<オークやトロール丸飲み
「いらっしゃ……うぇぇっ!?」
紫の魔法陣出現からの異世界組登場。
ただ、その姿はあまりにもボロボロで。
何なら、装備の一部が焦げてたり、強引に千切られたような跡があったり……。
一体何と戦っていたんだ……。
「スマン、カケル。今日は調理を手伝えそうにない……」
満身創痍……とまではいかないまでも、某艦隊指揮ゲームの中破程度には酷い見た目のラベンドラさんからそんな事を言われる。
流石にその状況の人に料理させるほど俺も鬼畜じゃないっす……。
「まぁ、ゆっくり休んでてください」
「すまない……」
んじゃあご飯の仕上げをしていきますか。
漬けこんでいた厚揚げに片栗粉をまぶし、油で揚げて。
その間に煮物を温めなおす。
ネギ味噌チーズ焼きをオーブンにぶち込んでセットしたら、とりあえず全員に麦茶を振る舞って……。
「今日はアメノサさんはいないんですね」
「なンか体調崩したらしいぞ。多分飲み過ぎだろ」
あー……。
俺も記憶無くなる位だったし、アメノサさんも似たような状況になってるのかね。
お酒弱いと大変だね、お互い。
(ふん。カケルを誑かして酒を持ち込もうとした報いじゃ)
何か言いました神様?
(何も言うとらんぞい)
さいですか。
「ちなみになんですけど」
「なんだ?」
「何と戦ったらそんな事に?」
前回もあったよな、結構ボロボロになった時。
あれ、何と戦ってたんだっけ?
バハムートかトキシラズか……忘れちった。
「ドラゴンだ」
「ドラゴンですか」
ふーん……。
へ? ドラゴン!? ドラゴンってあの……ドラゴン!?
「ドラゴンって……」
「龍の事じゃな」
「翼を使って空を飛び、ブレスを用いた攻撃を行う。魔法は使わないが魔法に対する守りが固く、物理は同じく固い鱗に覆われている」
「好きな総菜とか発表してました?」
「は?」
「忘れてください」
いやまぁでも? ドラゴンと言っても色んな見た目のドラゴン居るし……。
どんなドラゴンなんだろう……見た目が知りたい。
――そうだ、
「ドラゴンの見た目のスケッチをお願い出来ます?」
絵に描いて貰おう。
と言う訳で全員に……ラベンドラさん以外に紙と鉛筆を渡しまして。
スケッチが完成するまでの間に、唐揚げやら煮付けやらの盛り付けに入りましょ。
オーブンで焼いてたネギ味噌チーズ焼きも焼き上がりましたわよっと。
「描けましたわよ」
盛り付けが終わったタイミングでリリウムさんから描き上がりの報告が。
どれどれ……。
……これあれだな。
某狩りゲーで蛇王龍とか言われてるやつに似てる。
手足は描いてはあるけど、身体に対してあまりにも小さい。
多分、本当に物を掴む程度の動きしか出来ないサイズ。
それに対して翼はかなりデカい。
しかも一対じゃなく三対。
それぞれ色も違うっぽいな。
鉛筆で上手く表現されてるわ。
「ほらよ」
『無頼』さんも描き終えたらしく、俺に紙を突き出して来て……。
え? うっま。絵うっま。
リリウムさんのスケッチでも全然イメージ出来たけど、『無頼』さんのやつだとさらにイメージ広がる。
狩りゲーチックに表面が刺々してなくて、かなり流線形な見た目ってのがよく分かる。
へー、尻尾は二股に別れてるのか。
……倒したの? これを?
「討伐したんですか?」
「? そりゃあな」
こいつら人間か?
人間じゃなかったわ。
えぇ……ドラゴンに勝っちゃうのか……。
こんな大きさの。
いや、待て。参考になる大きさが無いからどれくらい大きなドラゴンなのか分からん。
「ちなみに、マジャリスさん達のサイズはどうなります?」
と、一度描いて貰ったドラゴンの紙を返し、自分たちのサイズを描いて貰う事に。
「ほい」
まぁ、帰って来た紙には、小さな丸が描き込まれてたんですけどね、初見さん。
サイズにしてさっき体に比べて小さいとか言ってた手とか足が大体マジャリスさん達サイズか……。
デカすぎないか?
「とりあえず先に飯にしねぇか?」
「あ、そうですね」
ドラゴンのスケッチを見て色々と考えていたら、しびれを切らしたらしい『無頼』さんからそう言われ。
見れば全員、テーブルに並んだご飯達を凝視して涎垂らしてる……。
はいはいそれじゃあ皆さんご一緒に。
手を合わせてください。
「「いただきます!」」
*
ニルラス国政務室。
そこで、どこぞの政務官とは違って異世界にも行かず、真面目に働くソクサルムは。
「おや、『夢幻泡影』からの連絡ですか。珍しいですね」
自国の誇る最高戦力の一角にして、食文化という面で国に多大な貢献をしているパーティからの報告に目を細める。
彼女らは風だ。
気ままに動き回り、まるでこちらから捕まえようとしてもどこにいるのかさえ分からない。
現に今来た連絡も、発信源を辿れば他国の領地にあるダンジョンからの様子。
そんな報告はされていないが、特にソクサルムは気にすることもない。
要は、国に害をなさず、利益を提供してくれるのならば問題ないのだ。
そんな思いで連絡を取ったソクサルムは、
「ダンジョン内にてドラゴンを討伐した。素材は近い内に持って帰る」
という突拍子もない報告に、
「は?」
と、思わずマヌケな声が漏れ。
「『無頼』と一緒なので取り分けは折半という事になっていますわ」
「へ?」
他国のダンジョンに、他国所属のパーティと一緒に潜っているという事実が付け加えられ。
「アメノサにも報告済みらしいから詳しくはそっちに聞いてくれとの事じゃわい」
とっくに他国の政務官にも情報が伝わっているという、お前ら外交って知ってる? と思わずツッコみたくなる内容は、
「以上だ」
こちらに言うだけ言って、さっさと切られてしまう。
「……はぁ。チョコレートの製造法、植物油の抽出法……後は何があればドラゴンの素材に釣り合いますかねぇ」
一人残されたソクサルムは、現在自国にある手札の内、何枚を切ればドラゴンと渡り合えるか。
必死に皮算用をする羽目になるのだった。




