御守り()
「美味いな……」
「これよこれなのこれですわ!」
「パイのサクサク感、カスタードの甘さ、メレンゲのフワフワ感。その全てにレモンの爽やかな酸味が相性抜群だ」
「その上で紅茶との相性も最高じゃぞ!」
「……紅茶がうめぇ」
レモンメレンゲパイ。
感想で全部言われたけど、サクサクのパイ生地にレモン果汁の混ざったカスタード、フワフワのメレンゲを乗せて焼いたイギリスのスイーツで、表面はメレンゲが焼けてサクッとした食感に。
軽いパイ生地の感覚と、フワフワメレンゲの効果からか、レモン果汁のさっぱり感を増幅させて、かなり軽くてさっぱりしてる。
散々食べた食後でも問題なく入るし、これなら夏バテの時でもペロリと行けそう。
「『無頼』は食べないんですの?」
「やンねぇぞ? アメノサへのお持ち帰りだ」
「? アメノサさん用のは別で用意してありますよ?」
「……マジ?」
いやぁ、何と言うか……。
アメノサさん、感じる空気が姉貴のソレなんだよね。
だから、この場に居なくても絶対に美味しいものは逃したくないって考えるだろうと思って……。
通常の持ち帰り以外にも、アメノサさん用のデザートも用意してみた次第。
「わりぃな。あンなのの為に」
あんなの呼ばわりされてるけど。
でもまぁ、自分の分を持ち帰ってあげようとしてる『無頼』さんも優しいよね。
……甘いものは好きじゃないってのもあるかもだけど。
「へぇ……」
アメノサさんの分もあると分かり、小さくフォークで取り分けて。
一口食べて発した言葉は、一言。
「このクリームは?」
「卵と牛乳を合わせて作るクリームだ。レシピを渡すか?」
「欲しいな。いや、俺は全然要らねぇンだが、持ち帰らないとアメノサがキレる」
なんと言うか、この家にラベンドラさん達が来るようになって結構経つけど、思ったよりラベンドラさんのレシピって広まってないんだね。
いや、ニルラス国だっけ?
そこでは広がっているんだろうけども……。
やっぱり国境を超えると一気に広まりにくくなるんだろうね。
「この上のフワフワは?」
「卵白と砂糖で作る」
「……お前、まさかだけどこのデザートのレシピ知ってやがンのか?」
「詳細は知らん。だが、これまでの経験からこうすれば出来るだろうという予測はつく」
凄いよね。
和食洋食デザート、隙が無いと思うよ。
異世界の料理と似てると思われる洋食のレシピが推測出来るってのは分かるけどさ?
和食とか、全く知らないデザートとかを再現出来るの、普通に凄い事なんだよな。
本当に人間かよ。エルフだったわ。
「この紅茶も再現出来たり?」
「無茶を言うな」
「あ、それは出来ねぇのか」
まぁ、当たり前のように再現出来るのは料理だけなんだけどさ。
紅茶なんて、茶葉が同じじゃなきゃ再現出来ないと思うんだ。
でも、異世界の紅茶も悪く無いと思うんだけどな?
一度飲んだけども。
「カケル! ケーキお代わり!!」
「私もですわ!!」
食い付きいいなぁ。
流石はお紅茶の国、イギリスのデザート。
エルフがよく釣れますわ。
「む、そう言えば」
「どうしました?」
「次なる食材を渡しておこうと思ってな」
「お」
待って……はないな。
でもまぁ、受け取るけども。
異世界の食材、最近はチーズ水だのイセカイカワブタだの、面白い食材が多くてね。
好奇心が止まらねぇんだ。
「こいつだ」
そうしてワクワクしながら待っていると、出て来たのは……。
「何……この……何?」
見た目は落花生に似てる。
なおサイズ。
俺ぐらいの大きさあるんだけどこの落花生。
「新しく見つけたマンドラゴラでな。この殻の中に閉じこもっているんだ」
「開けたら叫ぶとかありませんよね?」
「念入りに処理した。大丈夫じゃわい」
俺は嫌だからね?
料理に使おうとしたらマンドラゴラの叫び声にやられて絶命とか。
……そうなったら神様を呪う。
(何故にわし!?)
神様なら防げる事案でしょ?
だったら働いて貰わなくちゃ。
(ううむ……)
俺が死んだらこの世界のワインを手に入れる術がないことくらいは理解しておられますよね?
(人間一人守るくらいお茶の子さいさいじゃわ)
よし。
防御手段確保っと。
んでも落花生か……。
あまり料理に使うイメージ分かんなぁ。
「中の豆からは恐らく豆腐が出来る」
「へー……え? 豆腐?」
「あれは材料が豆だろう? 違うのか?」
「いやまぁ、豆っちゃ豆ですけど……」
異世界落花生……お前、大豆なのか?
いやでも、ピーナッツ豆腐とかあるにはあるし、ワンチャンそっちの可能性も……。
「この場所では豆の加工品に出会いっぱなしだからな。それらを作れると考えると、このマンドラゴラに出会えて良かった」
まぁ、はい。
日本人ほど豆食ってる人種もそうそういないでしょ。
豆って言うか、大豆って言うか。
豆腐、油揚げ、厚揚げは元より、味噌、醤油、豆乳におから。
納豆も大豆だし枝豆も大豆。もやしも大豆……。
豆ばっかだなマジで。
「よし、多少順番は前後したが……」
「お持ち帰りですか?」
「もちろん」
大豆をどう使おうか悩んでいると、ラベンドラさんに声を掛けられ。
持ち帰りの料理のお時間です。
まぁ、作るのはフィッシュアンドチップスなんですけどね、エルフさん。




