ダイジョーブエルフ
まぁ……うん。
結論から言うと、ゆずシャーベットの蜂蜜掛けはギリギリマジャリスさんの許容範囲に入れたようだ。
ちなみにガブロさんと『無頼』さんは蜂蜜無しでゆずシャーベットを食しておられた。
まぁ、甘いものはそこまでな二人だもんね。
「カケル、持ち帰りの料理なのだが……」
「何か希望がある感じです?」
ゆずシャーベットを食べ、紅茶を入れて再び団らんタイムの途中にラベンドラさんから声を掛けられ。
この声のかけ方は何か希望があるのだろうと尋ねてみたところ、
「油で揚げてみたい」
との事。
……なるほど? つまりはとんかつを持ち帰りたい、と。
確かに火を通せば豚肉なわけだからとんかつにはなるな……。
興味がある。
作ろう。
「じゃあ、一旦解呪はしまして」
「その間に色々と準備しておこう」
俺が炒り塩水にイセカイカワブタを浸してる間、ラベンドラさんは衣やら、油やらの準備。
解呪が終わったイセカイカワブタをキッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取り、下味の為に塩コショウ。
小麦粉を振り、卵液に浸してパン粉を纏わせ……。
「油も丁度いい温度だ」
ラベンドラさんの手際の良さで、全部終わる頃に丁度油も熱し終わり。
イセカイカワブタを静かに油の中へ。
「この音を聞いているだけでお腹がすきますわね」
「じゃな」
と、すっかり油で揚げる音と美味しい食べ物が脳内で紐づき、別腹を作る『夢幻泡影』を余所に、『無頼』さんは興味津々。
「油で揚げるってうめぇのか?」
なんて、半信半疑に聞いてくる。
「抜群だ」
「アメノサに教えてあげたらいいですわ。国で革命が起きますわよ?」
「いや、革命は起きたらまずいだろ」
多分なんですけど、リリウムさんが言う革命は、『無頼』さんの思う革命じゃないと思うんです。
いやまぁ、『無頼』さんの思う革命が本来の意味なんですけど……。
リリウムさん達、この世界に入り浸っているせいで、その辺の言い回しが現代に寄ってるんですよ……。
「革命よりは革新の方が近いだろう」
「そうかしら?」
「少なくとも国王は倒されないな」
「?」
察したらしいラベンドラさんがフォローを出すも、それもあまりピンと来ないような……。
「新たな調理法って事で、料理人の方々は喜ぶんじゃないでしょうか?」
これくらいの感想でいいんじゃない?
「甘いな、カケル」
「へ?」
「綺麗な油を用意するだけでまずハードルが高い」
「それに、その油を使って調理するとして、ぶっつけ本番で客に提供するわけにもいかない」
「だが、揚げ物全般は美味いからな。いくら金が掛かろうが出さなければ出す店から評価が離されるは必然」
「つまり、揚げ物が知れ渡る事で、揚げ物がメニューにあるか無いかで大きく料理人としての差を見せつけられることになる」
な、なんだってー。
「じゃあ教えねぇ方がいいんじゃねぇか?」
「食文化の発展に犠牲は付き物デース」
「それで潰れるような店ならば遅かれ早かれ潰れている」
「本当に力のある店を残す方が、国としては有益だぞ」
「そンなもンか」
まぁ、現代感覚で言うなら、生き残った店が店舗拡大やフランチャイズチェーンとかをすればいいわけで。
それはそれとして、個人店とかも普通に経営とかしてるしなぁ……。
「よし、揚がったな」
と言う訳で完成……ん?
一枚しか揚げなかったの?
足りなくない?
「さっきの話ではないが、『闘魚倭種』を揚げて食べた記録は無い。どのような味わいになるか分からんからな。一人一切れずつ、味見と行こう」
なるほど。
初の試みだから味見用の一枚だったわけか。
「味を見るためだからソースは不要だろう」
「レモン汁だけは欲しいですわ」
「からしも欲しいぞい」
「分かりました」
と言う事で、両端を俺とラベンドラさんで貰いまして、真ん中部分は他四人に分配。
シンプルな下味の塩コショウのみの状態で、イセカイカワブタカツ、いただきます!!
「あ、美味い」
「面白いな、これは」
まず反応したのは俺とラベンドラさん。
普通のカツと同じ……と思いきや、噛み切った後の反応が違ってさ。
噛む瞬間までは豚肉なのに、噛み切った後は急に魚の身のように崩れていくんだよ。
しかも肉汁をまき散らしながら。
その肉汁を、口の中で衣が吸ってさ、カツ煮みたいな感じになる。
しかもこの肉汁が例に漏れずうめーんだ。
総合評価二兆点ってところか。
「うめぇな……」
「最高ですわ~」
「だがパンには合わなさそうだな」
「米が欲しくなる味じゃわい」
で、肉汁はイセカイカワブタの出汁なので、やっぱりパンよりご飯に合いそう。
そうなると……。
「じゃあ一口サイズのカツを具にして丸おにぎりにしますか」
「ほう?」
たまにコンビニで見かける、カツ煮おにぎりとか、つくねおにぎりみたいなイメージをして貰えれば。
あまりイメージがピンと来てなさそうなので、画像をどうぞ。
「なるほど、これはいいな」
「でしょう?」
と言う訳で早速イセカイカワブタを切っては解呪、切っては解呪をしまして。
「アメノサにはどれくらい持って行く?」
「二個もありゃあ十分だろ」
「分かった」
アメノサさんの分もしっかり確保するラベンドラさん主導の元、イセカイカワブタカツおにぎりの完成。
味付けは各自行うという事で、それぞれが紫の魔法陣を通って戻っていく――、
(ワインの供えだけ忘れんよう伝えておいてくれんか?)
前に、神様からの伝言を伝えまして、っと。
「アメノサに伝えとくぜ」
という言葉を最後に、魔法陣と共に姿が消える。
……カツ、美味しかったな。
明日の夜もカツにしたら怒るかな……?




