翻訳魔法さん?
年内一杯は毎日2話投稿を続けますが、来年からは一日1話更新になります
口に入れた瞬間にガツンと来る旨味!!
噛んだ瞬間に溢れる肉汁!! 肉と野菜のシャキシャキした食感から放たれる香辛料の香りと刺激!!
それらを存分に味わって飲み込んだところに呷るビール!!
く~っ!! この為に生きてんだよなぁッ!!
ありがてぇ……っ!! キンッキンに冷えてやがる……っ!!
「うっめ」
語彙、無事死亡。
美味いとしか言えないBOTになり下がったわ。
豚キムチを作った時もそうだったけど、キムチと肉の組み合わせはご飯泥棒だよな。
そこにしかもチーズですよ!? 鶏肉……ではないけどそれらしい肉とチーズの相性は言わずもがな!
しかも今回は醤油も垂らしてるときたもんだ。
米に合わないはずがない!
「クッソ美味かったンゴねぇ」
マジャリスさん?
さては翻訳魔法バグりました?
そのご尊顔からは想像できない口調になってますわよ?
「大変美味しゅうございました」
リリウムさんの方はバグって無いみたいだ。
……ええと、唇の下の所にご飯粒ついてますけど?
なんというか、ハイエルフの尊厳みたいなの、だいじょぶそ?
「美味かった。美味かったが……」
ラベンドラさんは今までと違う反応だな。
一体どうしたんだろう?
「ラベンドラ、どうかしたか?」
「いや……このキムチの材料を見たのだが――」
そう言ってマジャリスさんやリリウムさん達に何やら耳打ち。
最初は黙って頷いていた二人も、みるみる表情が暗くなっていき。
「ブハーッ!! 美味かったわい!! 酒にも米にも合うこの料理、是非とも再現してくれよラベンドラ!!」
その雰囲気に気が付いていないガブロさんがそう口にすると、三人の顔が一斉にガブロさんへ向き。
「無茶を……」
「かなり難しいと思いますわ」
「このキムチは再現出来ないかもしれない」
と、口々に言い始める。
そんな深刻な顔する事態ですか?
いうてキムチでしょ?
「この香辛料か?」
「それもだが、そもそもこいつは複数種類のマンドラゴラを使用する」
うん? マンドラゴラ?
それってアレよね? 引き抜くとデカい声で泣いて、その声聞くと死ぬって奴。
そんなのをキムチに使うの?
「この歯ごたえの良い食材がマンドラゴラの頭葉だ」
「美味いわけじゃわい」
白菜では?
マンドラゴラではなく、白菜ですよ? それ。
「この香辛料も『――』の鱗粉。さらには『――』の胆汁も必要だ」
なんだろう、モンスターの名前は分からないけど、それを聞いたガブロさんの表情がどんどん凄い事になっていってるから貴重なというか、強いモンスターの素材なんだろうな。
「それらを用いて再現出来るんだ。……いや、一度でうまく再現出来るとは限らない。何度か調整の必要があると考えると、素材もそれなりの量がいる」
「あまり軽率に再現しろと言えなくなったわけじゃな……」
嘘だろ。
あの食いしん坊だったガブロさんが諦めて引き下がる様な素材だったのか!?
スーパーで売ってる何の変哲もない徳用のキムチですわよ!?
「えぇと……そんな希少な素材が必要なんですか?」
思わず聞かずにはいられなかった。
いや、モンスターの名前は分からないけど、どんな場所に住んでるとかあるじゃん?
「ああ。こいつらはな……火山地帯に生息するモンスターなんだが――」
そうして話してくれたのは、まずカプサイシンパウダーの代わりとなる素材の話。
「群れで行動する蛾のモンスターでな。こいつらの鱗粉がソレだ」
「鱗粉なんですね」
「また厄介なのはこの鱗粉、吸えば咳やクシャミが止まらなくなる。呪文詠唱なんぞ出来んくなるし、集中力も削がれる」
「しかも爆発まで引き起こすからそもそも倒すのも難しい。それの鱗粉を集めるとなると――」
かなり険しい顔をして話す様子から、相当厄介なんだろうなとは思ったけど。
説明だけ聞くと、確かに、ってなるな。
「そして漬け込む液だが、これも火山地帯に生息するモンスターの素材がいる」
「溶岩を飲み、炎を吐くモンスターで、これはそこまで倒すのには苦労はしないのですけれど……」
「水に浸しておかないと自然発火する」
「ん? どういうことです?」
食器を片付けながら説明を聞いていたら、あまりに突然の言葉に思考が止まった。
「そのままの意味だ。体温が高すぎて、放置していると身や皮が発火する」
「当然発火すると素材としてダメになるから、水に浸して保管するんじゃが……」
「火山地帯で『水』の状態を維持することが難しいからな。気を付けていないとすぐにぬるま湯になってしまう」
あ、そういう。
確かに言われてみればそうか。
……ところで水とぬるま湯の境目って明確に決まってんのかな?
調べてみるか……。
なるほど? 大体30~40℃くらいか。
お風呂くらいってイメージだな。
「ましてや内臓となると、身や皮以上に発火が早く、全身を水に浸しても内臓までは届いて無い事が多い」
「じゃからそいつは発火する前に解体して、部位ごとに水に浸す必要があるわけじゃな」
「そう聞くとめんどくさそうですね」
「実際面倒だろうな。しかもこれが、依頼や武器防具の素材ならともかく、食材の再現の為、だからな」
「普通だと狂気に思われるでしょうね」
「まぁ、俺は正気なんだが」
それでもラベンドラさんは行くみたいですよ?
食への探究って怖いね。
……フグやナマコ、こんにゃくとか食べてる人種の末裔たる俺が言う事じゃないか。
日本人に食への探究で勝てる存在もそうはいるまい。
「じゃあ、持ち帰り用の料理を作っちゃいますね」
そう言って、少しだけボリュームを増やしたダッカルビサンドをご用意しました。
と言っても、ニンニク追加して目玉焼き挟んだだけなんだけど。
それでも四人は嬉しそうに受け取って魔法陣に消えていったよ。
あの四人に何かしらいい事がありますようにっと。
マンドラゴラ:引き抜くと絶叫して聞いた者の意識や命を奪う植物型のモンスター。生息地などで見た目や味が変わる。地面に埋まっておらず、歩行して移動し、敵対すると叫ぶ歩行種が存在する。現代で言う根菜や土の中で育つ野菜は通常種、それ以外は歩行種に分類される。
例きゅうり=イボイボスマートグリーンマンドラゴラ歩行種




