その食材、狂暴につき
さて、と。
昨日はいなりを散々平らげていたので、今日は油揚げは無しにしましょう。
と言う訳で何を使うか、もうお分かりですね?
そうだね、厚揚げだね。
「唐揚げと煮物……あと一品欲しいな」
二度目となる異世界ピーナッツを豆腐に変貌させる作業を行い、ゴー君に丸投げ。
出来たおからはどうしようか。
「マジでドーナツを作ってやるか」
カクテルの材料になるものを用意はしたんだけどね。
別に連日カクテルにするって約束したわけでも無し。
それに、ちょっとやってみたいし。
「一品は適当に考えるとして、先にドーナツを作っとこう」
と言う訳でひとまずはレシピ検索。
なるほどなるほど?
おからと米粉で焼きドーナツにするのが簡単そうだ。
「ゴー君、豆腐出来たら教えてー」
「ンゴー」
厚揚げにしなきゃなのと、ドーナツに豆腐も使うからさ。
出来上がったら声を掛けて貰えるようにしつつ、材料を混ぜ込む。
おから、米粉、ココア、砂糖、ベーキングパウダー。
これらを混ぜ合わせたら、溶かしたバターと……。
「んご~」
出来上がった豆腐を入れて捏ねり捏ねり。
よく捏ねたら適度な大きさに分けて形を整えてオーブンで焼く、と。
うむ、簡単。
出来立てを提供したいから、ご飯食べてる途中に焼き始めるか。
そしたら厚揚げを作りましょう。
用意するのはお豆腐。
水切りをしておかないと出来がイマイチなのでしっかり水切り必須。
まぁ、この辺は……というか、油揚げとやること変わらんのよ。
薄切りにするか否か、くらいの違いしかない。
で、出来た厚揚げがこちらになります。
早速味見、
「……ん、油揚げに比べて豆腐の味が濃い」
美味い。
というか、豆腐の味ってなんだよ。
言ってて思ったけど。
豆の味でしょ、普通。
言ったの俺だけど。
「普通に美味い。というか、やっぱ異世界ピーナッツで作った豆腐美味いんだよな……」
なんて言うんだろう……こう、美味いんですよ。
ダメだ、俺の粗末な語彙力じゃあ異世界ピーナッツ豆腐の美味しさを余すことなくお伝え出来ない!!
あの……スーパーで売られてるおぼろ豆腐を十倍くらい美味しくしたやつを想像して欲しい。
大体それくらいの感覚ある。
「うし、じゃあとりあえず決まってるレシピの下ごしらえをやりますか」
味見もバッチリ終えたので、ここからは調理タイム。
まずは厚揚げを適当な大きさに指で千切ってボウルにぶち込み。
ボウルに醤油、みりん、おろしにんにくのチューブ、おろししょうがのチューブを入れてかき混ぜまして。
味が染みるまで漬け込んで、片栗粉まぶして揚げれば唐揚げ完成。
揚げるのはラベンドラさんにお任せっと。
続いて煮物。
まずは手羽先を両面焼き色が付くまで焼きまして、焼き終わったら厚揚げ、乱切りの人参、大根を加えて水を投入。
そのまま火にかけ、出てくるアクを丁寧に掬う。
そこに醤油、みりん、料理酒を入れ、おろししょうがを入れまして……。
後は煮こむだけっと。
「う~む、あと一品……何がいいか」
煮物に気をかけながら、残りの一品を検索中。
煮る、揚げる、の料理を作ってるから、後は焼くか蒸すだけど……。
蒸すんだったらもうがんもどきとかでいいじゃんってなるよね。
だとすると焼き、か。
……お、これ美味そう。
「ネギ味噌チーズ焼きとか美味いに決まってるじゃん」
ハイ決定。
――追加で買い物も決定……。
と言う訳で煮物の火を止め、買い出しロスタイム……行ってきます。
*
ただいま、という事でね。
色々と買って来ましたわよ。
まずは豚ひき肉。こいつをフライパンで炒めまして。
炒めてる間にネギ! こいつの白い部分を細かく刻みましてっと。
肉とネギをお味噌に混ぜて、厚揚げに塗ってチーズをどっさり。
後はオーブンで焼けば完成!!
「……ラベンドラさんの仕事が揚げるだけになっちゃった」
ま、まぁ大丈夫だよきっと。
それに、今日のラベンドラさんには食後にも働いてもらう予定だし。
この世界に来て随分とスイーツを食べて来た『夢幻泡影』の四人が、まさかおからドーナツだけで満足するなんて甘い考え、俺はしてない。
ですので~、皆様の為に~……お楽しみを用意したからね。
俺も楽しみである。
と言う訳で、異世界組が来るまでおだらけタイム!!
*
「ひっさびさに出会えたぜ」
「なんとしても食材として確保じゃぁっ!!」
「どこが美味しいんですの!? 腕の付け根!? 腹!? それとも尻尾ですの!!?」
「首周りの肉が霜降りとのバランスが良く高級品だ! 絶対に首に傷をつけるな!!」
「まさかこんなところで……ドラゴンに出会えるとはな!!」
『無頼』と仲良くダンジョン探索をしていた『夢幻泡影』は、実に異世界らしい魔物と相対していた。
その存在はドラゴン。
あまりにポピュラーになったその魔物は、しかし。
脅威度で言えば、おおよそ生き物全ての敵、と言ってもいい立場にいる存在であり。
異世界でも、食物連鎖の頂点に位置しようというある種絶対的な存在である。
そんな魔物相手に、『Sランク』である『夢幻泡影』や『無頼』とはいえ、流石に楽勝と言う訳にもいかず。
苦戦を強いられてはいる……が。
この時、五人と戦うドラゴンは知らなかった。
この五人の――『食材』に対する強い執着心を。




