絆の力
……よし、決めた。
今日はお茶漬けにしよう。
イセカイカワブタを使った、鯛茶漬け風のやつ。
もちろんそれだけじゃあ足りないだろうから、イセカイカワブタの煮付けも作って……。
テンペストワイバーン……どうしようかな?
イタリアン風酒蒸しにでもするか。
「そうと決まれば……」
まずはイセカイカワブタの解呪作業から。
と言っても煮付けは火を通すので問題なし。
上からお茶を掛けるお茶漬けで使う部分だけの解呪でOK。
……折角だし出汁茶漬けに――いやいや、イセカイカワブタ自体の出汁が凄いからいらないかな。
「胡麻を擦って、みりんを煮切って……」
今日は煮付けをしっかりと作ろうと思うので、先にその他の作業を終わらせる。
と言う訳でまずはイセカイカワブタ茶漬けの準備。
と言っても胡麻醤油を作るだけだけども。
最終的にこの胡麻醤油に漬け込むんだけど、漬け込み過ぎると辛くなるし……。
全員が来てからで多分間に合うでしょ。
「酒蒸しは来てからでいいか」
結局料理は出来立てが美味い。
だったら先に蒸しておく、なんて選択肢は無いよね?
まぁ、蒸すだけにはしとくけど。
じゃがいも、玉ねぎ、ピーマン、トマトをスライスして、お皿に乗せる。
順番は下から、玉ねぎ、ジャガイモ、ピーマン、トマトの順。
そしたらその上に一口サイズに切ったテンペストワイバーンの肉を並べて、胡椒パッパ、塩パッパ。
最後にピザ用チーズを満遍なく散らして……。
ヨシ。
後は蒸すだけ。
「じゃ、煮付けに取り掛かりますかね」
煮付けは……流石に一人前ずつ調理してたら日を跨ぐので、全員分を作っちゃおう。
まずはイセカイカワブタを切りまして……デカくなったな、フライパンに入りきらないや。
二等分するか。
フライパンに水、同量の酒、ザラメ、水の半分の量の醤油を入れて火にかける。
そしたらイセカイカワブタをフライパンに入れて……。
普段はここで落し蓋をするんだけど、今日はしっかりと作るからね。
お玉で煮汁を掬って、イセカイカワブタにかけ続ける。
落し蓋の代わりなので、完成するまでず~っとやる。
これが俺の『本気』ってわけ。
「……誤算だったのは大きすぎてフライパンに入りきらずに二等分するハメになった事だよな」
なお、身を二つに分けた事で、労力も二倍のもよう。
でもやるって決めたんだ……。
それはそうと……ラベンドラさん! 早く来てくれ!!
*
「邪魔するぞ」
「とってもいい匂いですわ!!」
「なンの匂いだ?」
「分からない」
来たわね。
……なお、煮付けは完成しているもよう。
間に合わなかったか……。
「調理は終わっているのか?」
「時間掛かるやつだけ作っちゃってます」
「そうか。では何をすればいい?」
「酒蒸しを……」
ドラゴンエプロンを装着しつつ、煮付けを覗き見てがっかり。
でも、すぐに気を持ち直して酒蒸しへと取り掛かる。
「酒が勿体ねぇ!」
「騒ぐな。調理用の酒じゃわい」
「ドワーフとして許せんのかよ!!」
「美味い飯の為じゃ……」
「ガブロのおっさん……」
あの、飲兵衛で勝手に盛り上がらないで貰えます?
なんか断腸の思いで仲間を見捨てるシーンみたいな雰囲気醸してますけど……。
実態はラベンドラさんが料理酒を蒸し器に流し込んだだけですからね?
……あと、今日の料理に合いそうな日本酒も買って来てるから……。
「おっと、危ない危ない」
ここで忘れずに解呪後の切り身を胡麻醤油に漬け込む。
忘れる所だった。
「……今、生のまま入れた?」
「あ、ちゃんと解呪してますよ」
最近だと当たり前すぎて『夢幻泡影』からは指摘されなかったけどさ。
そりゃあ来たばかりのアメノサさん達からしたら、火も通してない身は怖いよね。
「ちなみに解呪後の入り塩水はどうした?」
「もう既にゴー君のお腹の中ですけど」
「ゴー君?」
「カケルの家の庭に作ったゴーレムの事だ。謎進化を遂げて、我々の世界でも類を見ない便利さになっている」
「ゴーレム!?」
なんだろう……凄く嫌な予感がする。
具体的に言うなら、ゴー君が進化したことを知って削って持ち帰ろうとしたリリウムさんやガブロさん達と同じ感じが……。
「ゴー君を傷つけたら許しませんからね?」
「設置した我らよりもカケルの言う事の方を聞くんだ、契約等を越えた何かがあるのだろう」
契約を越えた何か……?
つまりは家族って事?
「あと、無属性なんですのよね、そのゴーレム」
「無属性のゴーレム!!?」
「うるせぇよ……さっきから」
「『無頼』は知らないから落ち着いていられる。無属性……すなわち苦手属性の無いゴーレムは、わが国待望の技術。苦手属性が無い……つまりはどんな場所でも与えられた任務を遂行出来る」
「軍事国家であるならば喉から手が出るほど欲しいですわよね」
「カケル……いや、カケル様! 私に無属性ゴーレムの作り方をご教授ください!!」
えーっと……どうしよう。
ラベンドラさんに助けを求めるけど、好きにしろ、みたいな反応だし……。
そのまま伝えるか。
「まずゴーレムに抗菌土を与えます」
「??」
「次に……」
「待って」
「はい」
「抗菌土……ってどこで手に入るの?」
「アメノサ、諦めろ」
「この場所でのみ手に入る特殊なものだ」
「そして、この場所からの持ち出しを、神は許しはしないだろう……」
……上手く言いくるめたな。
神の名を出せば諦め――
「わ、ワインと引き換えなら!?」
ない!?
それだけ無属性のゴーレムが欲しいと見える。
だが……。
「そちらも……と言うか、そっちの方こそ諦めろ」
「この場所のワインはわしらの飲むそれとは八段階くらい違う」
「そ、そんなに……」
そっちの方が壁が高いって言うね。
「蒸しあがったぞ」
「あ、じゃあこっちも仕上げをしちゃいますね」
イタリアン風酒蒸しが完成したって事で、こっちも仕上げをしちゃいましょ。
ご飯を盛って、その上にイセカイカワブタを乗せまして。
刻んだ大葉を乗せて、あっつあつのお茶を回しかけ。
仕上げにワサビを乗せたら、完成。
煮付けを温めなおして人数分に取り分け、お皿に盛ったらさらに完成。
それじゃ、食べますわぞ~。




