるし、入れる目的はライムの苦みを抑えるためだ。爽やかな酸味と辛口な味わいが特徴の酒に仕上がっているはずだ」

「ふーん」


 と言いつつグラスを傾ける『無頼』さん。

 その反応は……。


「確かにうめぇや。甘さより酸味が勝つ。しかも圧倒的だ」

「飲めるだろう?」

「ガブロの旦那の酒も美味そうだったが、この酒も滅茶苦茶うめぇぞ」

「ほぅ?」

「酸味もそうだが後味の良さもいい。辛口なのにスルスルといけちまう」

「混ぜる過程で空気を多分に含ませたからな。それで口当たりがマイルドになり、飲みやすい酒になる」

「料理だけじゃなく酒を作るのもうめぇんだな」

「初めてだから見様見真似であるがな」

「それでここまで作れるなら十分過ぎるだろ」


 なんて盛り上がってる所申し訳ないんですけど、


(わしの番はまーだかの?)


 神様がずっと催促しているので……。

 マティーニ、お願いします……。

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― 新着の感想 ―
ジンは銘柄で味わいも違ってくるのが面白いですなぁ。タンカレーのラングプールとかセビリアみたいなのでカクテル作るのも面白いかも
ジンと言えばのジントニックだけど その美味しさの8割なトニックウォーターだと思うの トニックウォーター単独で飲んでも甘苦くて美味しい カケルママにおすすめ
コミック版見たら意外と頭身低かった、考えたらギャグものだったわ、全員可愛かったw と言うか、マティーニとギムレットとか超王道からきましたねえ~楽しみw
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